このお話はショートストーリー 「Stolen love !!」の続編となっています。まだ読まれていない方はそちらからお読み下さい。
- 「やっぱり男の人って、こうゆう時頼りにならないわよね」
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- ルナマリアは昨晩の件に1人ぶつぶつ愚痴を零しながら、早朝からとある場所を目指していた。
- キラとラクスの関係について色々と問い詰めはしたのだが、結局キラとアスランからは明確な答えを得ることができなかった。
- あれだけ人目もはばからずラブラブしていて、何を今更照れるのかとも思うが、彼らの口から聞き出すことは難しそうだ。
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- しかしそんなことで簡単に諦めるルナマリアではない。
- 彼氏の方がダメなら、彼女の方から攻めるまでだ。
- そして思い立ったが吉日とばかりに、ラクスが泊まっているアスハ邸に乗り込もうというわけだ。
- 彼女の胸には、大きな決意が秘められていた。
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「Stolen love next !!」
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- その頃、アスハ邸では、ラクスとカガリが朝食後の紅茶を、優雅に楽しんでいた。
- 昨晩は思い出話で盛り上がったが、今は難しい政治の話を2,3交わすものの、それ以外はゆるやかな沈黙の中で、その香りと味を味わっていた。
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- そこに、似つかわしくない喧騒を振り撒きながらやってきたルナマリア。
- 2人は苦笑しながら挨拶を交わす。
- だがルナマリアは挨拶もそこそこに、いきなり直球で質問をぶつけた。
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- 「ラクス様はキラさんにどやって落とされたんですか」
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- ルナマリアの問い掛けに反応したのはカガリだ。
- カガリはいきなりのことに、ぶはっと紅茶を吐き出し、咽る。
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- 「お前、いきなり何を言い出すんだ」
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- カガリは咳払いして口の周りを拭きながら、突飛も無いルナマリアを厳重注意する。
- しかしルナマリアは意に介した様子も無く、逆にカガリを説き伏せる。
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- 「だって、元々ラクス様はアスランの婚約者だったわけでしょう。それがいきなりキラさんの彼女とか言われても、私達は納得いきませんよ」
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- プラントではラクスとアスランが婚約者だったのは周知の事実だ。
- しかしルナマリアに限らず、つい最近までプラントのほとんどの市民はそれを信じて疑っていなかった。
- それが今の恋人はこの人です、と言われても狐につままれたような気分だ。
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- 「これは略奪愛なんですよ!」
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- 自分で言った、略奪愛の言葉にさらに興奮して2人に詰め寄るルナマリア。
- カガリはその剣幕に少し圧倒されながら、言われてキラとラクスが何時そうなったかには興味が湧いた。
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- 「言われてみればな。一体何時、ラクスはキラのことを好きだって思ったんだ」
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- ルナマリアを席に座らせると、カガリがラクスの振り返り、思い切って切り出した。
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- ラクスは最初、キョトンとした表情でルナマリアとカガリのやり取りを見つめていたが、問われてそうですわねえ、と人差し指を顎に当てて記憶を辿る。
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- 「やはり初めてお会いした時ですわ。あの時の悲しそうな目が忘れられませんでしたの」
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- やがて、ニコニコと惜しげもなくその時の思い出を語るラクス。
- 初めて聞くアークエンジェルでの出会いに、ルナマリアは目を輝かせて聞き入った。
- カガリも当時のキラのことを思い返しながら聞いていたが、ふと一つのことが気になった。
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- 「その時って、まだアスランとは婚約者の時だよな」
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- ラクスの性格からして、あまり二心を抱くということは考えられない。
- ということは、アスランのことをあまり好きじゃなかったのではないのか、という気がした。
- 今は自分の思い人なので、過去のことにあまり拘りたくないが、そこはやはり気になるというものだ。
- 言われてラクスは、はいと肯定した上で、その時の状況を説明する。
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- 「私達は確かにお互いのことを好きではありましたが、婚約者としてはどこか役割を演じている感じでした。ですからお互いに深く踏み込んだお付き合いはしておりませんわ」
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- アッサリと言い放つラクス。
- カガリはそれを、ある意味納得顔で聞いていた。
- 生真面目なアスランらしいと言えばらしい。
- たぶんアスランがそんなのだから、ラクスも必要以上には踏み込まなかったのだろう。
- きっと寂しかったのではないかと察し、少しラクスに同情する。
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- 対照的に、ルナマリアは大きなショックを受けた。
- 発表を聞いた時から美男美女のお似合いのカップルだと思っていただけに、その現実は受け入れ難いものだった。
- それにラクスの言い方は、まるでラクスがキラに片思いでもしていたかのような言い草だ。
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- 「じゃ、じゃあ、キラさんとラクス様は、告白したのはどっちなんですか」
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- ルナマリアの中では、中睦まじいアスランとラクスの間にキラが入って、ラクスのことを一目惚れしたキラが言葉巧みにラクスのことをアスランから引き離して振り向かせた、というストーリーが出来上がっていた。
- それを根底から覆されて、何が何でもキラとラクスの馴れ初めを聞き出したくなる。
- 最早当初の目的は完全に忘れ去られていた。
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- 「好きだと申し上げたのは、私の方ですわ」
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- ルナマリアの問いに、ラクスは薄っすらと頬を染めて、はにかみながらもキッパリと答える。
- だがその表情はすぐに曇る。
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- 「ですが、すぐにはお返事がいただけませんでした」
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- 少し切なそうに、言葉を繋げるラクス。
- それを聞いて、ルナマリアが心外そうにえーっと声を上げる。
- いくらプラントの人間ではないとは言え、こんなに可愛らしい人に告白されて、OKの返事をしない人がいること事体が信じられない。
- 全くキラという人物は、ルナマリアの予想をことごとく裏切るようだ。
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- 「まあ、あの時はキラ、大変だったから」
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- カガリが当時の状況を思い返し、フォローする。
- それはキラが廃人になりかけていた時の話。
- 見ているだけで胸が痛くなりそうな思い出だ。
- ラクスはその時に思わず想いを告げたのだが、キラにとっては自分が生きる理由を見出すのに精一杯だった。
- ラクスもそれが分かっていた上でのことなので、それをどうこうは思っていない。
- ただ傷ついて、今にも壊れそうなキラをこの世に繋ぎ止めたくて必死だったから。
- それに今が幸せだから、今更気にならない話でもある。
- しかしそんなことは知らないルナマリアは、勢いが止まらない。
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- 「キラさんもラクス様の告白にすぐ返事をしないなんて、酷いですよ。だいたいキラさんもアスランも、もっとシャキッとして欲しいです。昨日も全然ハッキリしませんでしたし。そんなんだから、女たらしとか女難とか言われるんですよ!」
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- プンプンと怒りを露にする。
- そのルナマリアの言葉に心中穏やかでいられなくなったのは、カガリの方だ。
- どういうことだ、と思わず尋ねる。
- 問われてルナマリアが頬を膨らませながら、昨晩の出来事を語る。
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- 「昨日はキラさん達にも同じようなことを聞いたんですよ。でも曖昧なことばっかりしか言わなくて。だからこうしてラクス様にお聞きしてるんですよ」
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- カガリは溜息を吐き、ラクスはあらあらと小首を傾げる。
- 毎度の事ながら、その手の話が苦手な彼ららしい、と言えばらしいが。
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- 「シンも、仕方ないとは分かっていますけど、未だハッキリした態度を取らないですし、素っ気無い返事ばっかりだし、それって絶対良くないと思うんです」
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- ルナマリアはついに自分の相手に対しての不満も爆発させた。
- それについて反応したのはラクスだ。
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- 「まあ確かにキラも、あまり気の利いた言葉は仰いませんわね」
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- ラクスは表情はあくまでにこやかに、しかしその言葉の奥に僅かだが怒りを込めて同意を示す。
- キラがそういったことに疎いということはよく分かっている。
- しかし女心としては、少しくらいお洒落をした自分を可愛いと褒めてもらいたいと思うし、自分達の関係については、もっと堂々としていて欲しいのだ。
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- 「本当に、ふにゃふにゃとだらしない奴らだな!」
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- カガリも同じことを考え、うんうんと頷く。
- 頷きながら過去の出来事にだんだんと腹が立ってきた。
- そんな曖昧な態度だから、色々と勘違いされるのだということを自覚すべきだ。
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- 「やっぱり、あいつらにきちんと教えておかないとな」
- 「そうですよ。シンもそうなる前に、しっかりと言っておかないと」
- 「はい、是非そう致しましょう」
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- こうして女性達の彼氏に対して堪っていた不満が一気に噴出し、彼女達は男どもにハッキリと物申すことで意見が一致した。
- そしてどうすればということを話し合い、一つの方策が導き出された。
- それを再確認すると、3人はお互いの表情を見合わせながら、頷いて不適な笑みを零した。
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- その頃、男達はというと・・・。
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- 「クションッ!」
- 「クシュンッ!」
- 「ヘッキシュ!」
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- 三者三様に、同時にくしゃみをしていた。
- あまりのタイミングの良さに顔を見合わせる、アスラン、キラ、シンの3人。
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- 「なあ、何か少し、悪寒がしないか?」
- 「アスランも、そう思う?」
- 「何か、すげー、嫌な予感が・・・」
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- 言いながら、表情を引きつらせる。
- 何となくよからぬことを企まれているような、そんな噂をされているような気がしてならないのだ。
- しかしその根拠たるや何所にも無い。
- 気のせいだろうと、悪寒を振り払って何とか乾いた笑みを浮かべると、女性達を迎えに行くためにマルキオ邸を後にする。
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- その後、待ち受ける運命を、彼らはまだ知らなかった・・・。
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