- 今日のプラントは一日快晴の予報。
- 気候も丁度麗らかな小春日和で、庭の椅子に座っているとついうとうととまどろんでしまう、そんな穏やかな休日。
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- ラクスはその心地良い光の中でゆっくりと目を覚ました。
- 内容はよく覚えていないが、とても素敵な夢を見た気がする。
- そんなことをぼんやりと考えながら、まだ少し意識が覚醒しきっていないので、ともすれば夢と現の間に取り残されてしまったような、そんな幻想さえ抱いてしまいそうなほど、辺りは光に溢れている。
- ラクスが寝ていたところは丁度大きな木の木陰で、その周囲には木の葉の間から降り注ぐ光の柱が、ラクスを守っているかのように非現実的な光景を演出している。
- やはりこれは夢の中なのかと、嬉しいような残念なような、そんな複雑な感情を頭の片隅で考えながら、ラクスは再び目を閉じた。
- だが聞こえてきた声に、ラクスはいよいよ意識をはっきりと覚醒させた。
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- 今日は気持ちが良いからと、自宅の庭で大きなロッキングチェアに揺られながら本を読んでいたのだが、あまりの気持ちよさにどうやら眠ってしまっていたらしい。
- しかも思ったよりも長く眠ったらしく、体が少しこり固まっている感じがしたので、一つうーんと大きく伸びをする。
- そんな自分の姿を想像して思わず自嘲しながら、目覚めの原因となった声のする方に目を向ける。
- そこには楽しそうに飛び跳ねている2人の子供と、それを優しく見守っている子供の父の姿が映る。
- それは自分がこの世で唯一愛する男性と、その彼との間に産まれた我が子達。
- 自分にとってかけがえのない家族。
- そんな彼らが幸せそうにしている姿をこうして見守ることができる。
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- それは幼い頃から夢見てきた、幸せな光景だった。
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「The seen world even in the dream」
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- キラキラと輝くような笑顔を見せる双子に、ラクスも自然と笑みが零れる。
- ずっと目の前に映る光景に憧れていたのは確かだ。
- だがそれを目にすることは正直できないと思っていた。
- 自分の立場や周囲の期待の眼差し。
- またこれまでに世界で起こった出来事と自分達がしてきたことを考えると、それが許されないと思っていたから。
- こんなにも血塗られた礎の上に今、自分達は立っている。
- 人々をその上へと導いてしまったのだから。
- そのことに少なからず罪悪感を覚えてしまう。
- それを考えるとこれは幻のような、奇跡にも近いことなのかも知れない。
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- だが現実に、今目の前にそれがある。
- その事実に、それを与えてくれた愛する夫と産まれてきてくれた子供達に、そして今新しく芽吹いているお腹の中の命に、心から感謝せずにいられない。
- おそらくさっきは、家族でこうやって一緒に過ごしている、そんな素敵な夢を見ていたのだろう。
- だってほら、今もこんなにも胸が温かい。
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- お父様、お母様、私は今、とても幸せです。
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- 今は亡き自分の父と母にそっと思いを馳せながら、ラクスは今の気持ちを唄にして口ずさむ。
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- いつか憧れた場所がある
- 愛しい人達に囲まれて
- 陽だまりの中で
- 静かに微笑む
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- それはどんな宝物よりも
- 眩しく輝いて
- 私の心を照らし出す
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- 貴方にこの鼓動が届きますか
- 今限りない幸せを感じる
- 目の前に広がる
- この夢にまで見た世界で
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- いつか辿り着きたいものがある
- 愛しい人達に包まれて
- 陽だまりの中で
- 静かに踊る
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- それはどんな魔法よりも
- 眩く煌いて
- 私の心を満たしていく
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- 貴方にこの瞬きが分かりますか
- 今果てしない温もりが沸き立つ
- 目の前に流れる
- この夢にまで見た世界で
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- 望んだのは唯一つ
- 愛しい人達が笑っていられる世界
- そこに優しい唄が聞こえるから
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- 貴方にこの喜びが伝わりますか
- 今とめどなく幸せが溢れる
- 目の前に確かにある
- この夢にまで見た世界で
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- 今の自分の気持ちをストレートにメロディーに乗せた、そんな幸せに包まれた歌。
- ラクスは目立ってきたお腹を擦りながら、静かに優しく唄う。
- その歌声が聞こえた家族達もまたその唄に聴き入って、ラクスの元に駆け寄る。
- そして双子はもう一度歌ってと無邪気にねだりながら、母の手をきゅっと掴む。
- それを追いかけてやってきたキラが、あんまり無理を言っちゃいけないよ、と優しく父親の顔で叱って、ラクスにしか見せない笑顔を向ける。
- そうして響く声が、触れた手から伝わる温もりが、瞳に映る笑顔が、またこの上なく心を満たしてくれる。
- 夢のようでありながら、夢ではないこの世界が。
- その感覚に甘受するように少し身を委ねてから、ラクスもまたキラに応えるように微笑み、それから双子には優しい母親の顔で、もう一度だけですからね、とその願いに応えてまた唄いだす。
- 歌が始まるとキラも双子も、その歌から零れる幸せに包まれ、柔らかい笑みでラクスを見つめる。
- 見つめられたラクスも、一層深い笑みを唄いながら返す。
- 皆が笑顔でいられることに、ラクスは心の中で改めて感謝した。
- 自分を産んでくれた父と母に、そしてそれを与えてくれた家族に。
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- 歌が止んでもそこには一つの家族の眩いほどの、幸せな笑顔が咲き誇っていた。
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