- 「久しぶりですわお母様」
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- 「ええ、久しぶりねラクス」
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- 何気ない会話だが素直にシン達は驚いてしまう。
- シン達もキラとラクスの関係は少し見ただけでもすぐに分かった。
- しかし、実際にカリダとの会話でお母様と言われるとさすがに驚いてしまう。
- しかし、一番驚いていたのは・・・
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- 「ラクス・・母さん?」
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- キラであった。
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「Imagined ideal」
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- ヤキンの戦いの後にキラ達は一緒に同居していた。
- 当時キラもラクスはカリダ様、カリダはラクスさんと呼んでいたため特に気にしていなかった。
- あれから数年が過ぎて、久しぶりに1週間ほどの休暇が取れたのでキラとラクスはオーブへ来ていた。
- 休暇でプライベートなのだが一応プラントでリディアやバルトフェルド達に知らせていた。
- リディアからは休暇はあまり取れないと思いますので楽しんできてくださいと言われ、バルトフェルド達からも似たようなことを言った。
- 勿論、オーブに居るカリダを始めとするシン、ルナマリア、メイリン達にも連絡をしていた。
- その時は普通の会話だったのだが、今回キラもこの会話を聞いて驚きを隠せないでいた。
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- 「キラどうされましたか?」
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- ラクスが優しく訊ねる。
- まるでキラの考えを知っているかのように。
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- 「母さんとラクスはいつの間にそんな・・・」
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- キラも言葉に戸惑う。
- 実際に戸惑っているのはキラだけではなく近くで見ていたシン達もなのだが。
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- 「カリダさんとラクス様はいつから呼びあうようになったのですか?」
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- キラが言葉を詰まらせた後にルナマリアが誰もが思ったストレートに疑問をぶつけるのであった。
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- 「私とラクスは」
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- 「家族だから当たり前なのですわ」
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- カリダとラクスは息が合わせてシン達が思った疑問を答えるのだった。
- キラからすればカリダにラクスとの関係を認めてもらっている状況を維持していると思っていた。
- しかし、ここまでタイミングが合っていると自分の知らないところで、二人に何かあったのではないかと思ってしまう。
- 「いつから呼び合っていたの?」
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- キラは純粋に訊ねた。
- 他にいい言葉が見つからなかったということもあるからだ。
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- 「オーブで休日の話のときからですわ」
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- ラクスは優しく答えた。
- ラクスの答えを聞いてもキラは全く知らないので何も分からなかったが、メイリンとルナマリアはあっ!と思い出した反応を見せた。
- そのキラの様子を見たラクスは説明しますわと言った。
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-
*
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- 話は数ヶ月前のオーブでの休日までさかのぼる。
- キラは男性陣でケパブの言い合いを、ラクスは女性陣で昔話をした後である。
- ラクス達女性陣は男性陣より早く話が終わったので場所を変えて女性陣だけで話を再開しようとカガリ達は考えていた。
- しかし、カリダはラクスに話があると言い、二人きりにしてくれないかとルナマリア達に言った。
- カリダの言葉に他の女性陣達は分かりましたと答えた。
- ラクスは急にカリダが言い出したので緊張した。
- さっきの話はみんなの前だけの嘘で実は私を恨んでいるのではないか?
- など頭の中で回っていたラクスだがカリダに呼びかけられ現実に戻る。
- ラクスは覚悟したが、カリダから話されたのは意外なことだった。
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- 「キラと結婚式を挙げるのはいつなの?」
-
- このカリダの質問はラクスも予想外だった。
- 頭の中で考えていた質問と大きく離れているからだ。
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- 「結婚したいですがわたくしには…」
-
- ラクスは自分にキラのお嫁さんとなる資格はないと思っていた。
- コーディネーター襲撃の事件は明らかに自分を狙ったものであり、キラを自分のせいでまたMSに乗せてしまったと今でも後悔しているからだ。
- プラントで仕事をしているときも、キラと同居生活をしているときも心のどこかで思っていた罪悪感。
- いずれはキラが自分から離れていくのではないかと思う不安。
- そのラクスの心を察したかのようにカリダは言葉を差し伸べた。
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- 「私はさっきも言ったとおり、あなたには感謝してるのよ。キラはあなたが居なければ今のように立ち直れなかったはずよ」
-
- ラクスに言葉を言いながらもカリダは心の中であの頃の事を思い出していた。
- カリダもヤキンの戦いの後のキラの様子を見て驚きと罪悪感に襲われた。
- 自分の知らないところでキラの生まれの真実を知ったこと、戦いの中でキラを怨んでいた人が居たこと、話を聴いた全てが自分の責任だと感じていた。
- 自分がキラの立場なら自殺したかもしれないと。
- だが、カリダもラクスを見てすぐに分かった。
- ラクスが居なければキラは生きていない、ラクスが居たからキラが生きているのだと。
- カリダはキラを立ち直らせるのはラクスしかいないと会って間もない頃に理解した。
- そして、カリダの思ったとおりキラは時間が掛かりながらも徐々に回復していった。
- やがてキラは、昔のように笑えるまで回復したのだった。
-
- 「カリダさん、わたくしには…」
-
- ラクスはカリダの言葉を聞いてもキラの傍に本当に居ていいのかと思ってしまう。
- カリダはさらに言葉を差し伸べる。
-
- 「私はいいのよ。それにキラが貴方の近くに居るのが証拠よ」
-
- カリダは同居しているときから感じていた。
- いつか二人は結婚して孫を見せてくれるのだと。
- あれから時は過ぎて二人はプラントで暮らしているが結婚の連絡がないと心配していた。
- 勘のいいカリダはその原因がキラかラクスのどちらかの気持ちにあると思っていた。
- 案の定カリダの勘は当たり、原因はラクスの方だった。
- ラクスに素直な気持ちを告げるカリダである。
-
- 「わたくしで本当によろしいのでしょうか?」
-
- カリダに言葉を言われても戸惑ってしまう。
- 本当に自分がキラのお嫁さんになって良いのかと?
- カリダは再び優しく自分の気持ちを告白する。
-
- 「ええ、良いに決まっているじゃない」
-
- この言葉を聞いたラクスは自分のキラへの気持ちを本当に隠すことなく生きていこうと思った。
- すぐにラクスはカリダに感謝のお礼を言う。
-
- 「ありがとうございますカリダさん」
-
- やっとラクスの真の気持ちを聴くことが出来たと思うカリダであったが一つ心残りなことがあった。
- それはやがて自分達は家族になるのであればさん付けは可笑しいのではないかと。
-
- 「ねえ?私達も親子になるんだったら、さん付けはやめにしない?」
-
- 先程感謝の気持ちを言ったラクスだが再び戸惑ってしまう。
- 確かに結婚すればカリダと家族になるのだが同居期間が長く今からさん付けを止めるといってもやはり戸惑ってしまう。
-
- 「わたくしは・・・」
-
- 「貴方もキラとも血は繋がっていないけれど私の大切な家族よ。貴方もキラも」
-
- ラクスはこの言葉を聴いてカリダと初めて会った頃を思い出した。
- カリダの第一印象はおっとりとしているが芯はしっかりしている人。
- 実はカリダからのラクスの第一印象もほぼ同じだったのであるが。
- カリダとキラの様子を見ていてラクスは本当の親子ではないが親子なんだと改めて認識した。
- 自分は親に何をして上げれたのかと思うことが多々あった。
- 母は幼い頃に病気で、父は自分が原因で銃殺され・・・
- ラクスは同居している時に親が恋しく泣いたことがあった。
- その心情に気づき、声をかけてくれたのがカリダだった。
- その時にも同じことを言われた。
- 貴方も私の娘なんだと・・・
- そう言われてからラクスは気が楽になり、カリダを本当の母のように慕った。
- 今、再びそう言われてラクスは嬉し涙が零れながら答える。
-
- 「はい、これからよろしく・・お願いします・お母様・・」
-
- ラクスからついに自分の待っていた答えが聴けたカリダも嬉し涙を流しながら答える。
-
- 「ありがとう・・ラクス」
-
- この日を境に二人は親子となった。
- キラと結婚したわけではないのだが・・・
- 二人はしばらく泣いた後
-
- 「キラには内緒ね。今度会ったときに驚かせたいから」
-
- 普通なら感動のシーンを壊したように思えるカリダの行為。
- しかし、同意見だったらしくラクスもこの考えに賛成した。
-
- 「わかりましたわ」
-
- その後ラクスとカリダが部屋から出てくると同時に男性陣も話を終了し、みんなで合流した。
- カリダだけは先に帰ったが、この男性陣との合流で女性陣も交えたケパブの議論が再び勃発してしまった。
- この議論はカリダも知らないのだが男性陣だけではありえなかった結末を迎えた。
- ケパブの議論により、時間はなくなりキラはマルキオ邸へ行くことになり、ラクスはこのまま残ることになったのだった。
-
-
*
-
-
- 「ということですわ」
-
- ラクスに説明されシンはそうだったんですかと言い、ホーク姉妹はおめでとうございますと言葉を告げるのだった。
- だが、キラだけは不満があった。
- 自分に二人が何も言わなかったことも不満だが、電話の時には普通の会話でカリダさんと言っていたからだ。
-
- 「どうして電話の時に母さんって呼ばなかったの?」
-
- キラは疑問だったことを話した。
- しかし、これは考えれば分かることだった。
-
- 「あれは私が指示したのよ」
-
- 「お母様はここで驚かすつもりでしたから」
-
- カリダとラクスが順番に答えた。
-
- キラは答えを聴いて呆れる気持ちも出たが、ほっと安心した。
- つかの間だったが・・・
-
- 「あらあら?もう夜ですわ」
-
- ラクスは時計を見て驚いた。
- 話し始めた時より時間が予想以上に過ぎていたからだ。
-
- 「今日は久しぶりだしラクスに料理を作ってもらおうかしら?」
-
- カリダの言葉にシン達は喜ぶ。
- あのラクスの料理を食べれるとなると誰でも喜ぶ。
- キラは同居しているため一緒に食べることも多いのだが。
-
- 「でしたらカレーを作りますわ!」
-
- ルナマリアとメイリンは少々複雑な気持ちとなった。
- 以前にもカレーを作ったからだ。
- 子供達はおいしいとは言ってくれたのだが。
- しかし、ラクスの作るカレーだということで食べてみたいと思う気持ちは変わらなかった。
-
- 「ラクス様・・カレーを作るところをお姉ちゃんと一緒に見ていいですか?」
-
- メイリンが口を開いた。
- ルナマリアは心の中でありがとうメイリンと叫んでいた。
- ラクスはわかりましたと答え快く了承するのだった。
- 姉妹はラクスがカレーを作っているところを近くで見ていた。
- その動きに姉妹は驚いた。
- 包丁捌きは自分達を圧倒的に超えるスピードで、時間を確認しながら味見をしたり、煮込んだりと姉妹から見てラクスのカレーの作り方は全く完璧だった。
-
- 「さあ、みなさんカレーが出来ましたわ」
-
- 姉妹が見ていたあっという間にカレーは出来てしまいさらに驚く。
- シンもこの速さに驚きカレーの味を期待する。
- 子供達は久しぶりのラクスの料理ということで期待が高まる。
- キラとカリダはラクスの料理の腕を知っているとはいえ、楽しみにしている気持ちを持っていた。
-
- 「「「「「いただきます」」」」」
-
- みんなが一斉にカレーを口に入れる。
-
- 「ラクスお姉ちゃんすごい」
-
- 「最後に食べた時よりおいしくなってる!」
-
- 子供達の反応は全員の反応だといってもいいほどラクスのカレーはよく出来ていた。
- これにはカリダも驚く。
- ここまでラクスの腕が上がっているとは思っていなかったからだ。
- 姉妹もこのカレーを食べて絶句する。
- あまりの美味しさに言葉を失ったからだ。
- シンも食べながらルナ達とはレベルが違うと考えていた。
- キラは前に食べたカレーと同じ味だろうと思っていたが、一口食べて理解した。
- ラクスのカレーは味、こく、匂い、具の食べやすさ等どれをとってもおいしく出来ていたからだ。
- ここに居る誰もが美味しいと言って晩御飯は食べ終わった。
-
- 「おやすみなさい」
-
- シンや子供達はもう眠った頃、ラクスとカリダはおやすみと言った後に二人はキラの寝室を訪れてキラが寝たことを確認して話をしていた。
- 二人はキラが寝たと思っていたが、キラ本人は寝たふりで話を聴く体勢になっていた。
-
- 「ラクス、カレー美味しかったわ」
-
- カリダは正直に話す。
- あの味はベテランのカリダといえども嫉妬するくらい、美味しく出来ていたので褒めているのである。
-
- 「ありがとうございます。ですが、お母様にはまだ敵いませんわ」
-
- ラクスは心の底から思ったことを告白する。
- 同居している時から料理を教えてもらっていたから、カリダの料理の腕が自分の知っている人の中で一番上手いと認識しているからだ。
- これはお世辞ではなくラクスの本心で言ったことである。
- キラはこのままだと喧嘩になりかねないと思ったがそれはなかった。
-
- 「口は達者ね」
-
- 「お母様こそ」
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- 二人は笑いながら話をしていた。
- まるで本当の親子のように・・・
-
- 「ラクスの歌を聴きたいわ」
-
- カリダは同居生活以来、始めてラクスに歌を聴きたいと言った。
- 勿論、ラクスはわかりましたと言い息を吸い込んで歌うのだった。
- ラクスが歌ったのは静かな夜に。
- キラはラクスの歌を聴きながら色々と思うのだった。
- この二人なら姑問題も起きないだろうと。
- 自分の恋人がラクスで、自分の母がカリダで本当に良かったとキラは思う。
- キラ自身気づかぬ間に本当に眠っていた。
- キラは夢の中を見ていた。
- 夢では笑っている自分、ラクス、カリダ、そして、自分とラクスの子供もそこには居ており、みんな優しく穏やかに笑っていたのだった。
ビクトリー様よりいただいた小説です。
相互リンク記念と言う事でいただきました。
まさか拙宅のキラ達に人様の書いた作品で出会えるとは思いませんでした。
本当によく拙宅の作品を読み込まれていて、感激しました。
ありがとうございます。
当サイトのショートストーリーの設定で書かれているので、
こちらで掲載しているのが完全版ということです。
ビクトリーエリア様にはその設定を若干変更した通常版が掲載されています。
是非そちらも堪能してください。
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