名月の出会い
- 幼稚園の迎えに来た保護者達の声と園児の声がこだまする。
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- ラクスは園から自宅に帰る園児達を見送り、その園児達に手を振る。今日も無事に一日が終ったと一息つくが、まだ一人の園児が残っていた。
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- ラクスは産休で休んだ先生の代わりに今日赴任してきたばかりでまだ園児達を把握し切れていない。たった一人残ってしまった園児に名札で名前を確認しながら声をかける。その園児はラクスを無視して画用紙に絵を描いていた。
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- 「こんにちはステラちゃん。一体何を描いているのですか?」
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- ラクスは一人残った園児…ステラに声をかける。ステラはなおも画用紙と向き合ったまま、ラクスには見向きもしなかった。一通り書き終えたのか、手が止まったのを見計らい、ラクスはもう一度ステラに聞く。一体何を描いていたのかと。
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- 「ウサちゃん。これ、パパにあげるの。きょうはちゅうしゅうのめいげつでお月様がきれいにみえる日だって。だからお月様にいるウサちゃんかいたの」
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- ステラがラクスに対し反応しなかったのは集中していたためかと納得し、ステラが描いたその絵を見る。そこには園児が描いた説明されなければ分からない様な絵が描かれていた。
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- 「旨く描けましたわね。きっとお父様もお喜びになりますわ」
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- するとステラはラクスの言葉に疑問符を浮かべ、違うという。
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- 「ステラ、これ、パパにあげるの。おとうさまじゃないよ?」
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- ラクスはステラが『お父様』という言葉と『パパ』が同じ物だと理解していないと思った。
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- 「そうでしたわね。パパ、喜んでくださると良いですわね」
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- そう言うラクスの言葉に飛び切りの笑顔で頷くステラの姿があった。
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- ラクスとのその会話をまっていたかのようにステラのお迎えが来た。
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- 「ステラ、帰ろうか」
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- 「パパ」
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- そこにはとても一人の子持ちとは思えないような男性がいた。
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- その男性は鞄と先程の絵を持ち駆け寄ってくるステラを慣れた手つきで抱き上げるとラクスに礼をする。ラクスはその姿に気を取られていて、慌てて礼を返す。
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- 「ではすみません、これで。ステラ、先生にご挨拶は?」
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- 男性に促されてステラはラクスにむかい、礼をする。
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- 「せんせいさようなら。パパ、きょうね、ステラ、お絵かきしたの。これパパにあげる」
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- 男性の腕の中でステラが満面の笑顔で絵をその男性に見せる。
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- 「ステラ…近すぎて見えないよ。家に帰ってからじっくり見せて?」
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- ステラは見て見てと言わんばかりにその男性の顔の前で絵を広げてみせる。
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- しかし男性の訴え通り、顔の前で広げられたその絵は近すぎて見えない。ステラはその言葉に納得したのか素直にうんと頷くと、絵をしまい、男性に縋りつくようにして帰っていった。
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- ラクスはそのほほえましい親子の様子を眺めながらその二人を見送った。
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- これが二人の初めての邂逅だった。
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- 「はぁ〜。かっこいいわよね。ステラちゃんの保護者の人。パパって事はお父さんなのよね〜。残念。彼の奥さん見てみたいわ」
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- ラクスは後ろで話す年配の保育士にステラの事を聞く。
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- 「ステラちゃんのお父さんなのですか?あの人。でもステラちゃんは違うって」
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- するとその保育士はステラのことをラクスに教える。
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- なんでもステラが入園した時からステラの母親の姿を見ていないとか。
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- ステラは途中入園で、入園する時もその男性が連れてきたという。その男性の名はキラ・ヤマト。諸事情でステラとは性が違うそうだ。
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- 「離婚したとか、ですか?」
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- 「それが分からないのよね。そこまで人の家庭事情に突っ込んで聞かないから。一体いくつの時の子なんでしょうね。この入園申込状を見る限り10代なのは確実よ。だって今彼24だもの。上にもまだお子さんがいるみたいだし、ステラちゃんの事を単純計算しても19、20で作ったと考えるのが妥当でしょ?若気の至りってところなのかしら」
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- そう言う保育士の言葉に納得した。
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- ラクスは若くして父親になったであろうかの人を思い浮かべる。確かに保育士達が騒ぐだけあって綺麗でかっこいい男性だった。それに子育ても大変だろうがあのステラの懐き様からして良いお父さんをやっているのだろう。彼が未婚だったら狙われるのはわかると思う。自分でもその瞳にやられてしまったのだ。未婚で子供がいなければ狙っていたかもしれない。子持ちなのが残念だ。
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- ラクスは知らず知らずのうちにそう思った。
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- その出会いから数日、やはり最後まで残ったのはステラだった。
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- いつも迎えに来るのはそのキラ一人。未だにステラの母親という人は一度も見た事はない。いつも父親であるキラが迎えに来ていた。
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- 今日はいつもの時間になってもまだかの人はステラを迎えには来ず、時間はとっくに閉園時間を過ぎていた。
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- このままでは延長保育となる為、残業となってしまう。他の保育士達は家庭がある為、先に帰って行き、残ったのは園長とラクス、そしてお迎えを待つステラだけになった。
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- 「ステラちゃん、早くお迎えが来ると良いですわね」
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- 一人、積み木で遊ぶステラにラクスは声をかける。
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- ステラは他の園児達とあまり交流を持とうとしない。いつも一人でお絵かきをしているか積み木で遊んでいる。他の子に誘われると一緒に遊ぶが、自分から誘って遊ぶという事はしない。大概一人で居る事の方が多い。
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- ラクスはそんなステラの行動が心配で常に気に掛けてみていた。
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- 「おい、ステラ。迎えに来たぞ。今日、キラの奴、残業する事になったから早く帰れないそうだ。帰るぞ」
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- その日はいつも来る男性、キラではなく、今日は小学生2人がステラを迎えに来た。
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- 「スティング、アウル。今日パパ来ないの?ステラきらわれた?」
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- ステラはその二人の姿を見ると泣きそうな顔をして迎えに来ない父親のことを言う。
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- 「だ〜もう何やってんだよステラ。さっさと帰るぞ。お前、ホント泣き虫だよな」
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- 「アウルッ。からかうな。ほら、ステラ。帰るぞ。キラは今日、遅くなるだけだ。別にステラを嫌っている訳じゃない。帰ってキラを迎えてやろう?」
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- 緑色の髪をした少年が青い髪の少年を叱り飛ばし、ステラを宥める。
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- ステラはその二人の言葉に泣きながら頷くと、自分の鞄を持ってその二人の元に向かった。
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- 「ヒック…。うん、わかった。かえる。かえってステラ、パパをお出迎えする」
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- その二人に促され、遅い足取りで下駄箱に向かう。
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- 「妹がお世話になりました。ほら、ステラ、挨拶は?いつもキラに言われてるだろ?挨拶は基本だって」
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- ステラはスティングに促されてラクスに挨拶をする。
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- 「せんせいさようなら」
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- 「はい、さようなら。また明日も元気で会いましょうね」
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- ラクスは子供三人を見送る。
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- 彼等の言葉はいつもキラが帰るときにステラにかけている言葉だ。キラは帰るときいつも挨拶をする。ステラもそのキラに倣う様にラクスや他の保育士に挨拶をする。
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- いい手本だと思う。
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- 子供に言って聞かせるだけでなく、まずは自分から実践して行う。
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- それができる親はどれくらいいるのだろう。
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- ラクスは若くして親となることが悪いとは思わない。一番悪いのは子供をほったらかす親だ。若くてもしっかり責任を持ち育てている彼を誇らしく思う。ラクスはその彼に愛され、彼の子供を授かる事のできた女性を羨ましく思った。
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- 「良いですわね。あんな方が旦那様だとさぞかし子育ては楽しいでしょうね。子供達にそれぞれ問題はあるみたいですがそれもいずれは夫婦とその子で乗り越えていくのでしょうね…。一度あの方の奥様にお会いしてみたいですわ」
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- ラクスのその願いは叶うことはない。ラクスがこの家族の秘密を知るのはステラが急に発熱した時の事だ。
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- その日、キラが預けに来た時には何ともなかったのだが、その数時間後のお遊戯の時間に急にステラが倒れた。
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- ラクスはピアノを弾いていた手を止め、倒れたステラを抱き上げる。触れただけでも熱があると分かるその体温の熱さに、この学級の担任に他の園児達を任せ、ラクスはステラを病院に運んだ。
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- ラクスは病院に着くと緊急連絡先であるキラの携帯に電話をする。だがなかなか繋がらない。苛々しているうちにステラの診察が終った。暫くは安静にということであり、病状説明のためステラのご両親はどこにと聞かれる。医師にいまだ連絡がつかないことを伝えると医師は困った顔をする。
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- 「先生、どういうことなのでしょう?ステラちゃんに何かあったのですか?」
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- 医師が両親をという言葉に鈍い反応をする事にいぶかしく思ったラクスは医師にその事を聞く。しかしその話はステラの家族ではないラクスには話すべきことではない。その事を悟ったラクスはもう一度キラの携帯に電話する。
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- 5度目にして漸く繋がったキラの携帯は電波が悪く用件を伝えるのがやっとだった。
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- 「あの、ヤマトさんの携帯ですか?わたくし、オーブ幼稚園の保育士のラクス・クラインと云う者です。あの、ステラちゃんが急に熱を出されまして今病院にいますので、至急お迎えに来て頂けませんか?」
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- 『ステラが熱を…で…か?わ…か……した。ですがすぐには抜け……ができませんので、すみませんがそれまで……できませんか?』
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- 電波状況が悪く所々聞こえなかったが、キラが来るまでの間、ステラの事を頼むと言っている事はわかる。
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- 「お母様は?あの、奥様に来て頂くと云う事はできないのですか?」
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- ラクスはこの電波の悪い状況にいるキラがすぐ来られない様な場所に居ることは用意に判断できた。だが、その様な状況でもキラが迎えに来るという。いったい彼の妻、ステラの母親は何をしているのだろうか?
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- 『ステラの母親はいません。ですから僕しか彼女の世話をする者はいないんです。病院の名前を教えて頂けませんか?迎えに行きます』
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- キラのその言葉に不味い事を言ってしまったのではと思うラクスだが、後半辺りから電波状況の良くなった所をみると、地下かどこかにいたのだろう、随分とはっきり聞こえる様になった。
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- 「すみません場所は幼稚園の近くの総合病院です。その病院の点滴室にいます。お医者様がお話があると仰っておられましたので、着きましたらそちらに…」
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- 『ご迷惑をお掛けしてすみません。少なくとも4時か5時までにはそちらに着く様にします。かなりの時間を縛りつける事になってしまいますが申し訳ありませんがその間、ステラをよろしくお願いします』
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- 急いでいる事がわかるその話し方にラクスは時計を見る。
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- 時計の今の時間は11時、遅くても4時か5時とはどれ程はなれた場所にいるのか分からないがすぐに抜け出せる状況ではないのはよく分かった。ラクスは園に連絡を取り、キラが来る間ステラに付き添う事の許可を貰った。
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- そして待つ事4時間半。4時にはと言っていたが、3時半に滑り込むようにキラが現れた。その額には急いで来たとわかる様に汗が噴出しており、彼のワイシャツもぐっしょりと濡れていた。
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- ラクスの前を通るキラからは汗の匂いがした。
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- 具合が悪そうに眠るステラの頭を撫でるキラ。その様子は余程心配して駆けつけてきたのがよく分かる。ステラもキラが来たことに気付いたのか、苦しそうだが、うっすらと微笑みその手に甘える。
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- 「パ…パ?」
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- 「ごめんね、ステラ。遅くなったね。僕はお医者さんのお話を聞いてくるから、それまでもう少しここで寝てて?そしたらおうちに帰ろう?」
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- ステラはキラの言葉と姿に、安心したのか眠ってしまった。
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- ラクスはキラが来たことを医師に伝える。医師はキラにステラの病状を説明する。ステラの発熱の原因はストレスだと言う事だ。
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- 「ストレス……」
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- 「お心当たりはありませんか?お父さん」
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- 医師のその言葉にキラは思い当たるのか頷く。
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- 「は…い。上の子達は状況を理解しているみたいですが、ステラには少しきつかったのかもしれません。本当の両親に会えない事が」
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- 「では貴方とステラちゃんのご関係は?」
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- 「ステラは僕の姪です。姉の子なんですが、姉は今、夫の病気の治療で海外にわたっているのでその間、僕が3人を引き取り育てているのです。闘病生活に加え、子育て、慣れない外国生活、その外国での子供の子育ては流石にきつく、子供達も戸惑うと思い、上の子二人と話し合った結果、僕が引き取る事になったんです。昨日は久しぶりに姉と電話で話したので、それで母親が恋しくなったのではないかと…」
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- その話をステラが起きたと伝えに来たラクスは聞いてしまった。ステラとキラは本当の親子ではないと。
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- ラクスは初めてステラと話した時を思い出す。
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- ステラはキラを「お父さん」ではない「パパ」と言っていた。それにステラの兄二人も「お父さん」ではなく「キラ」と呼び捨てにしていた。親子ではないし、実の親が生きているのであれば「お父さん」とは言わないだろう。
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- ラクスはなぜかその話を聞いたとき、安心感を覚えた。その安心感がなんなのか、ラクスはわからなかった。だが、ラクスはそれがステラの元にキラが来たことによる物だと勝手に解釈した。それならばもっと早くに感じてもいいはず。なのに今更感じるのは何故だろう。
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- 「すみません、ありがとうございました」
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- 「では、お薬を処方しておきますね」
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- 話が終ったのか、キラがこちらに向かってきていた。ラクスは咄嗟にステラのところに急いで戻る。先程の話は聞いていない。聞いていないと自分に言い聞かせて。
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- 「どうだったのですか?」
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- ラクスはキラにステラの容体を聞く。ラクスが聞いたのはキラがステラの叔父だという辺りからだ。容態は聞いていない。
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- 「ストレスだそうです。それよりすみません。お時間をとらせてしまって」
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- キラに謝られ、ラクスは戸惑う。確かに時間を取られたのは事実だが、これは仕事の一環だ。園児を見るのは保育士であるラクスの仕事。勤務外の事をしてしまったのだが、それはそれで仕方のなかった事だ。
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- 「いいえ、わたくしの方こそすみません。奥様になどと家庭の事情に突っ込んだ事を聞いてしまって…。ですが、貴方の様な方をおとう…夫に持っている奥様はさぞ幸せですわね。子育てに積極的ですもの。母親としては心強いはずですわ」
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- キラはそう言うラクスに苦笑する。彼女がそう言う事を言うとは先程の話の一部を聞いてしまったのだろうと。
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- 「先程の話し、聞いていらしたのですね。ステラが僕の子供じゃないと。ステラは僕の姪です。随分と遅くなってしまいましたので家までお送りしますよ。それにステラが放そうとしていないみたいですし」
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- キラに立ち聞きしていたのがばれてしまったラクスはいたたまれない顔をする。だが、逃げようとすることはできなかった。ステラに服の端をしっかり握られていたのでそれは叶わなかった。ラクスは素直に聞いてしまった事を謝る。
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- 「すみません。ですが、送って頂くなんてそんな……。それにステラちゃんの看病もあるのでしょう?」
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- ステラからラクスの服の裾を放し、ステラを抱き上げると、車に向かって歩き出す。
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- さすがにステラを抱いたまま大きな鞄はもてなかったので、その鞄はラクスが持つ。
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- 「ありがとうございます。ですが本当に送らなくていいのですか?これから園に帰って着替えていれば遅くなります。上の二人には適当に食べておくように言っておりますし、ステラもだいぶ落ち着いてますので、レトルトのおかゆで「ダメです。レトルトのおかゆなんて。病気で、それもストレスでこの様になったというのであればちゃんとしたご飯を食べさせてあげてください。もしかして今まで総てお惣菜とかレトルトで済ましていたわけでは」………」
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- キラのその無言は肯定と取るのに十分だった。
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- ラクスは呆れ、園で着替えを済ませると必要な物をスーパーで買い、キラの家に押しかけてステラのおかゆ、そして、上の二人のご飯とキラのご飯を作った。
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- 「病人にレトルトのような化学物質の入っている可能性のあるものを食べさせようだなんて信じられませんわ。喩えめんどくさくても、病人に食べさせるおかゆぐらいは炊かなくては。子供の面倒は見れても看病はなさった事はないのですね。それにこのお台所…。殆どレトルトやお惣菜ばかりではありませんか。一体どういう食生活をなさっていらしたのですか」
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- ラクスはキラの家に着くとまず冷蔵庫の中をあけてみる。しかし冷蔵庫の中には殆どデパ地下で買ったようなお惣菜や飲み物。何時作ったのか知らないが明らかに食べられそうにないかぴかぴになった手作りのチャーハン。卵と期限切れギリギリの乾物類。棚にはインスタント食品の山。自炊はしている様だが、忙しい時はこのインスタントの山から撰んで食べているのだろう。成長期の子供たちには悪い食生活だ。見過ごすことはできない。
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- ラクスはぶつぶつと文句を言いながら期限切れが近い物から食材を選び、食事を作る。ステラにはおかゆにしている。男3人に賞味期限の近い物で作った夕食を食べさせ、ラクスはステラに食事をさせようとした。
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- 「ごめん。ご飯まで作らせて。後は僕が食べさせるから。ありがとう」
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- キラは子供二人に夕食を食べる準備すると、自分は食べずに、ステラの元に来て、食べさせようとした。
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- キラはステラが食べやすいように少し冷まし、ゆっくりと口に運ぶ。世話には慣れているのか、その行動には慣れを感じさせた。
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- 「随分と慣れてらっしゃるのですね。食生活はどうかと云う位酷い物ですが、子供達の世話は慣れてらっしゃいますのね」
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- その言葉にキラは苦笑しながら言う。
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- 「まぁ…ね。スティングは違うけれどステラとかは生まれた時から世話をしているからね。義兄さんが海外にわたったのはステラが3歳の時。そのときスティングは小3、アウルは小1。一番手が掛かるときだったんだ。ドナーの関係で海外に渡ったんだ。義兄さんが患ったのは白血病。移植は成功したけど、まだ抗がん剤治療とか色々あって、とても子育てなんて手が回らない。姉さんも付きっ切りでそっちにいるし、だから僕が引き取ったんだ。義兄さんが退院できるまでの間」
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- ステラはキラが差し出すおかゆを総て食べきると再び横になり眠ってしまった。キラ達はそんなステラに布団を掛け、その場を後にする。
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- ラクスは突然押しかけたこともあり、家に帰ろうとするが、帰り方がわからない。
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- 「すみません。帰り方がわからないのですが、どうしましょう…」
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- ラクスのその言葉にキラは泊まっていくことを進める。ラクスはいくら園児の家とはいえ、男の家に泊まるのはどうかと思ったが、帰り方がわからないので仕方なく泊まった。
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- 翌朝、ラクスは昨日買ってきた物で朝食を作り、キラ達を起こす。そしてスティングたちが朝食を食べている間にキラはラクスを園に送る。
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- ラクスは今度こそ忘れないように道を覚える。
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- キラが自宅に帰る頃には小学生組みは既に登校準備は整っていた。
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- キラは今日一日休暇を取り、ステラの看病に当たった。
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- ラクスは気になったので、園が終ると、昨日同様に食材を買ってキラの家に訪問した。するとそこには味をしめたのか飢えた子供二人が熱烈な歓迎をしてくれた。
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- 「昨日のご飯美味しかった。キラのご飯は5回に1回は失敗するんだ。今日は随分と疲れているみたいでさ。まともなのがないんだ。ご飯食べれない。お腹すいた」
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- どうやら予感が的中したらしく、キラ自身もダウンしていた。
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- ラクスは子供達に促されるままに家に入り、夕食を作る。キラの分を作っても良いものかどうか迷い、キラの様子を見てからにすることにした。
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- スティングとアウルはラクスのご飯をえらく気に入ったのかおかわりをする。お腹一杯になった二人は自分で風呂の準備をし、入って寝た。
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- 随分と行き届いた子供の自主性にラクスは感心する。両親が不在で叔父の家にいるという事実が二人の自主性に関わっているのだろうか?忙しい叔父に少しでも手をかけさせないための彼等なりの処世術なのかもしれない。
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- ステラのほうは随分と元気になったのか、食事時には自分で食卓に着き、食べていた。ステラは食事が終ると兄二人と一緒にお風呂に入りたがったが、病み上がりの為、そのままベッドに連れられ、寝かしつけられた。
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- ラクスは二人から聞いたキラの部屋に訪れる。
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- キラの部屋は仕事の関係の物が多いため、子供達はあまり近づかない。その部屋ではキラが辛そうな顔をして仕事をしていた。
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- ラクスはドアをノックし、許可が下りる前に部屋に入っていった。
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- 「少しお休みになられては如何ですか?随分と苦しそうですわ。お仕事も大切ですが、今はご自分のお体の事をお考え下さい」
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- ラクスはそう言うとキラの額に手をやる。微熱程度だろうが熱がある。恐らく疲れから来る発熱だろう。休めばすぐに下がる。そう思ったラクスはキラを休ませようとした。
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- 「何で君がここにいるの?また来たの?ステラはもう大丈夫。休み明けには園に行けるからもう心配はしなくていいよ。様子見ならもう帰って。君は保育士でしょ?僕のことは放っておいて」
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- キラからの拒絶にラクスは何故自分がこうも気になってここまで来てしまったのだろうと不思議に思った。
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- 園児の父親。そう思われている男性の家に何故のこのこと来てしまったのだろう。
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- 園児が休んだからといってその園児の家に行き、夕食の準備をし、その子供達に食べさせ、その保護者の体の心配をする。本来であればそれは保育士の仕事ではない。これはその保護者の役目だ。自分の役目ではない。
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- では何故気になったの?ステラちゃんが気になったから?
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- 違う。
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- それよりももっと醜い感情でここに来た。目的はステラではない。その保護者のキラだ。
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- 初めての邂逅以来、ずっと気になっていた。ステラのことを見ているときも、ステラを気になったからではない。確かにステラの事が気になったのもあるがそれは他の園児と同じ感情であってもいいはず。でも、ステラに感じた物はどちらかと云うとその背後にあるものへの嫉妬。ステラがキラの子供ではないと知った時、なぜか感じた安心感。あれは何?それに昨日だってそうだ。園児にレトルトを食べさせようがどうしようが、その家族の方針だ。他人の自分が割り込む問題ではない。
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- 園児のご飯だけを作って帰るというのもあった。だが、何故この家に泊まった?
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- 「心配だから来たのです。放っておけませんわ。わたくしはあなたの事が好きです。喩え子持ちだったとしても、既婚者で、奥様がいたとしても。ですが貴方にその様な方がいらっしゃらないと知った今、諦めることはできません」
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- ラクスはそう言うとキラの仕事道具を奪い取り、キラを立たせる。
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- 「休める時に休まなければどんどんと疲れが溜まりますわ。今は休んでください。今日は勝手ながらわたくし、泊まりますわ」
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- キラは勝手に宣言して勝手に自分の家に居座ることにしたラクスに怒りを感じる。だが、今は疲労が溜まっているせいか言い返す気力もない。どうすれば彼女は帰ってくれるだろうか?今までこの子達のおかげで女性から逃げられていた節がある。だが、自分の子じゃないと何故あの時彼女に教えてしまったのだろうと今になって後悔する。
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- 「ちょっと、勝手にそんなこと決めないでよ。僕が休「子供達のご飯は先程食べていただきましたわ。今はもうお風呂に入って寝ている頃です。今の時間、一体何時なのかお分かりですか?わたくしがここに来て既に3時間はたっておりますのよ?その間、貴方はわたくしにお気づきでしたか?お気づきにならなかったでしょう?その状態で、まだ意地を張るおつもりですか?素直に休んでくださいな。身体が休みを欲しているのです」でも、だからって何で君が僕にそんなことするの。赤の他人なのに」
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- キラの言葉をさえぎって言うラクスの言葉にいまだに反論する。ラクスは強制的にキラを追い立て、横にする。
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- 「わたくしは先程にも言いましたわ。貴方が好きだと。だから放っておけないのだと。あなたが休まないというのであれば見張ってでもここにいますわ」
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- ラクスに強制的にベッドに横にさせられたキラは戸惑うも、反抗する気力をそがれたのか、それとも身体が言う事を聴かないのか、動くことができなかった。
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- 「ほら、動くことができないのでしょう?お食事はどうされますか?一応、ステラちゃんに作ったおかゆが残っておりますわ。食べられますか?」
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- ラクスの言う通りであり、キラの体は動くことができなかった。彼女に図星され、反論の余地を立たれたキラは素直にラクスの言う事を聞き、ベッドで横になる。
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- 「食欲はあるけど今食べたくない。おかゆはそのままにしておいて。食べたくなったら食べるから」
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- 本当は食欲なんて全然ない。だがそんな事を言えば彼女に弱みを見せるようで素直になれない。ラクスはそんな意地を貼るキラにため息を吐くとボソリと呟く。
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- 「大きい子供みたいですわね。ただ、駄々を捏ねているだけにしか見えませんわ。辛いなら辛いと言えば宜しいのに。りんごなら食べられますか?何なら摩り下ろしてきますわ」
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- 「わざわざ摩り下ろさなくてもいいよ。子供じゃあるまいし。ごめん。それと…ありがとう」
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- キラはラクスに笑顔を向ける。それはラクスがはじめてみるキラ・ヤマトとしての本当の笑顔だった。
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- 『反則ですわ。そんな笑顔を向けられれば何でもして差し上げたくなるではありませんか』
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- ラクスは内心キラに愚痴を言うも、熱が上がってきているキラには辛く、ラクスの表情などみていられなかった。ラクスは朦朧とし始めたキラにりんごを剥いて食べさせる。はじめは自分で食べようとするが、気が緩んだのか、既に自分でできない状態にまで悪化していた。
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- 「わたくしが来て正解でしたわね。一体何時からお休みを取っていらっしゃらなかったのです?」
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- あきれた口調で聞くラクスだが、その言葉は優しい。キラはラクスに年の離れた姉を重ねる。
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- 昔、姉にも同じ事を言われた。なんでも詰め込みすぎだと。だから熱を出すのだと。姉と同じ様に接するラクスに何時しかキラは心を開いていった。
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- 「君に迷惑をかけるつもりはなかったんだ。自分で何とかできるって。だから誰にも頼らずにここまであの子達と一緒にやってきた。でも、結局、君に迷惑かけちゃったね。僕みたいなののどこがいいのか知らないけど、こんな子持ち男なんて諦めて他の男を探した方がいいんじゃない?」
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- キラのその言葉にラクスは首を振り否定する。
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- 「貴方だから気になったのですわ。でなければこんな所にわざわざ食材を買って様子見になど来ませんわ。それと、何時までも君と呼ばれるのは嫌ですわ。名前で呼んで下さいな?ラクスと」
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- 「ごめん、ありがとうラクス」
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- お礼を言い終えるとキラは眠ってしまった。ラクスは寝息を立て始めたキラに布団をかけると自分もその傍にタオルケットを持ってきて腰掛け眠る。
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- しかし季節は秋に差し掛かっているので夜は冷える。ラクスは知らず知らずのうちにキラのベッドへと潜り込んでいた。
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- 朝起きると、目の前にはキラの顔がある。
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- 自分の行動を思い出し、夜の寒さに負けてキラのベッドに潜り込んでしまったと気づく。
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- だが、そんなラクスを知ってか知らずか、キラはラクスを抱き枕か何かと間違えているのか抱きしめて放さない。
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- 「このような事をされると、期待してしまいますわ……」
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- ラクスはこのままだと何もできないのでキラを起こそうとする。自由に動く手でキラの顔に触れる。
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- 「ん………ステラ?もうおきたの?……今日は休みだからもう少し……寝かせて」
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- どうやらキラはラクスを寂しくてベッドに潜り込んで来たステラと間違えた様だった。ベッドでぐずるキラの様子を見る。しかし、いつまでもステラと間違えられ、この体制でいるのは些か体制的にも心理的にも危ない。
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- ラクスは未だに夢うつつのキラに軽く口づけすると、キラの耳元で囁く様に手を放してと言う。いつもと違う反応と感触に漸く気付くキラ。ステラならばこんなに大きくはないし、こんな反応はしない。「パパ」と言って縋り付いてくるのにそれはなく、耳元で「放してくださいな、キラ」なんて言わない。それどころか口調が違うし、自分を「キラ」とは呼ばない。更に、言えば声が違う。その事に思い至ったキラは疲れが取れ切れていない身体をガバリと起こし、自分がステラだと思って抱きしめていた人物を確認する。
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- 「な、な、な、なんで「何で君がこんなところに…。ですか?昨日言いましたでしょう?泊まりますと。それにベッドに引き込んだのはキラの方ですわ」嘘ッ」
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- ラクスのついた嘘にうろたえ、いったい自分は何をしでかしてしまったのだとパニックに陥るキラを面白そうに眺め、本当の事は言おうともしないラクスは平然と更なる嘘を重ねる。
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- 「驚きましたわ。眠ってらっしゃるからと思い、布団をお掛けいたしましたら、いきなり腕をつかまれて引きずり込まれたのですもの。その上、抱き枕と間違われたのか放そうとしても放してくださいませんでしたし、仕方ないのでそのまま眠ったのですわ」
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- ラクスがつく嘘を真に受けたキラはラクスに気の毒そうに謝る。寝ぼけて抱き枕の代わりにしてしまったことへの罪悪感を持っているのだろう。これ以上キラで遊ぶのも悪いと思ったラクスはそのままその話を打ち切った。
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- 「ご、ごめん…えっと、君「ラクスです」ラクスは何でここにいるの。昨日も言ったけど、僕なんかやめて他のフリーの男を選んだ方が良くない?僕、子持ちなんだけど。自分の子じゃないけど」
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- キラは子持ちである事を強調し、諦める様に言う。大抵の女性は自分に子供がいると分かると離れていった。聴いても離れなかった女性もいるが、さすがに三人。それも上の子の歳を聞くと逃げ出して行った。こうやって今まで女性を寄せ付けなかったのだが、ラクスはキラに子供が何人いようともびくともせず、それが何か?という様な目で見る。
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- 「それが何か?貴方の子供ではなく、お姉様が帰っていらっしゃるまでの間でしょう?キラはお姉様が帰ってくるまでの間、独身のままを貫き、恋人も作らず、一人でいらっしゃるおつもりの様ですけど、わたくし、そんな事で諦めるつもりはありませんと昨日申し上げましたでしょう?喩え、貴方の子供であってもわたくし、貴方が好きですわ。覚悟しておいて下さいな」
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- ラクスはそう言うと、キラの不意を着いて口付けをする。
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- いきなりのことについていかない頭を何とか働かせ、自分が今何をされたのか自覚し赤くなる。
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- 「な、何を…」
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- ラクスは赤くなり再びパニックに陥ったキラを無視してキラに朝食のことを聞く。
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- 「とりあえず朝食を作ってきますわ。まずは冷蔵庫の中の古い食材を片付けてしまわなければなりませんわね。キラは和食と洋食どちらが宜しいですか?」
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- 「え、悪いよ。それに、僕は朝食要らな「分かりました胃に優しいものですわね。子供達はどちらが好きなのでしょう?」……和食でいいです」
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- キラが折れたことにより、本日の朝食はラクス作の和食のご飯となった。久しぶりのまともな朝食に子供達は大喜び。
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- ラクスは結局その日、一日中キラの家に入り浸り三食とも作った。子供たちは大いに喜び、またラクスが来ることを無邪気に希望する。
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- ラクスは子供達の要望に笑顔でまた来ますと頷いた。
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- キラはその様子を悪いからと断ろうとするが、子供達の懇願の前にはその要望も脆くも崩れ去り、結局、ラクスさえよければと云う事になった。
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- こうして子供達に気に入られ、キラの家に上がりこむ権利を貰ったラクスは度々キラの家に上がりこみ、食事を作るという日ができた。
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- 1ヶ月もすると子供達は何時ラクスが来るのかとキラに催促する様になった。
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- こうしてラクスの餌付け作戦は成功した。
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- 子供達は人間の三大欲求に従順だ。
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- キラがダメでもまずはキラの甥姪の3人を懐柔し周りから埋めていくという方法もある。子供達の胃袋は既に懐柔済み。このままちょくちょく食事を作りに来るという口実を盾にあの三人を見方に取り込み、キラを落とすという手もある。
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- 食事を作っていくうちにキラの嗜好も理解できた頃にはキラもラクスがいつの間にかキラの家に上がりこんでいるのを不思議に思わなくなった。
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- 周りからすればラクスはキラの彼女にしか見えない。まだその様な甘い関係ではないが、周りにそう思い込ますには十分な状況下にはなった。
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- キラがラクスの手に落ちるのはあと少し…。
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- <あとがき>
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- 教師×父兄もとい、保育士×保護者。
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- アンケートでは教師×父兄ですが、これも教育者のうちに入るしありかな〜と思いましてこんな形に……。
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- こんなので宜しければお持帰り下さいませ。
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- できれば感想を聞かせてくだされば嬉しいです。
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- <おまけ>
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- キラとラクスが付き合う様になって3ヶ月、キラの姉が帰ってくるという連絡があった。
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- 「まあ、お姉様が帰ってらっしゃるのですか?何時頃?」
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- 「来月。だから引っ越さなきゃ行けないんだよね。あの家は姉さんの家だから。だからどっか探さなきゃ」
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- キラは住宅情報誌をめくり部屋探しをする。ラクスは前々から思っていた事を提案する。これはキラや子供達さえよければ切り出そうと思っていた事だったが、キラがあの家から出るとなれば話は別だ。部屋を探していると言うのであればなおさら好都合。
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- 「ではキラ、わたくしのマンションに来ませんか?わたくしの部屋は父に買って頂いた物ですが、二人で暮らすには十分すぎる程の広さですわ。元々、キラや子供達が宜しければわたくし、キラと一緒に暮らしたいと思っておりましたの。いかがですか?」
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- ラクスの提案にキラは今までラクスの家に行った事がない事に気付く。それに付き合い始めてから二人きりでデートと云う事もない。いつも子供達がついてくる。その事を考えればラクスにいつも悪いなと思っていた。その上部屋まで彼女の面倒になると面目が立たない。
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- 「でも、僕がそのマンションに越したとして、君のお父さんに悪くない?君のだとしても名義はどうなの?」
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- キラは気になった事をラクスに聞く。すると名義も自分の物になっていると言う。それを聞いてマンションを持っているというより、それをほいほいと娘に買い与える父親とは一体どんな人物なのだろうと思った。
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- 「キラはクライングループをご存知ですか?父はそのグループの社長ですわ。わたくしが保育士になったのは社会勉強の為ですし、2年限定で許してくださいましたの。その期限ももうあと少し。その間に想う方が現れなければ父の決めた方との結婚が決まっていましたの。ですからキラと出会えて良かったですわ。そのことも含めて、父と会って頂けませんか?」
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- キラはラクスがお嬢様だとはうすうす感じてはいたが、まさかこの国の5大企業のお嬢様だとは思ってもいなかった。
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- 「ク、クライングループってこの国の…。嘘…でしょ?」
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- ラクスはけろっと本当ですと肯定する。
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- 「わたくしがこの2年でこの人と思う様な人を連れてこなければ昔からの婚約者との結婚が決まっていました。ですが、わたくし、このままあの方と結婚しても良いのかと思い、2年の執行猶予を貰ったのですわ。ですから、キラと付き合う時、結婚を前提として考えて下さった事は嬉しかったのです。それに、わたくしの後ろの物をご存じないので、そのままのわたくしを見て下さったと云う事ですもの。キラを騙すような事をしたのは謝りますわ。キラの事は一度父に話しています。父は一度会って見たいと仰いました。ですから一度父と会ってくださいな」
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- キラはいきなりの大物との対面に度肝を抜かれたが、これは通らなければならない道と覚悟を決め、ラクスに案内されるがまま、その日のうちに対面する事になった。
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- キラはそのままラクスの父と対面し、その日を終えた。キラは緊張のあまりあまり話す事ができなかったが、ありのままのキラを父に見せる事ができたラクスは一人満足していた。
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- ラクスは父にキラの感想を聞く。
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- 「お父様。キラとのご対面はどうでした?あの、電脳界の帝王とまで呼ばれた方との邂逅は…」
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- ラクスは父に寄り添い、キラとの感想を聞く。
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- 「電脳界の帝王、電脳界の覇者を実際に見れるとは思ってもいなかったよ。ラクス、彼があの人物だと何時気付いた?」
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- 「二度目に彼の家に上がりこんだ日ですわ。彼の仕事を取り上げた時に知りましたの。ですが、わたくし、キラがそれだから惚れた訳ではありませんわ。キラがキラだからです。お父様、キラとの事、お認め下さいますの?」
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- ラクスは分かっていながら父に聞く。父はもちろんかの大物を逃すつもりはない。キラとの結婚はこの後クライン親子の手により、早々にまとめられ、キラはラクスと結婚する事となる。
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- 罠に嵌ったのは一体何時の頃からだろう。
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- ラクスと結婚した後にキラはそう言って昔の事を振り返る日があったのは余談である。
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水沢様よりフリー小説をいただいたきました。(2つ目)
ありがとうございます。
欲しいと申したのは『計略』の方だったのですが、水沢様のご好意でこちらもいただきました。
『計略』もそうでしたが、パラレル設定、物語の運びは本当に抜群です。
だらだらと無駄な説明が多い拙宅の話違って、軽快な感じて話が進んでいくのも素敵です。
改めて水沢様、素敵な小説をありがとうございました。
水沢聖様の『Serenade』はこちら →
Serenade
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