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- ★相賀様のお言葉★
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- ※『SEED SHINE』FINAL―PHASEのパラレルです。設定をお借りしています。
- 小鳥遊先生、事後承諾で、誠に申し訳ありませんm(_ _)m
- 突発的に思いついた駄文で、こんなのがありますが、如何でしょう?
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- ちなみに、最終話:結婚式直後の披露宴会場のお互いの控え室です。
TITLE ■ 彼らの本音、彼女たちの想い ■
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- 【Bridegroom−Side】
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- こういう時、男に生まれて、本当に助かったと思う。おまけに、軍人であることも。
- ラクスやカガリは、自分たち同様、着せ替え人形のように、パートナーであるふたりの為に誂えた一点物のタキシードを、キラとアスランに着せようとしていた。だが生憎、自分たちには、公式の場でも、ちゃんと通用する軍服があったのだ。
- キラは勿論、ZAFTの指揮官服である白。
- アスランは、オーブ軍の将官用軍服。
- ただ普段着用している通常軍服とは違い、式典用の礼装をふたりは身に纏っている。
- どちらも階級章の代わりに勲章が胸元を飾り、キラの詰襟の襟元には、精巧な金糸銀糸の刺繍。アスランの軍服は、いつもの緑のインナーではなく、ドレスシャツにタイ、そして、金の飾り紐。
- ふたりのその衣装は、現在のお互いの立場を強調し、その地位を内外に向けて確立させていた。
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- そして、いまは、厳かな雰囲気の結婚式場から、各国要人を招いた華やかなパーティ会場に場所を移していた。
- ふたりにとって戦場よりも更に苦手な社交場ではあったが、今日ばかりは逃げ出すわけにもいかない。ひとりは今日の主役で、もうひとりは国賓クラスの招待客だからだ。
- その控え室で白のタキシードから、今度は軍服に着替えているキラに、アスランは休憩ついでにコーヒーを啜りながら、ふとキラに話しかけた。
- 「正直言って、お前たちふたりが『きょうだい』で、ホッとしたんだ。あの時」
- 「え・・・?」
- 窮屈そうにきっちり軍服の襟を止めると、キラは鏡から振り返った。
- 「でも、その反面、羨ましくもあった」
- 「アスラン?」
- 意味を図りかねて、キョトンとしているキラに、アスランは微苦笑を浮かべた。たまには自分の方からキラに、訳のわからない話題を振るのも新鮮に思えたのだ。
- キラとラクス、カガリと自分、今日を境にまた新たな関係が始まる。その前のデモンストレーションみたいなものだ。
- ふいに過去の自分たちを振り返りたくなって、彼は口火を切ったのだ。
- あの頃の自分の思い。それをいま本音で語る。
- きょうだいの名乗りに偶然立ち会った、あの時。
- 自分とは違う、双子という特別な繋がり。血縁関係という絶対的な絆を知った。
- こればかりは、羨ましいと思っていても、努力では乗り越えられない問題だったのだ。
- 「なんで、今頃、そんなこと言うのかなあ・・・アスランは」
- 「ちょっとした恨み言だ。気にするな」
- 話題を振っておいて、それはないだろうと思う。キラは呆れたように、肩を竦めた。
- 「おめでたい日にいうこと? じゃあ、僕もついでだから言おうかな」
- 「何を?」
- 「婚約までしていたのに、キミたちの間に恋愛感情がなかったこと。僕も、正直ホッとしたんだ。やっぱり親友の婚約者って、複雑だから」
- 「そうなのか?」
- 「うん。そうだよ」
- とてもそうは見えなかった。あの頃から、キラとラクスの間には気負いのない自然な空気が流れ、お互いの存在を認め合って、魂の部分で強く惹かれあっていた。他はまるで眼中にはないように思えたのだ。
- 「だが、あの婚約は、婚姻統制をプラントに浸透させるための、政策の一環であるプロパガンダとしか意味はなかったんだ。そこに自分の意志はなかった」
- アスランは客観的に、当時のことを捉えている。
- 「・・・・・うん。それはわかってる」
- キラも、その辺りの事情は理解しているつもりだ。
- それは、象徴的な意味合いを含んだ婚約。コーディネイターの未来の方向性を示すために結ばれた契約みたいなものだった。
- 「でもさ。アスランは、ラクスのこと好きだったんじゃないの?」
- キラにとって、少々、聞きづらいことであったが、臆することなく率直に訊ねた。以前から、一度は、彼に確かめてみたいと思っていたことだ。
- 「なんで、そう思ったんだ?」
- あの頃のアスランとラクスの間には、婚約者とは言っても、一定の、そして越えられない絶対的な距離があった。互いの領域に踏み込まず、踏み込ませない、礼儀正しく・・・親密さのない、ぎこちない距離。それが縮まることは、一度としてなかった。
- それを容易く飛び越えてみせたキラとは違うと、彼は笑った。
- 「だって、ラクスは誰の目で見ても綺麗で優しくて、男から見たら、やっぱり理想的な女の子じゃない。僕の目から見たラクスは少し違うけどね。さすがのアスランだって、グラッときたんじゃない?」
- キラにとってのラクスは、何にも代え難い最愛の人。彼女がいたからこそ、自分を見失うことはなかった。ありのままの自分を愛することを、人を愛する喜びを教えてもらった。最後まで、自身の戦いを戦い抜く覚悟が持てたのだ。
- 「彼女に対して持ったのは、義務と優越感かな。それ以外は・・・ないな」
- それは恋人や婚約者に向ける、甘い感覚ではなかった。キラは、その言葉に複雑な気持ちになる。
- 「義務と優越感?」
- 「ああ、ここに響かないものばかりだ」
- 首を傾げるキラに、アスランは立てた親指で軽く、自分の胸を指した。
- 「迸るものや、溢れ出すようなものを、何も感じなかった。欲しいものとは、何かが決定的に違っていたんだ」
- 「堅物で、融通が利かない面倒な性格だけど、意外と情熱的だからね。アスランは」
- キラの冷やかし半分の言葉に、アスランは拗ねたようにそっぽを向く。
- 「・・・・・いいだろ。別に」
- 「でもカガリには、それを感じたんでしょ?」
- アスランにとってのカガリ、自分にとってのラクスは、まさしくそういう存在なのだ。何よりも心が・・・魂が反応した。運命も、必然も関係なく、強く惹かれあったのだ。
- 「聞くなよ。そんなこと」
- 判りきったことを、尚もふざけた調子で笑いながら訊くキラに、アスランは頬を朱に染めた。
- 「素直じゃないなあ」
- 「余計なお世話」
- すかさず返したアスランは、ふと生真面目な表情で呼びかける。
- 「キラ」
- 「なに?」
- にこやかに振り返るキラに、アスランは穏やかな眼差しを向けた。
- 「結婚、おめでとう。幸せにな」
- 「うん。ありがと」
- 親友から贈られた心からの言葉に、キラは温かい気持ちに満たされて、嬉しそうに笑う。
- そんな彼に向かって、アスランは、最後に意味深に口角を持ち上げた。
- 「どういたしまして。義弟くん」
- 「だから、僕が兄貴だって! いつも言ってるでしょ!?」
- わざとらしい宣言に、キラはやっぱりいつも通りの自分らしい科白を投げ返した。
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- 【Bride-Side】
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- 控え室には、幻想的な美しさを誇る今日の主役である花嫁が静かな表情で座っていた。
- 軽くメイクを直して、シルクレースのベールの皴を伸ばし、新しいブーケを手にしたラクスは、次の舞台に備えている。
- 彼女にとって、今日は神の前で永遠を誓った最も幸福な日であり、また最も忙しい一日でもあった。
- 「ラクス、今日は世界一綺麗だぞ」
- 後ろからそっと鏡を覗き込み、彼女の長いベールを軽く整えながら、カガリが鏡越しに笑顔でそう言った。
- 「カガリさんにそう言って頂いて、本当に嬉しいですわ」
- 「言っておくが、お世辞じゃないぞ。これなら、キラも惚れ直すさ」
- 純白の花嫁衣裳は、これ以上ないほど、ラクスの美しさを引き立て、今日の幸せを彩っている。
- 「カガリさん。今日は、本当にありがとうございます」
- 誰よりも忙しい最中、彼女は何を置いても遠い地上から、自分たちの婚姻を祝うために駆けつけてくれた。彼女はラクスにとって、親友であり、同じ立場に立つ同志であり、そして大切な人と血を分けた姉弟であり、家族だ。
- そのうえで、彼女は喜んで、キラとラクスの願いに応えてくれた。
- 「礼を言うのは、むしろ私の方だ。アイツのこと、これからも頼むな?」
- 「はいっ」
- ラクスは柔らかく微笑み、大きく頷いて見せた。
- 「でも・・・花嫁の付き添いが、本当に私でいいのか?」
- 親友などの近親者が務める『ブライドメイド』。
- と、言っても、特に何もすることは無い。控え室で、時を待つ花嫁の傍らにあって、話をするくらいだ。それでも、カガリはどことなく遠慮がちに訊ねる。
- 「ええ、勿論ですわ。カガリさんは、わたくしにとっても、親友であり、大切な家族ですもの。キラも、アスランにお願いしましたし」
- あちらは、子供の頃から共に育った兄弟みたいな幼なじみに加えて、互いを知り尽くした親友だ。『ベストマン』の資格は、充分あり過ぎるくらいだろう。
- 「・・・うん。ありがとう、ラクス」
- ラクスは、臆することなく公然とカガリを親友と呼び、家族と呼んでくれる。失ってしまったものを再び得られたような気にさせてくれる彼女の優しさと温かさが伝わってくるようだ。感慨深げに、ラクスを見つめるカガリに、小さく首を傾げた。
- 「カガリさん?」
- 「幸せになってくれよ。誰よりも」
- 「はい。お義姉さまのように」
- 「やっぱり、やめてくれ。それ・・・」
- 「まあ」
- ふたりで楽しげに笑い合っていると、ドアがノックされ、ディアッカとイザークが顔をみせた。
- 「まさに『眼福』とは、このことだよな。女神ふたりが揃うと、一段と華やぐなあ」
- 純白の衣(きぬ)を纏う天空の女神の横には、淡い翡翠の衣を纏う大地の女神。
- 平和の象徴的存在であり、この世界の導き手。マスコミの連中がいたら、競い合うようにシャッターを押したことだろう。そんな輩を摘み出すのが、いまの彼らの役目だ。
- 「おまえら、新郎側の友達だろう? なんで新婦の控え室にいるんだ?」
- 「軍服姿の野郎ども見ても、全然楽しくないだろ? あんなの、もう見飽きてるし。やっぱりさあ、綺麗な方が目の保養じゃん」
- 相変わらずの軽い調子の科白に、ディアッカの隣で、イザークは大袈裟に溜息を吐く。
- 「俺は、警備の都合で来たんだ。この馬鹿と一緒にするな」
- お祭り気分で浮かれたディアッカとは違い、イザークは顰めっ面で言い放った。
- 「おまえはまた、理屈の多いヤツだよなあ」
- 呆れた様子のカガリに、イザークは微かに不機嫌そうに目尻を吊り上げる。
- 「そういうおまえは、少しも落ち着きがないな。もうすぐ人妻だろ? いい加減」
- 説教じみたイザークの厭味を遮って、途端にカガリが眉尻を跳ね上げた。
- 「ああ、もう! いきなり何なんだよ。おまけにアスランより煩いっ!!」
- 「なんだと!?」
- 「おい、いきなりおっぱじめる気かよ」
- 好戦的なふたりに、ディアッカもさすがに場所柄を考慮して諌めようとした。だが、残念ながら、それをしおらしく聞き入れるような性格を持ち合わせていないのだ。どちらも天井知らずの負けず嫌いだ。
- しかし、毎度のことながら、まるで出会い頭の衝突事故のようだ。派手な分だけ、始末が悪い。
- 「ふん、素直に言えばいいじゃないか。憧れのマドンナがお嫁に行くから、その前に口説いておこうって。それとも何か、キラに続いて花嫁強奪か? 絶対、駄目だからな!」
- カガリの喧嘩上等の物騒な科白に、ディアッカは呆れた。言葉を挟む気もしない。隣の彼の抑制限界点は、ただでも地上スレスレなのに。
- 「お・・・お、おまえ、いきなり変なこと言うな!」
- 「だって、本当のことだろ?」
- 真っ赤になって怒鳴りつけるイザークに、カガリはしれっと答える。懸命に隠してはいるが、彼がラクス・クラインの信奉者であることは周知の事実だ。
- 「まあ、こちらも賑やかなこと」
- 二人に続いて控え室に現れたのは、カリダだった。その両腕には、双子の子供たちが抱かれている。こちらの子供たちも、大人たちのやり取り以上に賑やかな事態を迎えていた。
- 「お義母さま」
- 「叔母さま」
- 室内の人物たちに向かって和やかに微笑んだカリダに、ラクスとカガリが同時に呼びかけた。
- 「ごめんなさいね。折角支度が整ったのに。起きたらママがいなくて、少しぐずっているの」
- 式の間中、穏やかな眠りについていたキラとラクスの子供たちは目覚めると、カリダを少々困らせているようだ。
- 「あらあら・・・。すみません。お義母さま」
- ラクスは、むずがって泣き出していた子供たちを引き取ると、優しくあやした。母親の腕の中に戻ると、その温もりにやはり安堵したのか・・・子供たちの顔に笑顔が戻る。
- 「ちょっと抱かせてもらってもいいかな」
- ご機嫌の直った双子の顔を覗き込んでいたカガリが我慢できなかったようだ。スキンシップ過多の彼女は、直接子供たちに触れてみたくて、ラクスに強請ってみる。
- 「ええ、勿論ですわ。抱いてあげてくださいな」
- 「やっぱり可愛い。欲しくなっちゃうな」
- 小さくて温かいぬくもりを腕に抱かせてもらい、母性を少なからず刺激されたカガリを見遣って、ディアッカがとんでもない科白を聞かせた。
- 「アスランに言えば、一発だろ」
- 「ば、ばかっ! 子供の前で、下品なこと言うな!」
- その意味を悟って慌ててディアッカを叱責するが、小声で返すことは忘れない。いきなり大声を出せば、子供たちが驚いて泣いてしまうからだ。
- そんな小さな気遣いも、わかっているのだろう。子供たちは揃って、カガリに笑顔を返してくれた。
- 「カガリさんのことが、ちゃんと判るのね。笑っているわ」
- 「ええ、本当ですわ」
- カリダとラクスは、そのご機嫌な様子に微笑みあった。
- 「オバサン、だから?」
- 調子付いて皮肉の笑みを向けるディアッカに、カガリは不快感を露にした棘のある視線を返した。『オバサン』と呼ばれて喜ぶ未婚の女性はいない。
- 「おまえ、それ・・・わざと言ってるだろう?」
- 「となると、アスランは、オジサンか。いい気味」
- 口の端に、同じく皮肉の笑みを刻んだイザークに、カガリは心底呆れた。こちらはまた相変わらず、アスラン相手は手厳しいようだ。
- そんな中、慣れぬ環境に興奮して疲れたのか、子供たちはまた小さな欠伸をした。カガリは、母親の手の中に子供たちを返すと、そっと微笑みかける。
- 「この子達が、涙と争いがない新しい時代に生きられように、私たちはもっと頑張らなくてはいけないな」
- 「はいっ」
- 共に『光』の名を父親から与えられた子供たち。その名に込められた願い、自分の意志で描く夢のように、光に包まれた未来を歩んで欲しいと、ラクスは思った。
- そして、叶うことならば、自分たちのように大切な誰かと巡り会い、その誰かの人生を照らす一筋の『光』と為らんことを。
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- ・・・軽いノックに振り返ると、新郎であるキラがドアから顔を覗かせた。
- 「ラクス、そろそろ時間だけどいい?」
- 「はいっ♪」
- 優しく差し出された手に、彼の妻となったラクスはそっと自分の手を重ねた。
- 誰もが笑顔で迎えた幸福な一日は、まだまだ続く。
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- こちらは、私信です。
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- 言い訳か、それとも、設定裏話か・・・A^_^;)
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- ★ ほっんとうに、すみません!! ついつい書いてしまいました。(でも楽しかった)
- ★ ですが、他人(ひと)様の設定で、なんてことを・・・。深く反省と心よりお詫び申し上げます。
- ★ この話は、結婚の時の、新郎新婦の付添い人をアスカガにしてみました。未婚の若い男女が付添いになるので、ぴったりかな・・・と。
- ★ 付き添い役は、親友または友人もしくは、きょうだいを、当人たちが指名します。米国のロマンス小説の中では、当たり前のようにある設定。実は一度、やってみたかった設定なんです。
- ★ ちなみに、アスランが『best man』で、カガリが『bridesmaid』です。
- ★ S.S2本分の長さに加えて、好き勝手(終わりは真面目に、でもコメディ方向)に書いて、本当にすみません・・・(再度、猛反省orz)
- ★ 小鳥遊 新生さま。できれば、もらってやってください。
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相賀藍様より『SEED SHINE』終了記念としていただいた小説です。
こちらはFINAL-PHASE直後に結婚披露宴を開催した時の様子です。
私は結婚式の話を書いた時点で満足してしまったので、その直後の話など全く気にも
止めていませんでした・・・。
その辺りをうまくフォローしていただいた感じです。
キャラクターも拙宅で描いていたキラ達が鮮やかに表現されていて、いやはや、
もったいないくらいです。
また、SHINEを読まれていた方には、こんな風に見えていたんだという勉強にもなりました。
改めまして、完結のお祝いのお言葉、そしてこんな素敵なお話をありがとうございます。
こんな素敵な作品が数多く揃えられている、
相賀様の『CROSS ROAD』はこちら →
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