Snowdrop
- 町はクリスマス色一色。プレゼントがもらえるかどうかはしゃぐ子供達の声や、クリスマスデートを楽しむ恋人達でにぎわっている。
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- そんな雑多な町並みを遠くから眺めている女性が一人。その傍では優雅に本を読みながらお茶を飲む男性が一人。シーンと静まり返った中に険悪なムードが漂っていた。
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- いつもは仲の良い事で周りが当てられるほどなのに、今日に限っては朝から何があったのかは知らないがいっこうに顔をあわせようとしない。珍しくこの屋敷の主二人が揃っているというのにも拘らずいつもの和やかなふんわりとした空気が静電気を孕んでいた。
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- こんな様子の主二人を目にした事のない周りの使用人達はいったい何事だと恐々と見守る事しかできないでいた。
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- 本来であれば今日は他の恋人たちの例に漏れずデートの予定だったのだがこんな険悪な雰囲気のままではそれどころではなく結局二人して屋敷に居り、ぴりぴりとした空気を発生させていた。
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- 不意に男主人の方に通信で呼び出しがかかり彼は彼女に話しかける事無く出かけて行ってしまった。その彼の後姿を横目で見送ると女主人は先ほどにも増して不機嫌オーラを辺りに撒き散らしていた。
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- 『キラのバカ。本当にわたくしには話しかけも触れもせずに行ってしまうなんて………。確かにあれはわたくしも悪かったです。ですが貴方がそのつもりならもう良いですわ。こちらにも考えと云うものがあります』
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- 女主人事ラクスは思い立ったらすぐ行動ととある場所に連絡を入れ、そのままどこかに行ってしまった。
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- そんな二人の主人の様子をただ見守るしかない使用人達は早く元の二人に戻ってくれないかとばかり願うしかなかった。
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- 「よう、キラ。クリスマスなのに呼び出して悪かったな。折角二人そろっての休みだったんだからどこか行くところじゃなかったのか?」
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- ニヤニヤしながら呼び出した張本人のバルトフェルトは呆れるほど能天気にキラに声をかける。だが今のキラにはラクスの名は禁句。不穏な空気を発生させ始めた。
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- 「別に構いませんよ?どの道今日は家で暇をしていたところですから」
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- 黒い空気を発生させながら飛び切りの笑顔で答えるキラ。はじめはデートを邪魔されたから怒っているのかと思っていたが話を進めるにつれそうではないと分かった。
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- 「なあキラ。いったいラクスと何が「それよりもさっさと仕事終わらせますよ。このまま放っておいたら大変です。感染したのはこれだけなんですか?」」
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- 聞き出そうとしたバルトフェルトの言葉を遮り仕事を優先させようとする。確かにそのためにキラをここに呼んだのだがこうも感情を悪いい方へと傾くとなると心配だ。この二人は二人揃っていて当然と見られている。その二人が珍しくも喧嘩しているとなれば早く仲直りしてもらわねばこちらが気まずい。それだけで済むのならば良いが、そのオーラに当てられるこちらの身にもなってもらいたい。普段はそうとは気づかせない二人だが、気を許している者達にはおおっぴらだ。
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- ラクスは今まで感情を露にする事はなかったのだが夫婦(まだ籍は入れていないが周りには既に夫婦として扱われている)とは似るものなのかそれともキラの影響かある程度の感情の発露が分かりやすくなった。キラに対しての感情は、だが。
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- 逆にキラの感情を読むのは至難の業。今までは表情豊かだったのだがいったい何をその笑顔の裏で考えているのか分からなくなった。そんなところを見習わなくて良いと言いたかったがある程度のポーカーフェイスは必要。だが必要以上に負の感情を隠すのが旨くなってしまった彼に憐憫の感情を抱かずにはいられない。
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- 『全く、変なところで感情を隠すから手に負えない。だが、この分だとすぐ収まるかもしれん』
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- バルトフェルトはシステム制御室に送られて来たウイルスに感染したデーターのウイルス処理、及び修正をしているキラを見つめながらそう思っていた。そう思い始めたところに、心底困り果てた表情のダコスタが転がり込みバルトフェルトに耳打ちする。ダコスタから齎されたそれを聞いたバルトフェルトはおおよその喧嘩の原因を突き止めると苦笑するしかなかった。
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- 暫く激を飛ばしながら対応に追われていた現場だったがキラ到着とともに作業スピードが速まり、的確な指示の元、そう時間がかかる事はなく作業終了となる。
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- 「すみませんヤマト隊長。お休みのところお呼び立てして……。大丈夫でしたか?」
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- 一人の技術者がキラに声をかける。元々キラの得意とする分野は戦闘よりもこちらであるのは周知の事実。まるで気にしていないと云う風を装っていてもここ数ヶ月ばかり全く休みのなかったキラの漸く取れた休暇にこんなトラブルで呼び出してしまった事に体の方は大丈夫なのかと心配になる。だがその言葉の意味をどう取ったのかキラは折角の休暇をつぶしてしまって予定とかは大丈夫なのかと聞かれているものだと思い笑顔で大丈夫と答える。そして折角来たのだからと他の方面のデーター分析や処理、感染防止などをこういう話をしながら行っているキラをその技術者は尊敬の眼差しで見つめる。
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- 作業にひと段落つき、感染防止のワクチンプログラムを作ると他の部署にも渡せる様にとコピーをとり、技術者に渡す。そして次のデーター処理に手を出そうとしたキラの首根っこをバルトフェルトは摘み上げ、キラの手からパソコンを奪い取る。
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- 「今日はそこまでにしておけ。働きすぎだ。お前いったいいつから休んでいないんだ?少し寝ろ」
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- 「え……大丈夫です。それにこの中途半端なままほっといたら逆に気になって寝れません。だからもう少しできるだけやってから寝ますから下ろしてください」
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- 吊り上げられた状態でまだ仕事をしようとするキラを呆れた目で見ながら周りの者達にキラの力が必要な所はあるのかと聞く。だが既にキラがいなければどうにもならないという最悪状態は過ぎ去り、後は確認だけの状態。別にキラでなくともできる状態だった。
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- それを確認するとバルトフェルトはキラを強制的に連れて行こうとする。暴れるキラを片手でつまみ上げるバルトフェルトのその姿は威嚇する仔猫をつまみ上げている様にしか見えない。この様子だけ見るととても誰の追随も許さないあの世界最強のFREEDOMのパイロットだとは思えない。
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- だがこの姿で侮ってかかれば痛い目を見るのは大戦の折に十分身に沁みて理解している。仔猫に見えても実際は孤高の存在であり、あのラクス・クラインが唯一総てを預ける唯一人の存在である。
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- 侮ってはいけない。
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- 強制退場させられているキラを遠眼で眺めながら技術者達は自分の作業に戻った。
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- 一方バルトフェルトにつまみ出され強制的に連れ去られているキラは暴れるのにも疲れたのか大人しく担がれて個室の仮眠室に放り込まれた。別に個室でなくても良いと思うキラだったが、キラの寝顔はある意味プレミアがついているため騒ぎになる。騒ぎとなっては寝られるものも寝られないだろう。それにもうすぐ不眠の特効薬が来る。
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- 「ほら、さっさとベッドにはいって寝ろ。マルキオ導師のところの子供達の方がよほど手が掛からん」
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- バルトフェルトに促されて横になるが寝られない。
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- 気になる事は色々ある。
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- 昨日も仕事をきりの良い所まで済ませ、ラクスと今日はどこかに出かける予定だった。場所は彼女が行きたいと言った場所にしようと特に決めていなかった。彼女とならばどこでも良かった。
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- だが余にも根詰めすぎて働くキラの態度にキラの身体を心配したラクスは途中でキラからパソコンを奪い、強制終了させた。その際、まだ保存をしていなかった部分は総て消去され、またやり直しとなった。
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- 疲れが溜まっていた事とやり直しの上に自分の事を棚に上げてキラに休めと言うラクスに苛立ち、暫く声をかけるな。ほっといて欲しいと当たってしまった。本当はそんな事思ってもいなかったのに声に出たのはそんな言葉だった。
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- ラクスもラクスで売り言葉に買い言葉で暫く触らないで下さいと啖呵を切られ険悪な雰囲気のまま一夜を過ごす事になった。
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- 折角の二人揃っての休み。
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- それもクリスマス。
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- こんな険悪なままで過ごすつもりはなかったのだが何分お互いが頑固なだけになかなか謝る事はできず、何も言わずにここに来た。今頃ラクスはどうしているのだろうと気になって仕方のないキラが寝られるわけがなかった。
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- その頃ラクスはダコスタにつれられてキラのいる仮眠室の前にきていた。ラクスがなぜここにいるのかはキラが出て行った時間まで遡る。
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- キラが出て行った後、その話の内容からシステム関係に何らかのトラブルが起こり呼び出されたのだろうと推察できる。キラが急に呼び出しを受けるものは軍部関係では自分に関係するものばかり。その自分に何の連絡も無く、自分を飛び越えてキラ自身に連絡が行くなどOS関係に他ならない。
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- ラクスは評議会にいるバルトフェルトを呼び出そうとしたがあいにく席を外して制御室に篭っていると言う。ならばその副官のダコスタでも構わないから呼び出してくれと頼んだ。すると血相を変えて飛び込んできたダコスタはいったい何事かあったのかと云う顔をしていた。彼は上司によく振り回されている為か(そこに自分も含まれているとは気付いていても気づかないフリをする)また難題を吹っかけられるのかと顔に微妙に出ていた。
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- ラクスは事の詳細をダコスタに話すとすぐ迎えに来てくれるという。そうとなれば自分もあの場所に行く準備をしてダコスタが迎えに来てくれるのを待った。
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- 「全く、殿方と云うものはどうしてこうも手が掛かるのでしょう。カリダさんの言った通りですわ」
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- 車の中でラクスはぶちぶちと愚痴を零す。昔、まだオーブにいた頃、キラの義母カリダが言っていた。男はいつまでたっても手のかかる大きな子供だと。手がかかる事で時にはイラつく事もあるがそれは彼が自分には本当の姿を見せられる信頼の証拠、甘えられている証拠なのだと。だが余にも手のかかる時は鉄槌を下さなければ図に乗るのでそのタイミングは間違えないようにと教えられた事がある。その事を思い出したラクスは知らず知らず微笑む。
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- 『ですがあのようなキラをお世話できるのはわたくしの特権なのでしょうね。他の女は知らない子供っぽいキラ。あのように意地を張ってしまうキラを見る事ができるのはわたくしだけですわ』
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- ラクスの到着する頃には既に作業は終了していたらしく、あわただしく血相を変えた技術者達に今は安堵の色が見え始めていた。キラの場所を聞くとまだ制御室でデーターの確認をしているという。いったいどこまでお人好しなのだろうと呆れ返る。手を抜く時は徹底的に手を抜くくせに妙なところで凝る彼にため息が漏れる。
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- ラクスが制御室に向かった頃、見るに見かねたバルトフェルトがキラを担ぎ上げて仮眠室に放り込んでいた。
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- すれ違いになってしまったがキラの放り込まれた仮眠室は個室。喩えプラント最高評議会議長である自分がその部屋に進入しようとも出て行く時と入る時に人払いをしておけばその場のパニックは起きまい。それでなくともその部屋で寝ている人物が誰であるかを知れば別にとやかく言われることもないのでそのまま仮眠室に進入する。ロックはかけてあると云ってもハロにかかればないも同じ。あのハロのクラッキングに勝るロックをキラがかけているのならまだしもそんな事をする暇なく放り込まれているはずなのでその心配はない。
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- 進入した先は薄暗くシーンと静まり返っていたがキラが起きている事ぐらいは気配で分かる。ここ最近は彼の寝ている姿をとんと見かけた事はない。いつも何かしら仕事をしており自分にはもはや解読不可能な文字の羅列をPCに打ち込んでいた。今日だって本当ならば折角の休みなのでどこかに出かける予定だった。だが昨夜のいざこざの結果どこかに二人そろって出かけるという雰囲気ではなくなり、ぴりぴりした空気をお互いに放っていた。何でこんな時に喧嘩をしてしまったのだろうと思うがそれも相手を想うからこそ。お互い仕事ばかりで休んでいない。それは重々承知しているが面と向かって言われれば尺に触る。それも苛々している時にいわれれば尚更だ。タイミングが悪かった。それでここまで尾を引いている。
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- 「眠れないのですか?」
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- ここは自分が折れた方がよいだろう。元々の発端は彼の仕事を取り上げた際に自分が仕事内容のデーターを消してしまった事から大きくなった。普段の彼であればそれは仕方なかった事と流してくれていたかもしれない。だが詰まっていたのだろう彼の成果を水の泡にしてしまった。それではさすがの彼もついカッとなり当たってしまうのもわけない。それで引っ込みがつかなくなってしまったのであればこちらが歩み寄るまでだ。
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- 「何しに来たの?大体今日は休みでしょう?なんで議長がこんな所に来てるのさ」
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- おおよそ議長に対する口調ではないが彼の機嫌がだいぶ落ち着いてきているのだろう。今朝までの様にいっこうに話しかけもしない状況よりかはましだ。
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- 「あら、わたくしがここに来てはいけないと云う事があるのですか?キラとて今日はお休みのはずでは?呼び出されたとは言え、既にお仕事は終わっていらっしゃるのでしょう?キラのお迎えに来るのはいけない事でしたでしょうか?それともまだ昨日の事を怒ってらっしゃるのですか?それとも意地を張ってらっしゃるか」
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- 不敵にそう言い切られ図星を指されれば不機嫌にもなる。プイッとそっぽを向いたままラクスを見ようとはしない。
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- 「いつまで意地を張るおつもりですの?好い加減になさいませ」
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- 何時にない厳しい口調でキラを強制的に向かせる。キラの目の前には厳しい口調とはかけ離れた心配そうな目を向けたラクスがそこにいた。
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- 「わたくしはキラの体が心配なのですわ。ここ数ヶ月ろくにお休みを取っておりませんでしょう?その上ここ最近は徹夜ばかり。何をなさっているかは存じませんがいくらなんでも過労で倒れてしまいますわ。コーディネーターといえども過労は過労。いつか本当に倒れてしまいます。休日ぐらいはお休み下さい。それともキラはわたくしが心労で倒れても関係ないとでも仰いますの?」
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- そう来るとは思わなかったキラは観念し、口を開く。だが一切ラクスには触れない。売り言葉に買い言葉とは言え、ラクスは自分に触るなと言った。そこの所は意地でも彼女の方から求めてこない限りは譲るつもりはない。
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- 「ゴメン……でも、それも今日までだから。後は無事に稼動するかだけだから」
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- いつもであれば仲直りの抱擁がここに来るはずなのだがキラは苦笑気味の照れ笑いをするだけ。最近キラに触れていなかったからかキラ不足気味のラクスは不満だ。キラが抱きしめてくれないのはなぜかと目で訴える。だがそんな自分の欲求を理解しているであろう彼は微笑むだけ。
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- 「キラ?」
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- 疑問を含めた呼びかけに何を問うているのか分かっているくせに実行してくれないキラにじれったさが勝る。
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- 「なぜ触れて下さらないのです?もうあの話しは「終ってないでしょ?君は僕に触れるなって言ったじゃないか。議長殿の命令に従ったまで」っっっ意地悪ですわ。あれは言葉のあやですっ」
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- 尚もあの時の言葉を引き合いに出してくるキラにイラつく。だがそう言って命令口調で議長としてキラに言ったのは自分だ。本気で言ったわけではない事ぐらい分かるようなものをここに来て反撃を食らう。悔しいが今回はキラの勝ちだ。
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- 「では命令です。あの言葉を取り消しますわ。わたくしを唯のラクスに戻してください」
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- 「仰せのままに。おいでラクス」
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- 久しぶりに感じるお互いの体温。仕事で一緒には居られても公衆の面前でこうやってお互いを感じる事は憚られる。安心できる体温がすぐ傍にあるためかついついまぶたが重くなる。ここ最近の徹夜も祟って非常に眠い。そんなキラの様子を悟ったラクスはゆったりとした歌を口ずさむ。キラがゆっくり眠れるようにと。
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- キラが覚醒した頃には既に夕暮れ。結局今日はどこにもいけずに終る。
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- だがイヴの夜はまだ始まったばかり。今日ばかりはこのプラントにも雪が降る。
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- 人口の雪。
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- 唯の氷のようなもの。
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- 自然の雪を一度でも体験してしまえばこのプラントの偽物の雪はなんとも味気ない事か。
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- だがあの自然現象をどうにか子供達に見せたいとこのイヴの夜だけは雪が降る。
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- 「結局今回もどこにもいけませんでしたわね。でも、今日はこのプラントにも雪が降りますわ。楽しみですわね」
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- ラクスはうれしそうに夜空を見上げる。夜空といっても人口の夜空だが。
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- キラはそんなラクスに寄り添うと不思議な言葉をラクスにかける。
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- 「今日は去年までのようなカキ氷みたいな雪じゃなくて華が降るよ。雪の華が」
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- ラクスにはキラの言った言葉の意味が分からない。確かに去年までの雪は一時的に現象だけを真似た雪。カキ氷と表現したキラの言う通り小さな氷の結晶だ。自然に降る雪には程遠く、このプラントではそこまでリアリティを求めていない。ただ雪が降るという現象そのものを真似ているだけだ。それをキラは『華が降る』と表現する。いったいどう云う事だろう。
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- 「スカンジナビアで見た雪はさ、自然の雄大さを見せ付けられた気がしたんだ。月で見ていた雪がどれだけちっぽけな物だったのか本物の雪を見て思った。静かに淡く降る時もあれば総てを飲み込むような激しい時もある。でもそれは総て自然の成り行き。偉大さを思い知った。自然って不思議だよね。どんなにその仕組みが分かっていても色々な感情が沸き起こってくる。だから少しでもそんな雪を君に見せたくて無理やり頼み込んで作らせて貰ったんだ。今日の雪は自然の雪と同じ雪の結晶、Snowdropなんだよ。これをある島国では『六花(りっか)』って言うんだって。雪の結晶って同じ形のものってないでしょ?皆違う形。でも全部六角形。その雪の結晶の六角形を六つの花びらに見立てて雪の華、『六花』。これが僕からのクリスマスプレゼント」
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- 「キ……ラ。ステキですわ。ありがとうございます。六花……綺麗な響きですわ」
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- ラクスはキラに抱きつきお礼を言うと、空からヒラヒラと舞い落ちてくる雪を手に取る。手に落ちた雪は冷たく、すぐに解けてしまい跡形もなくなってしまうがキラが無理をしてまで自分に見せたがっていた雪だと思うとその冷たさとすぐになくなってしまうはかなさに寂しさを覚える。そんなラクスの首元に雪の結晶とアクアマリンをあしらったペンダントをつける。
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- 「雪は消えちゃうけどこれなら残るでしょ?」
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- 突然ヒヤリとした感触に驚くがキラの言う通り消えない雪の結晶がそこにあった。その結晶は消えない雪の華。キラの思いを表現したもの。その意味をラクスがどう受け止めるかはラクス次第。
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- 「今日のキラは気障ですわね。でも、そんなキラも好きですわ」
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- その言葉を吐くと自然に重なる唇。寒い夜は互いに寄り添い暮れて行く。久しぶりの休日はとんでもないアクシデントで明けて殆どの時間をつぶしてしまったがこんな日もあっても良いかもしれない。互いの温もりの大切さを知る良い機会になった。
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- 雪の華の様に淡く儚い雪のような想いもこの激情にも解けずに残る輝石の雪の華も良い。解けずに残る華の様に唯互いのぬくもりに酔いしれて行くこの日がずっと続く事を願う。
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- ”作者様”<あとがき>
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- こんな作品ですが欲しい方はお持帰り下さい。
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- 最後がちょっと不発っぽいですがその後のご意見や感想、誤字脱字の指摘などなどありましたらBBSの方に書き込んでくださいませ。
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- う〜ん………。最後が気に入らない。纏まらない。サイトに正式に掲載するとすれば書き直すかもしれません。
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水沢様よりクリスマス期間限定小説をいただきました。
喧嘩をした時の周囲をハラハラさせる様子が、仲直りした時に「良かった!」と安堵できる、
心温まるお話です。
黒いラクス様がお得意の水沢様ですが、清純な感じの彼女も素敵です。
素敵なクリスマス小説をありがとうございました。
水沢聖様の『Serenade』はこちら →
Serenade
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