- とある邸宅で、2人の子供は朝からそわそわとした気持ちでいた。
- 1人は艶やかな質感で赤みがかった茶色の髪をした男の子。
- もう一人は緩やかにウェーブのかかったピンクの髪を肩の辺りで揺らしている女の子。
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- 今日は良い子にしていればサンタクロースさんが来てくれると両親に言われて、サンタクロースが何かと問えば、子供達にクリスマスプレゼントをくれる素敵なおじさんだと聞かされて、パチパチと手を叩いて喜びを表現した。
- さらには夕方には両親も帰ってきて、一緒にパーティをすると約束してくれた。
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- 忙しい両親だから、普段あまり家に居ることがない。
- そのことを寂しいと思う気持ちはある。
- けれども幼いなりに両親が大変な仕事をしていることも理解しているし、そのことを誇りに思っているので、我侭も言わない。
- それに時間がある時はいつも優しい笑顔で話を聞かせてくれて、或いは歌を聴かせてくれる両親のことは大好きなのだ。
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- だからそんな両親と一緒に居られると分かると、それを期待せずに待てという方が無理だ。
- 今も早く夕方にならないかな、と時計と睨めっこをしている。
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- その子供とは、キラとラクスの間に産まれた、”光”という名前を持つ奇跡の双子だ。
- 双子の名前は女の子がヒカリ=ヤマト、男の子がコウ=ヤマト。
- 年は3歳で、季節は冬。
- 今日は双子が物心がついて初めて迎えるクリスマスだ。
- 2人ともしっかりと両親の愛情を受けて、すくすくと育っていた。
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「Xmas party」
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- 今日はキラもラクスも朝から大忙しだ。
- 彼らは双子のことをとても大事に思っているし、できる限り可愛がってはいる。
- それでも普段、仕事の都合で子供達となかなか一緒にいてあげることができないから、せめて今日くらいはと、仕事は昼過ぎ以降は入らないように調整してある。
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- だがそれまでに終わらせなければならない仕事はいつもと同じく山の様にある訳で、それを設定した時間内に終わらせるべく、一生懸命仕事を片付けていく。
- 子供との約束を守るために。
- そのあまりにもすさまじい仕事振りに、他の議員達や周囲の事務官達は唖然とし、だが理由を聞くと納得して微笑ましく思う。
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- 周囲の人達ににとっても、プラント全市民にとっても彼らの子供である双子は愛すべき子供達であり、彼らの成長ぶりは我が事のように一喜一憂するできごとなのだ。
- 双子のためにと頑張るキラとラクスの姿にむしろ応援したくなるくらいだ。
- だから皆が気を使い、今日は2人の邪魔をしないようにできる限りの配慮をする。
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- その状況で仕事もスムーズに進めることができたキラとラクスは、予定通りの時間に仕事を終わらせると、挨拶もそこそこに議員会館を後にする。
- そして2人で双子へのプレゼントを選ぶために、ショッピングモールへと立ち寄る。
- 聞き分けが良くてあまりあれこれが欲しいと言わない子供達だからプレゼント選びに苦労するが、できる限り喜びそうなものを買ってあげたい。
- 二人はああでもないこうでもないと品定めをしていく。
- しかしいつしかキラとラクスの方が、子供へのプレゼント選びを楽しむ事態になっていた。
- 時間が経つのも忘れて色々見て回ったため、選び出すことができた時には既に帰宅の約束をした時間が近づいていた。
- キラとラクスは手にした荷物に満足そうに微笑みながらも、慌しく帰路を急いだ。
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- 夕方、何とか時間までに帰る事ができたキラとラクスは、双子の熱烈な出迎えを受けて顔を綻ばせる。
- 双子が今日はいつもよりはしゃいだ感じがするのは気のせいではないはずだ。
- 飛び跳ねながら、いつになく強い力で両親の手を引っ張る。
- キラとラクスはそんな双子をやんわりと親の顔で宥めながら、リビングへと移動する。
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- そこは双子も手伝いながら飾ったクリスマスツリーがそびえ立っていた。
- 使用人達にたくさんお手伝いしていただきました、とにこやかに言われて双子も得意げな笑顔を浮かべる。
- 2人はそれを一瞬驚いた表情で見上げてから、ちゃんとお手伝いができてお利口だったね、と微笑んで頭を撫でる。
- それを受けて双子がまた嬉しそうに大きく頷く姿を、使用人達も微笑ましく見つめていた。
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- それからキラとラクスが着替えを済ませると、家中の皆集まってクリスマスパーティが始まる。
- 家族と使用人達だけというささやかなパーティだが、それでも初めての経験に、双子の目には全てがキラキラと輝いて見えた。
- そんな中で豪華な料理や甘いクリスマスケーキを頬張って、皆で陽気な歌を歌って、楽しい時間はあっと言う間に過ぎていく。
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- 気が付けば夜も深い時間になり、子供は寝る時間だとパーティはお開きになる。
- そのことに双子は残念そうに抗議の声を上げるが、サンタクロースは寝ている間に来る、寝ていない子のところには来ないと話をされ、来てくれないことにはプレゼントを貰えないから、双子は大人しく寝室へと入る。
- ワクワクを胸に抱いたままですぐには寝付かなかったが、灯りの落ちた部屋の中で布団にくるまっていると、だんだん眠気に襲われてくる。
- いつしか双子はスヤスヤと夢の中にいた。
- 楽しい夢でも見ているのか、その寝顔はとても嬉しそうだ。
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- キラとラクスは双子が完全に寝入ったのを確認すると、そっと寝室を後にしてこっそりと隠してあった荷物を取り出す。
- それは帰宅前に買った、双子へのプレゼントだ。
- 明日の朝のことを想像すると思わず笑みが零れてしまう。
- それを必死に堪えながら、手にしたプレゼントを双子の枕元に置いた。
- そして2人はメリークリスマスと小さくささやいて、静かに寝室を後にした。
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- 翌朝、双子が枕元に置いてあったプレゼントに歓声を上げて、嬉しそうに両親に報告しに来たのは、言うまでもなかった。
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