- 月面都市、『アリストテレス』。
- CE92に建設が始まった都市で、どの国家にも属さない独立自治体が治めている。
- この街は今も尚発展中で、大きな建物を中心に据え、その周囲を取り囲むように整然と家屋が立ち並ぶ。
- その街中にある通りは活気に満ち溢れていた。
- 都市としては誕生してからまだ日は浅いが、新たな地球圏の中心都市として今も移住者が絶えない。
- ひとえにここに住まう、独立自治体を支えている人物の影響でもあるのだが、とにかく毎日住人が増えている状況で、様々な産業や流通ルートを抑える企業もこの都市に目を付けて、今地球圏内で最も成長著しい都市でもある。
-
- そこはまるで、これから何かの祭りが行われるかのように至る所で人が忙しなく動き回り、荷物も所狭しと通りを行き交う。
- しかし実際には特別な日などでは無い。
- この活気は普段の日常と何ら変わりない光景なのだ。
-
- その人波を縫うように進む人影が幾つかある。
- 小走りで進むそれらは素早く、しかし人にぶつからないようにうまく避けながら、混み合った通路の端まであっと言う間に到達する。
- そこは少し開けた広場のようなところだ。
- そこまで来たところで広場をぐるりと取り囲む様に立ち並ぶ店舗の影になっているところへ素早く身を引く。
- そこに次々と男達が集まり、結局4人がその場所で小さな円を囲むように顔を突き合せている。
- いかにも怪しそうな集団だが、人々はこの混雑の中を進むのに一苦労で彼らに気を取られている余裕は無い。
- 集まった男達もそんな群集には目もくれず、その中のリーダーらしい男、ヒューリック=ネイサーが小声で囁く。
-
- 「確認する。作戦決行は一四○○だ。タイミングを間違えるなよ」
-
- 言いながら腕時計の時刻を合わせる。
- 他の4人の男も倣う様に腕時計に手をやり、4人の腕時計は寸分違わず同じ時刻を刻み始める。
- それを確認した男達は無言のまま頷き合うと、またバラバラと人込みの中へと紛れていった。
-
-
-
-
PHASE-01 「戦火の狼煙」
-
-
-
- ここ月面のマンティウスクレータに新たに建造された都市が『アリストテレス』と言う。
- その中央に位置する宮殿のような建物が、地球圏平和維持機構、通称<ESPEM>(エスピーム)の事務所だ。
- 地球圏の平和を維持すること、それだけを目的として中立として各国間の対話を取り持ったりするための機関である。
- これは前プラント最高評議会議長であったラクス=ヤマトが長らく提唱してきたものであるが、CE92にようやく各国にも了承され、中立を示すためにここ月面に新たな都市と共にCE93に建設された。
- そしてその初代事務総長として提唱者でもあるラクスが就任し、戦争の無い平和な世界への道を模索しながら地球圏で一丸となるべく取り組んでいるのだ。
-
- その旗振り役を担うラクスは、鮮やかなピンクの髪を揺らして毅然と事務所の廊下を歩いていた。
- <ESPEM>の事務総長として、色々とやるべきことはたくさんあり、毎日が机上の戦争のようだ。
- しかしそれは難しくとも充実した日々であり、また自らが望んだ道でもあるからラクスは弱音一つ吐かず精力的に活動を続けている。
-
- そんな彼女の傍らに並んで歩くのは最愛の夫であり、有能な秘書官でもあるキラ=ヤマト。
- 彼はいつも影に日向に妻を支えている。
- ラクスが頑張れるのにはそんな彼の存在も大きい。
- 束の間の休息時など、彼に名を呼ばれその温もりに触れることは心がとても満たされた。
- それはキラも同じで結婚してからもう20年も過ぎようと言うのに、未だに新婚さながらの雰囲気を2人揃って醸し出しているのだ。
-
- さらに言えば、この都市に移住を希望する者が後を絶たないのは彼らがここにいるからでもある。
- かつて地球圏の争いを幾度も治めた英雄たる彼らは、コーディネータ、ナチュラル問わず、今でも絶大な人気を誇っていた。
- またどちらももう40という年齢なのだが、その風貌からは一切そのような感じを受けない。
- 20代と言っても充分通用するだろう若々しい容姿を保っている。
- 2人の仲の良さと正に美男美女の容姿が人気を高めている一因でもある。
-
- そんな2人は何かの書類に目を落としながら真剣な表情で何事か言葉を交わして歩いている。
-
- 「父様、母様」
-
- そこに遠くから元気よく2人を名前では無く、敬称で呼ぶ声が聞こえる。
- その声がした方を振り返れば、2人の愛娘であるミライ=ヤマトが笑顔で駆け寄ってくるのが確認できる。
- ミライはキラとそっくりな艶やかな鷲色の髪と紫紺の瞳を持っている。
- 髪は肩の下辺りでさらさらと揺らし、前髪には月をイメージした髪飾りをつけているが、それがな
- ければ遠目にはキラと見間違えることだろう。
- またその声は周囲がラクスが話をしていると聞き間違えるほどラクスにそっくりだ。
-
- その傍らには青と紫のハロが飛び跳ねて、暢気な声を発しながらもミライに遅れまいと必死についていく。
- それらはミライが6歳の誕生日に欲しいとせがんだ物だ。
- あれからもう10年も経ったというのに、彼女はそれをとても大事にしていた。
- プラントの権威ある者として忙しい日々を送っていたキラとラクスは、子供のことを大切に思っていてもなかなか一緒に居てあげることはできなかった。
- そんな両親をミライは子供なりに誇りに思ってはいるが、やはり寂しい気持ちは隠しきれない。
- そこで両親、姉兄と同じ瞳の色を持ったこの2体のハロと一緒に居ることで、その寂しさを紛らわせていた。
- それ以来、いつもどこに行く時も一緒に行動する、大切な友達でもある。
- いや、たくさんの友人達と分かれたきた今だからこそ、なのかも知れない。
-
- ミライは元々両親、姉兄と一緒にプラントで暮らしていたが、キラとラクスが月に移住することになった時、まだ幼年学校の卒業前という幼さもあり、2人と一緒にこの月へとやって来た。
- 当然周囲の人達もミライがキラとラクスの娘であるということは知っており、明るい笑顔を振りまくその姿に誰もが頬を緩める。
- 事務官等とも顔見知りで、ほとんど顔パス状態で出入りをしている。
- 何より、彼女はプラントでも地球圏の各国家でも、その顔も名も知られた存在だ。
- またその潜在能力の高さからも、既に両親の仕事を理解し端的にだが手伝いを始めている。
- それもあって、ミライはESPEMができた時から自由に出入りしているし、今もそれを咎めようと言う者も居ない。
- 誰もがミライの笑顔が好きだから。
- 彼女は皆に愛されていた。
-
- それは両親も一緒だ。
- 娘の姿を確認した2人は表情を崩して立ち止まり、笑顔で飛びついてくる娘を受け止めた。
-
*
-
- <ESPEM>の事務所前では幾人もの人が慌しく駆け回っている。
- そこは広場のような空間が広がっているのだが今からここで、<ESPEM>に新しく配備される新造戦艦の進水式、並びにその部隊の任命式が行われるのだ。
- それらの準備に皆おおわらわなのだ。
-
- その一角で一つのチームを指揮する男、ザイオン=バークスはこの任命式で新しい部隊の隊長に就任することになっている。
- 隊長というにはまだあどけなさの残る青年だが、有能な指揮官ということでザフト軍から派遣されている。
- 内示ということだが、同じ部隊に配属される兵士達には既に伝えられており、彼の指示で周囲もテキパキと作業をこなしていく。
-
- 「MSの運搬はまだか?」
-
- ザイオンはお披露目されることになっている、新型MSの運搬準備の進捗具合を確認するように隣にいた兵士に告げる。
- その指示を受けたエデュー=フィレンチェは敬礼をすると、MSデッキの方へと駆けて行く。
- 彼もまた新型MSのパイロットとしてザフト軍から派遣された、将来を嘱望される若い青年である。
-
- これらのことから分かるように、<ESPEM>は軍隊を所持している。
- 但し、そのほとんどを各国からの出向という形の派遣による人員で構成し、MS等の戦力も技術提供を元に整備が行われている。
- 一つは<ESPEM>にもそれなりの力は必要であるが万一の場合に地球圏の独裁を許さないため、ある意味で<ESPEM>を監視するため。
- もう一つは各国から人員を提供することで、お互いの利害関係を一致させ争いを抑圧する意味も込められている。
-
- 話は戻って、ザイオンはエデューの後姿を見つめながら、1人になったことで彼にしては珍しく緊張に溜息を零す。
- 最新鋭の戦艦とMSを扱う部隊の隊長という大役を任され誇らしく思う気持ちと、自分で本当に務まるのかという気持ちが入り混じる。
- それは当然かも知れない。
- 何故なら彼はまだ20歳と若く、これまで部隊を率いた経験も無い。
- そのことからこれは異例の抜擢と言えるだろう。
- しかし彼自身非常に優秀なコーディネータで、その能力からすれば妥当なことは他人が口を挟む余地は無い。
- また幼い頃からザイオンのことを良く知るキラとラクスにとっては、彼以上に信頼のおける人物はそうはいない。
- ザイオン自身もラクスやキラのことは憧れと共に尊敬しており、彼らに指名されたことは大きな誇りでもあった。
- 指名を受けた時のことを思い出したザイオンは、少し照れくさくなると同時に胸が熱くなる。
- その気持ちを抑えるように一段高くなっている壇上に視線を送る。
-
- その視線の先ではキラとラクスも任命式の準備に追われていた。
- ラクスはこの壇上で挨拶をすることになっており、キラも警備体制の確認や、式典の段取りの確認など準備に余念がない。
- 演説の言葉を考えているラクスを横目に、事務官とSPにあれこれと指示を送る。
-
- そこに1人の人物がキラに近づく。
- その気配に気がついたキラが振り返り、その人物を確認すると表情を崩して挨拶する。
-
- 「やあ、久し振りだね」
- 「はい、お久し振りです」
-
- キラに近づいた人物、シン=アスカも笑顔で返事をする。
- キラとシンはこの20年、思いを同じくして一緒に戦ってきた大切な仲間だ。
- 皆まで言わずとも互いの言いたいことが分かる程の。
- 短い挨拶だけ交わすと、後は無言で久方ぶりの再会を抱擁という形で示した。
-
- ところで<ESPEM>の所属ではないシンが何故ここに居るのかと言うと、彼は派遣された部隊の見届け人としてここに来ていた。
- オーブからの出向者は、元々シンの部下でもあったのだ。
-
- シンはキラと近況を報告し合うと、ぐるりと式典の準備の様子を見渡して、それから本日お披露目される予定、とは言ってもその姿は既に大きく晒されている新造戦艦を認めると、僅かに表情を曇らせる。
- キラはその気配に気付き、シンの横に並んで同じように戦艦を見つめる。
- それからシンの思いを代弁するように、言葉を紡ぐ。
-
- 「本当は、こんなものが必要無いのが一番良いんだろうけどね」
-
- 力はただ力でしかない。
- それの使い方を誤れば、そこには累々と悲劇だけが積み上げられてしまう。
- キラはラクスもそう思っていることを知っている。
- この部隊配備の決断で一番胸を痛めたのは彼女なのだ。
- だが力を持たず、力で迫る相手にただ無抵抗に殺されることもまた正しい道ではないと彼らは知っている。
- 本来人はそうした相手と戦い、勝ち残ることで未来を築いてきたのだから。
-
- 「そうですね」
-
- シンも静かに同意して、2人は複雑な表情でしばしその光景を眺めていた。
-
*
-
- ヒューはハンガーの影で進水式の準備に走り回る兵士達の様子を見ながら、監視体制の甘さに苦笑を落とす。
- 作業をしている者はともかくとしても、それを監視する数人の兵士も欠伸をしたり、雑談したりしているのでは監視の意味が無い。
- それらを確認しながら、ヒューは監視を潜り抜けるルートを頭の中で弾き出す。
- その横ではドラウ=ボーディンも、ニタニタと厭味と侮蔑を込めた表情を浮かべる。
-
- 「所詮、平和ボケした奴らの軍なんてこんなもんだな」
-
- ヨウナ=チャンも興味なさそうでありながら、こりゃ楽勝だねと嘲る。
- ドラウとヨウナの囁きにヒューも内心では賛成していた。
- だがそれは目の前でだらけている兵士に向けてのみだ。
-
- そんな兵士達の向こうに見えるのは、横たわっているグレーのMS。
- <ESPEM>が開発した最新鋭の機体だ。
- 本当に平和ボケした組織であれば、こんなものは造ることはないだろう。
- <ESPEM>のトップであるラクスはあれでいてなかなかしたたかな人物だ、と一定の評価はしていた。
- しかしヒューにとって、ラクスの掲げる『戦争の無い平和な世界』は綺麗事にしか聞こえない。
- 彼は幼い頃からずっと戦場に居て、たくさんの仲間の死を目の当たりにしてきたから。
- そのことを少し思い出し唇を噛み締めるが、小さく頭を振って幻影を追い払い、これからの作戦のことに集中する。
-
- 「時間だ。爆発音が鳴ったら真っ直ぐMSまで向かうぞ」
-
- 言いながら手にしたマシンガンの安全装置を外し、鋭い目つきになって引金に指を添える。
- ドラウとヨウナもパッと表情を引き締めると同じようにマシンガンを構えて頷く。
- 彼ら3人はここにある新型MS3機を強奪するために潜入した工作員だった。
- 他の仲間と共に、作戦決行の時を今か今かと待っていた。
-
- 次の瞬間、大きな爆発音が鳴り響いた。
- 彼らと他の仲間がひそかにセットした時限爆弾が爆発したのだ。
- その場で作業していた誰もが音と地響きに驚き、その手を止めて戸惑いの表情で周囲を見渡したり、どこかに連絡を取ったりする。
- 彼らは完全に浮き足立っていた。
-
- ヒューはその隙を突いて物陰から飛び出し、素早く腰に構えたマシンガンを唸らせる。
- その弾丸が戸惑う兵士達を捉え次々地面に伏していく。
- ドラウとヨウナもその後に続き、狂喜にも似た雄叫びを上げながら銃の引金を引く。
-
- しかし当然のことながら、彼らの攻撃を逃れた者は相手も銃で応戦してくる。
- その弾丸の雨の中を持ち前の運動能力でかわしながら、それぞれ目的のMS目掛けて突っ走る。
- しかしその内の一つはドラウの体を捉えた。
- 銃弾は腹を貫通し、その熱い痛みに思わず呻き声を上げて転倒する。
- それでも口から一筋の血を流しながら苦悶の表情を浮かべた顔を上げ、何かを掴もうとするかのように必死に手を伸ばす。
- だがそこにさらなる銃弾が浴びせられ、その手は結局何も掴むこともできずに力なく地面に落ちる。
- 地面に横たわるドラウの体は、流れ出る血の中に沈んでいくように、ピクリとも動かなくなった。
-
- それをちらりと一瞥したヒューは歯噛みしながらも足を止めることなく走り続け、ついにMSの元まで辿り着いた。
- そしてコックピット付近で応戦している兵士達に向かって飛び上がると、1人に肩から体当たりをして下へ落とす。
- 続けて後ろから振り向きざまに2人の顔面に横から蹴りを入れて、MSの上から落とすと、コックピットへ身を躍らせ素早くハッチを閉じ、コンソールのスイッチを入れる。
- コンソールモニタに機体のスペックが次々と表示され、ヒューはそれを読み解きながら自爆装置の解除、さらにはOSの解析と手際良く作業を進める。
- それらの作業が全て完了すると、フットペダルを踏みながらゆっくり操縦桿を引いてMSを立ち上がらせる。
-
- 「EXGF-XX201T<フレア>、ね」
-
- 自らが操縦している機体の名称を無感動に読み上げてから、ヒューはモニタに映るいくつも倒れた死体とあちこちから上がる火の手を複雑な思いで見つめた。
-
*
-
- その頃ミライは両親に一言告げてから、1人物珍しそうに横たわるMSを見上げる。
- 進水式の準備やらで忙しい両親を邪魔しては悪いと、ラクスに入れてもらった式典会場内をウロウロしていた。
- そこで見つけた真っさらなMS。
- 目の前にあるそれはこれから行われようとしている進水式、新部隊の編成式でお披露目され、その新部隊へと配備される最新鋭の機体だ。
- それを見上げながらミライの表情は少し曇る。
-
- 平和を望むのにどうしてこんなものが必要なのでしょうか。
-
- ミライはずっと疑問に思っていた。
- 学校の授業だけでなく両親からも色々と教わり、戦争というのがいかに愚かで悲しい行為かということは分かっているつもりだ。
- それなのに守るためとは言え、これだけの強力な兵器、力を持つということが納得できない。
- 両親のことは大好きだし心から尊敬もしている。
- 彼らの娘でいられることは誇らしくさえある。
- でもだからなのかも知れない。
- そのことに少しだけ両親に反発を覚えてしまうのだ。
- だが彼女は戦争がもたらす悲劇を知識としてしか知らない。
- 当然戦争の悲惨さを体験したこともない。
- それが故の理想論としての平和が彼女の中には根付いていた。
-
- その時、突然大きな爆発音が鳴り響いた。
- ミライはビクッと肩を竦ませて目を瞑ってしゃがみ込む。
- 音は少しの余韻だけを残してすぐ消えたが、何があったのかと辺りを見渡すと、少し離れた位置の壁が崩れて、作業員達がその瓦礫の下敷きになったのが見え、息を呑む。
- 今度はパラパラと銃の発砲が轟き、先ほどの光景とは反対の方角から銃を構えた男が手元のマシンガンを唸らせてらこちらに近づいてくるが見える。
-
- 瓦礫に埋まりながらも男が何事か叫んでいるのが聞こえるが、立ち向かう兵士達は凶弾に次々と倒れていく。
- それをMSの影に身を隠して覗いていたミライだが、あることに気がついた。
- 迫ってくる男は明らかにこの機体を狙っている。
- 真っ直ぐ一直線にこちらに向かってくるのだ。
-
- 恐怖よりも先に、相手にこれを渡してはいけないという気持ちが先に立った。
- 咄嗟にミライは目の前の機体の上へ飛び上がると、コックピットの中へとその身を滑り込ませる。
- そしてそのままシートに座りハッチを閉じる。
- 2体のハロもミライを追いかけて、彼女の膝の上にポンと納まっている。
-
- 「この機体のスペックは?」
-
- 焦った様子で言いながら、ミライは備えつけのキーボードを目の前に持ってくると、すごい速さで打ち込みむ。
- その操作に合わせてコンソールにはMSの設計データが表示され、ミライはそれを必死に読み解いていく。
- その中の赤い頭文字、『G.U.N.D.A.M』の文字列に一瞬気を引かれたが、すぐにそれらに気を取られている場合ではないと読み飛ばし、その後に出てきた操縦方法のヘルプメッセージを読み込んで、ようやくこの機体の基本的な構造を理解する。
- その作業が終わってモニタをONにすると、迫ってきた男が今まさにこのMSのハッチに取り付こうとしていた。
- それを見たミライは焦って操縦桿を握ると、それを力いっぱい引き絞る。
- するとMSの目に光が宿り、コックピットにも低い稼動音が鳴り響く。
- それに合わせてMSはその上半身を地面から引き剥がすように起こす。
- ハッチの上に銃を構えて乗った男もそれに気が付き、舌打ちして振り落とされる前に地面へと飛び降りる。
-
- その時また大きな爆発音が背後で響き渡る。
- 同時に格納庫から火の手が上がり、辺りを赤く照らし出す。
- グレーのMS、<フリーズ>はゆっくりと立ち上がり、その炎の揺らめきの中でその存在感を知らしめた。
-
-
― Starstateトップへ ― |
― NEXT ―