- 「後方より接近する艦影、例の新造戦艦です」
-
- ESPEM強襲を行った部隊の戦艦<セントルーズ>内、レーダーを監視していたオペレータより報告が入る。
- 強襲に成功した安堵と緊張の緩みから一転、ブリッジ要員達の間にはざわめきと緊張が走る。
- だがバンは眉一つ動かさずにポツリと呟く。
-
- 「やはり追ってきたか」
-
- あれだけの戦闘をした後だけに、こちらの消耗も大きく、追撃されなければされないで良い。
- だが、バンの頭には相手が追いかけてくることも計算に入っている。
- むしろその方が確率が高いと踏んでいた。
- 当然その場合の対応策も既に考察済みで、迷うことなく指示を飛ばす。
-
- 「パイロットは搭乗機にて待機。10分後に出撃する」
-
- そう言いながら、バンは奪還し損ねた機体もここで頂こうという腹づもりでいた。
- 先ほどの強襲で相手方にも相当なダメージがあり、追っ手の中に戦闘可能な機体の数は少ないと計算してのことだ。
- そして実際にその読みは正しかった。
-
- バンは自分のストライクイージスで何機のMSを何分で撃ち落せたか、常にきちんと把握していた。
- その上で自分の戦闘力と艦にあるMSの数、パイロットの特性を理解し、自軍の戦力というものが如何程なのか彼の頭には入っている。
- そして相手がどの程度の規模であれば、どのくらいの時間で戦闘を完了できるかも瞬時に判断がついていた。
- 彼は自分がとても優秀だということを自覚している。
- そして自分の能力というものを、正確にかつ客観的に評価できていた。
-
- 「艦はこのまま速度を維持、奴らに追いつかせるな」
-
- バンは指揮官席からゆっくりと腰を上げると、ナトーにそれだけ言い置いてドックへと向かう。
-
- 自分のMSに向かって無重力空間を流れながらドック内を見渡せば、強襲した時より2機ドックに立っているMSの数が多いが、それでもまだ2機分の空きがある。
- 予定ではここも埋まっていたはずなのだ。
- その空スペースに向かってバンは舌打ちする。
- 自分自身、味方と相手の力量を見誤ったことへの叱責と、無能な部下への失望が滲み出ていた。
- ふと前を見れば、ヨウナが宛がわれたマラサイへと乗り込むところだが目に入る。
- バンは自分の機体に乗る前にスルスルとヨウナに近づくと、低く冷たい声で耳打ちする。
-
- 「お前の機体を取りそこなった分は、きっちりと返せよ」
-
- 暗に今度しくじればどうなるか、と言う脅しを含んでいる。
- エクステンデントというのは、戦闘能力を極限まで引き出すために様々な薬を投与することで、精神が非常に不安定だ。
- それが故に、こちらの言うことを素直に聞かないことも多く扱いが難しい。
- しかしバンはこれらの恐怖心を煽り、戦闘力を増大させるという方法で、確実に彼らをコントロールしていた。
-
- バンの言葉に込められた冷たさに、ヨウナを肩を震わせた。
- バンを恐怖するものと、反発による怒りが入り混じった感情に、ヨウナは表情を見る見る曇らせると分かっていると声を荒げる。
- それを満足そうに小さく頷いて離れていくバンに一瞥をくれると、コックピットのシートにどかりと腰を下ろした。
- そして目を吊り上げて、口を開けたハッチ前方に広がる真っ暗な空間を睨みつける。
- あそこに自分をこんな目に合わせた奴が居る。
- 奴が邪魔しなければ俺はうまくいっていた筈だ等、目前でフリーズのコックピットに座ったミライに責任転嫁し、失敗したのは自分のせいではないと言い聞かせる。
- 完全に逆恨みだが、とにかくこの怒りを誰かにぶつけなければ気がすまなかった。
-
- 「ヨウナ=チャン、マサライ行くぞ!」
-
- その声は怒りに激しく震えていた。
-
-
-
-
PHASE-06 「出撃」
-
-
-
- 迫るMSに向かって移動しながら、ザイオンはこの戦闘をどう切り抜けるか必死に考えていた。
- 素性は分からないが、間違いなく相手はプロだ。
- 一方のこちらは、戦闘経験のある者は少なく、彼らからすれば自分達など赤子の手を捻るくらい容易いことだろう。
- 歴然とした戦力差にも落胆しかかるが、それでも任務である以上やらねばならないし、相手はそんなことを考慮してはくれないだろう。
- 苦虫を噛み潰したような表情をバイザーの下で浮かべながら、先手必勝という思いで先頭に立ち射撃を行った。
- しかしそれらはあっさりかわされ、反撃のビームが放たれてくる。
-
- 「来るぞ、散開!」
-
- ザイオンは唸りながら自分を狙っってきたビームを紙一重でかわす。
- 回避できたことにホッとしたのも束の間、すぐ眼前にはフレアが大口ライフルを構えて迫っていた。
- 僚機となるばずだったフレアと相対して少し違和感を感じるが、戦場で余計なことを考えることは命取りになる。
- 雑念を振り払うと素早くライフルを構え、フレアをターゲットに入れてライフルの引金を引く。
- フレアも回避運動を取りながら反撃し、ビームの残光がモニターを照らし出す。
-
- 部下のMS達も最初の攻撃をかわした後、それぞれ相手を見つけ、あるいは目を付けられたMSと戦闘を始める。
- フレアとライジンはできれば取り戻したい機体だが、今の自分達ではそれは難しい。
- MSはできるだけ傷つけずに、戦闘力だけ奪うという離れ業をやらなければならないからだ。
- ザイオンは苦渋の決断で部下達に命令を飛ばす。
-
- 「フレアとライジンは極力拿捕。それができない場合は破壊を許可する」
-
- 言いながら彼は戦闘空域の状況を見渡す。
-
- フウジンとライジンは既に一騎打ち状態に入っている。
- お互いに他の相手には目もくれず、一目散にそれぞれを目掛けて攻撃を仕掛けた。
- ライジンはサムライソードを勢いよく振り下ろす。
- フウジンはそれを横に移動してかわしながら、ライフルを放つ。
- ライジンも巧みに機体を左右に振ってビームをかわし、フウジンと激しく交錯する。
- 2機は光の尾を螺旋に引きながらどんどんスピードを上げて、他の追随を許さない。
- ジローの目にはもう他の相手は映っていないが、機体の特性から言っても、そちらは彼に頑張ってもらうしかない。
-
- リュウのグロウズは、相手のオリジナルな機体と相対している。
- 相手に押されているが、機体を器用に捻りながら攻撃をかわし続ける。
- 回避行動に苛立った相手が今度はビームクローを出して切り掛かるが、それをビームサーベルで受け止めると、次の瞬間にはいなして相手の体勢を崩し強烈な蹴りをお見舞いする。
- 先ほどの戦闘を経験して、だいぶ硬さが取れたようだ。
- 元々高い潜在能力、適応力を見せていたリュウだ。
- その力が発揮できれば相当な戦力として期待でき、それが発揮されつつある。
- こちらは1対1で何とかなりそうだ。
-
- もう1機の赤い機体は、他のグロウズ達が周囲を取り囲むように相対している。
- 連携戦術がきちんと取れれば、数的にも優位に戦うことができる。
- ザイオンは僅かだが希望を見出していた。
-
- しかし彼はすぐに、ストライクによく似た機体の姿が見当たらないことに気がついた。
- 報告で受けたMSの数とも合わない。
- その機体を探しながら、先ほどの戦闘を思い返す。
- 映像でしか見たことは無いが、あの攻撃はまるであの伝説のフリーダムを彷彿とさせた。
- あんなすごい攻撃は今まで見たことが無かった。
- おそらくあれがエースだ、と予想を立てる。
- 自分も勝てる自信は無いが、あれの相手を自分がしなければならないという使命感を抱く。
-
- 無意識のうちにストライクイージスの機影を探すことに気を取られすぎていた。
- 不意に危険を知らせるアラームがコックピットに鳴り響き、目の前に迫るフレアに意識を戻す。
- 慌てて操縦桿を目一杯引いて、放たれたビームを機体を捻ってかわす。
- 機体に無理な負荷がかかり、コックピット内にも金属の軋む嫌な音が響くが、ここで命を落とすよりはずっとマシだ。
- それにフレアは取り戻さなくてはならない機体だ。
- 一時彼はストライクイージスのことを忘れて、フレアとの戦闘に集中した。
-
- 突然あらぬ方向で爆発が起こった。
- フレア相手に集中していたのが僅かな時間の間だったのか、それともかなりの時間だったのか既に分からなくなっていたが、とにかくそこでフレア1機に集中しすぎたことに気付いてザイオンは舌打ちする。
- そして何事かと爆発で明るくなったところを拡大すると、併走してきた部隊の戦艦が真っ赤に染まり、次の瞬間にはその存在が眼前からもデータからも消失した。
- しばし呆然としたザイオンだが、そのすぐ近くにストライクイージスを発見する。
-
- バンは確実に相手の戦力を削いでいく戦略を取ったのだ。
- 襲われた艦は援護を求める間もなく、クルー諸共宇宙の藻屑となってしまった。
-
- 「くそーっ!!」
-
- 目の前に起こった惨劇に、ザイオンは怒りの咆哮を上げながらフレアに牽制のライフルを数発放つと、艦を沈めたストライクイージス目掛けて加速した。
-
*
-
- ドックへついたミライは宇宙服に身を包んでいた。
- ドック内はMS発進ハッチを開いているため、宇宙空間に居るのとほとんど同じ状況にある。
- 宇宙服を着ていないと呼吸もままならないし、太陽からの放射線をまともに浴びてしまう。
- そのことをきちんと理解しているし、宇宙服を着たくないと思っているわけでもない。
- だがミライはどうにも着心地に馴染めない。
- 無重力空間を体験するのは初めてではないが、こんな宇宙服を着たのは初めてだ。
- 今まではVIP待遇の専用ノーマルスーツを着用していたためだ。
- サイズが大き目ということもあって、着心地に関しては最悪だ。
- もともとミライがこの艦に乗ることは想定されておらず、それに関しては我慢するしかないと、少しごわごわする感じに顔を顰めながら、整備クルー達の作業の様子を目の当たりにする。
-
- 戦闘中は彼らの仕事は目立たないが、その内容はとても重要だ。
- MSの修理や補給に始まり、艦の整備や備品、設備に関する管理等、艦内の機器に関しては彼らが全て面倒を見ている。
- 彼らの働きがなければ戦艦は走ることもできないし、MSもライフル一つ満足に撃てない。
- まさに縁の下の力持ち、と言うわけだ。
- そのことを彼ら自身は常に誇りを持って、作業に取り組んでいる。
-
- そんな作業員達の間を縫うように、フリーズの足元で作業しているブレインの元へ近づく。
- ブレインはフリーズのソフトの書き換え準備をしながら、作業員へ他のMSの修理や補給の指示を行っていた。
- ミライに気付いたブレインは、残り作業の指示を部下達に手早く説明すると手招きして呼び寄せる。
-
- 「お手数をお掛けしてすいません。ですが時間があまり無いものですから」
-
- ブレインは慇懃にミライに説明する。
- それなりの敬意は払っているのだが、仮にもMSのOS、ソフトのメンテナンスを専門としているプロとしてのプライドがある。
- にも関わらず、ミライの作ったプログラムを解析しきれないのだ。
- その表情には悔しさが僅かに滲んでいる。
-
- それには気付かないまま、ミライは促されてコックピットへと座る。
- そして設計書を手渡されて、その仕様の説明を受ける。
- それを聞きながら、ミライは瞬時にその仕様書の問題点を理解する。
- 思ったとおり、無駄なフローや非効率なロジックがたくさんあるのだ。
- やはり戻すことに強い抵抗感を覚える。
-
- その時、戦況を知らせる連絡がコックピットや各作業場の通信機に届く。
- 作業員も息を飲んでその戦況に耳を傾ける。
- だが聞こえてくる言葉に、誰もが落胆の色を隠しきれない。
- こちらはMSの撃墜が次々とカウントされ、部隊の艦も1隻落とされている。
- だが相手のMSはまだ1機も落とせていない。
- 状況は圧倒的な劣勢だ。
- 俄かに作業員達の動きが慌しくなる。
- 目の前で説明していたブレインも、ミライから目を逸らして次の指示を怒鳴っている。
-
- その様子を見つめながら、ミライは1人考えていた。
- 戦争をすることは正しいことだとは今でも思っていない。
- しかし両親が言っていた、力も必要だということが今は理解出来る。
- 今この状況では、確かに力無くば思いを遂げることは叶わないのだ。
- あまり昔のことを話したがらない人達なので直接聞いたことはないのだが、また普段ミライの目から見ている両親のイメージとは余りにもかけ離れているため俄かには信じられなかったが、人づてに聞いて少しは知っている。
- かつて彼らも戦場を駆け抜け、その圧倒的な力で味方を勝利に導いた英雄だと言うことを。
- 争いを好まない両親が、何故そんな矛盾した行動を取ったのか。
- 初めて聞いたときは理解できなかったし幻滅したところもあったのだが、今は少しだけ理解できた気がしていた。
- きっと今の自分と同じように苦悩し、決断したのだと思う。
- 普通の人であれば、英雄と呼ばれることを誇りに思うものだ。
- しかしそれについて問うと、悲しそうな表情で話をはぐらかしていたのがその証拠だ。
- 両親はきっと自らの信念を貫くために、敢えてそのてに武器を取り、望まない戦いに身を投じたのだ。
- そのことに悲しみと痛みを抱えながら。
- そう思うと胸が熱くなった。
- そんな父と母が苦労して作り上げた世界が壊されてしまう。
- それを思うと堪らなく悲しく、そして強襲部隊への怒りが湧いてきた。
- そして今自分ができることが何かを考えた時、ミライの決意はいよいよ固まった。
-
- ブレインが下へ指示を出そうとコックピットから身を乗り出した隙に、ミライは素早くハッチを閉じた。
- そしてそのままキーボードを叩いて起動シークエンスを進め始める。
-
- 「何をするんです」
-
- ブレインが焦った様子でハッチの外側に取り付くが、構わずミライは起動シークエンスを進めてフリーズの瞳に光が宿る。
- そして数々の制止の声を振り切って、フリーズの足は一歩を踏み出した。
- 下で作業していた作業員達が悲鳴を上げながら慌てて逃げ惑う。
-
- 「このままではこの艦も沈められてしまいますわ」
-
- スピーカでブレインに向かって言いながら発進カタパルトの上に、フリーズの両足を固定する。
- 誰もこれを扱えないというのなら、自分が扱って何とかしよう。
- あのキラ=ヤマトとラクス=ヤマトの娘だからではない。
- 私がミライ=ヤマトだから、自分の出来ることをするために。
- そんな覚悟で低く唸る機会音の中で、ミライは発進ができるようになるまでじっと息を呑んだ。
-
- その時、自分が操縦できる機体は残っていないかとドックへやってきたエデューも、その状況に目を見開く。
- 戦況の状況は医務室にいても、否応なしに聞こえてきた。
- それがエデューをイライラした気持ちにさせた。
- 怪我で満足に操縦などできないかも知れないが、しかしあのままじっと横になっていても、艦への脅威が去ることは無い。
- むしろ何もしないでこのまま沈められる事を思うと、じっと休んでいることなどできなかった。
- 本当であれば自分もその戦闘の中にいて、相手を薙ぎ倒していたはずなのだ。
- だから今、こうしてその戦闘が終わるのをただ待っていることは屈辱的なことで、我慢がならなかった。
- 再び医師の制止を振り切って医務室を飛び出すと、自分のパイロットスーツに身を包む。
- 彼は足の怪我を押して、フリーズで出撃しようと考えていた。
- しかしその決意を胸にいざ来てみればこの状況だ。
- 目の前で作業員達を押し退けて動き出し、発進カタパルトへと収まるフリーズ。
- そしてブレイン達の怒号から、動かしているのはミライだと知る。
-
- 「またあいつか!」
-
- 低く唸るように呟きながら、ミライへの私怨は一層募った。
- だがそれはとにかく後だ。
- エデューは他に使えそうなMSが無いか、ドック内のキャットウォーク目掛けて飛び降りた。
-
- 一方でブレインはフリーズの発進準備が進んでいく様を見つめながら、ブリッジに報告の通信を入れる。
-
- 「またミライ様がフリーズを動かしました」
-
- ブレインは渋い表情でフリーズを見上げながら、通信機に向かって怒鳴りたてる。
-
- 「何ですって!?」
-
- その連絡を聞いたレイチェルは声を上ずらせて聞き返す。
- ミライにフリーズのソフトを書き換えさせることは聞いていたが、出撃するなどとは聞いていない。
- ブリッジのクルー達も驚きの表情で顔を見合わせる。
-
- 「何で止めなかったの」
- 「止める間もありませんでしたし、MS相手に生身じゃ止めようもありませんよ」
-
- ブレインの言うことも尤もだ。
- しかしレイチェルが聞きたいのはそんなことではない。
- 何故ミライがMSを動かせる状況にあったのかということだが、今は言い争っている場合ではない。
- レイチェルは不毛な言い争いを打ち切って、苛立ちをぶつけるように通信機の受話器を叩きつけて切ると、すぐにもう一度取ってフリーズに通信を試みる。
-
- 「ミライ様戻ってください。隊長やエデューが言ったとおり、これは遊びではありません」
-
- まさかこんなところで子供の世話に手を焼くとは思ってもいなかった。
- ここは軍艦であってカレッジや専門学校では無い。
- ましてミライはまだ若いとはいえ、コーディネータであれば大人として扱われる年齢であるし、彼女が優秀な人間であることは周知の事実だ。
- そんな聡い彼女が何故そんな浅はかな行動を取るのか、理解出来ない。
-
- 「では艦長は、このまま部隊のMSが全滅するのを黙って見ているおつもりですか」
-
- しかしミライから返ってきた言葉に、レイチェルは言いよどむ。
- 確かに何か手を打たなければ、ジリ貧で自分達の、ひいてはミライの命も危険に脅かしてしまう。
- 正論と言えば正論だ。
- だがその打つ手を見い出せなくて、自分は苦悩しているというのに。
- 援護のMSは喉から手が出るほど欲しいが、ミライが出て行くのはまた問題が違う。
- ミライ本人がどう思っていようが、周囲はあのラクス=ヤマト、キラ=ヤマトの娘として見る。
- だから彼女の行動の一つ一つは、政治的にも色々と物議を醸し出すものなのだ。
- 苛立ちを抑えつつ、少しでもミライに同情した自分を情けなく思った。
- 結局ミライは反省を見せるどころか、またフリーズを勝手に動かした。
- いかに事務総長の娘であっても、この状況下での勝手な行動は許し難い。
- 内心航海日誌にこのことを記述することを、既に決めていた。
-
- そんなレイチェルやエデューの怒りなど何所吹く風で、ミライは操縦桿を握り締めると勇ましくも叫んだ。
-
- 「ミライ=ヤマト、フリーズ、行きます!」
-
- 宣言と同時にカタパルトはフリーズを乗せて動き出し、体に急激にGが掛かる。
- その負荷に短く呻き声を上げて耐えるが、それは一瞬の出来事だった。
- 機体はあっと言う間に艦のハッチを通って宇宙へと飛び出し、体もGから解き放たれる。
- 僅かに先の戦闘で襲ってきた死の恐怖が甦るが、頭を振ってそれを振り払うと、自分に喝を入れるように呟く。
- ミライは子供だから自分にはできないと思われることが一番嫌いだ。
- だからこれで証明しなければならないと考えた。
- 自分はただの遊びでないということを。
- しっかりと戦えるということを。
-
- 「やってみせますわ」
-
- 体が軽くなったところで操縦桿を握り直すと、自分自身に言い聞かせるように光の交錯する場所を目指して機体を加速させる。
- ハロがそんなミライを鼓舞するように、ミライゲンキ〜、と電子音を発し続けていた。
-
-
― Starstateトップへ ― |― 戻る ― |
― NEXT ―