- バンは何の感慨も含まない表情で、宇宙の藻屑と化した戦艦の破片を見つめていた。
- この戦艦を撃ち落すことは、彼にとっては造作もないことだった。
- 緊張感の無い表情でふうっと息を吐く。
- 作戦通り出撃したのはいいものの、余りにも簡単な作業に少しばかり自分の取った作戦を後悔していた。
- つまり簡単すぎて面白くないのだ。
- 尤も満足に足る相手と遭遇したことなど一度も無いのだが。
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- そうして一瞬ぼうっとしたいたら、そこに閃光が降り注ぐ。
- 瞬時に表情を引き締めて機体を旋回させると、光の飛んできた方向をモニタで辿る。
- そこにはリックディアスがライフルを突き出して迫る姿が確認できる。
- バンは鬱陶しそうに面倒くさいと呟いて、迎撃体勢に移る。
- そしてライフルを構えたかと思うと、無造作にトリガーを引いた。
- 大抵の雑魚ならばこれであっと言う間に炎に飲み込まれるのだ。
- だがリックディアスは紙一重で上半身を捻ってかわす。
- バンは攻撃が当たらなかったことに軽い驚きと、若干の喜びを感じる。
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- 「少しは楽しめそうな相手だな」
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- 少なくともさっきみたいな雑魚ではない。
- 舌なめずりをしそうに口の端を持ち上げて、リックディアスを舐め回すように正面に捉え、互いにビームライフルを1発撃つ。
- ビームはそれぞれの機体の顔のすぐ横を掠めて消えた。
- 緊迫した戦闘に、思わずわくわくした感情が沸き起こるバン。
-
- だがそれもすぐに沈静化される。
- リックディアスの後ろからフレアが凄い勢いで飛び込んでくる。
-
- 「俺を無視するとは、随分と余裕だな」
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- ヒューが叫びながら左肩にマウントされたガトリングキャノンを放つ。
- まだ扱いに慣れないMSとは言え、自分は無視されて他の相手と対峙されたのでは、さすがにプライドが疼くというものだ。
- 必ず仕留めるという気迫で持ってリックディアスに肉薄する。
-
- さらにヨウナのマラサイも、残存のグロウズ部隊を全滅させると、リックディアスを目ざとく見つけて襲ってくる。
- いかに強い相手でも、3対1では興醒めだ。
- さすがにそうまでして倒すほどの相手とは思えないので、飽きたようにバンは少し距離を置いて、隙が出来たところで撃ち落す楽な作業を取った。
-
- そうとは知らないザイオンは、相手の波状攻撃を辛うじてかわしていく。
- マラサイ振り下ろしたビームサーベルを受け止めたところに上からフレアのキャノンが狙い撃つ。
- ザイオンは堪らずマラサイを弾き飛ばすと、後ろに飛んでキャノンを避けた。
- しかしその背後は全くの無防備だった。
- バンはその隙を逃さずライフルを構えて正射する。
- 放たれたビームは真っ直ぐ、リックディアスのコックピット目掛けて伸びてくる。
-
- それを目の当たりにしたザイオンは、己の死を覚悟した。
- 目をギュッと瞑ってその瞬間を待つ。
- しかしいつまで待っても、熱も、激しい爆音もザイオンの身に降りかかることはなかった。
- そんなことを感じる間もないまま死んだのかとも思ったが、恐る恐る目を開けて状況を確認する。
- するとリックディアスとストライクイージスの間には、ビームシールドが割って入っていた。
- バンも驚きの表情を浮かべて、シールドが戻っていく先を見つめる。
- そこにはフリーズの姿が悠然と佇んでいた。
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PHASE-07 「運命の対峙」
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- ザイオンはフリーズを見た瞬間、ミライが乗っていると直感した。
- 助かった安堵を忘れてミライを叱る。
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- 「何故、また貴女は!」
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- 自分が指示をしたのはソフトの書き換えであって、出撃することではない。
- クルー達はなにをやっていたのか、と愚痴を零したくなるが、今そんなことを言ってもどうしようもない。
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- 「ここは戦場です。貴女は早く戻ってください」
- 「あのままではザイオンさんは死んでいました。今は彼らを退けるのが先ですわ」
- 「それは我々の仕事です。貴女のやるべきことではない」
- 「ではこれの書き換えを指示したりして、どんな手を打つおつもりだったのですか」
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- 2人はまた言い合う。
- しかしそれも長くは続かず、2機の間を走るビームに遮られる。
- フリーズとリックディアスは分断されるようにそれぞれかわし、目の前に迫る敵に意識を集中する。
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- フレアのビームランチャーを避けながら、ザイオンはビームサーベルを抜いて切り掛かる。
- ミライのことも気に掛かるが、目の前のフレアを何とかしなければどうにもならない。
- 焦る気持ちを抑えつつフレアに接近戦を挑む。
- 元々はこちらの機体だ。
- 武装や性能の情報は把握している。
- フレアが不得手とする接近戦で、逸早くフレアの戦闘力を削ごうというのがザイオンの考えだ。
- だがヒューもフレアの特性を充分に理解している。
- そして相手の目論みを察知して、ガトリングキャノンを連射して、接近を許さない。
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- 一方のミライは5つの砲口から火を吹くストライクイージスの射線から、身をよじるように旋回を続けてかわす。
- そのフリーズの中で戸惑いの表情を浮かべていた。
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- 「何ですか、この感覚は」
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- ストライクイージスと対峙しながら、ミライは不思議な感覚を覚えた。
- よく知った相手のような、それでいて今まで感じたことのないざらついたような不快な感触が、相対した機体から感じられる。
- 目に見えぬ威圧、いや憎悪と言ってもいい。
- そんなどす黒い感情がミライに纏わりつくのだ。
- まさか知り合いが乗っているなどとは思えないが、その感覚が反撃することを躊躇させる。
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- 「俺の機体を返せ!」
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- そこにヨウナが狂乱した表情で、リーズに迫る。
- ストライクイージスの連続攻撃をかわすことに精一杯になっていたミライは、ヨウナのショルダータックルをまともに喰らった。
- コックピット内に金属の擦れる嫌な音が響いて、激しく揺れる。
- ハロも衝撃にコックピットの中で、壁にぶつかって跳ね返って悲鳴を上げる。
- だがミライも負けてはいない。
- 押されながらも機体の腕を伸ばして、フリーズを掴んでいるマラサイの腕を掴む。
- そして機体の掌から光を放ち、左腕をもぎ取った。
- 小さな爆発が起きてその爆風に飛ばされるように離れる2機。
- そのままミライは体勢を立て直す前にビームシールドをパージして、マラサイ目掛けて飛ばす。
- 一拍遅れて気がついたヨウナは、ビームシールドを破壊しようと懸命にライフルを放つが、攻撃はビームに弾かれて効かない。
- 諦めて回避しようとした時には遅かった。
- その牙はマラサイの右足を捉えて分断する。
- さらにビームシールドは返す刀で右腕も肩先から切断する。
- マラサイは完全に戦闘力を失った。
-
- それを見たバンは、ヨウナの役立たずがと舌打ちして再びフリーズに攻撃を再開する。
- その行動を視界に捉えたミライは、シールドを素早くストライクイージスと自分の間に持ってくる。
- だがバンは構わずシールドに突っ込む。
- それをビームサーベルで払い除けて、接近戦を仕掛けるつもりだった。
-
- 「折角なのでその新型も頂戴しよう!」
-
- しかしその目論みは脆くも崩れる。
- シールドの先端部がバンの正面に向くと、ゆっくりと左右に開き、銃口のような丸い筒が顔を覗かせた。
- そしてそこから眩い光が迸ったかと思うと、一本の閃光がストライクイージス目掛けて伸びる。
- ビームシールドに埋め込まれたビーム砲が火を吹いたのだ。
-
- バンは予想外の攻撃に回避行動が遅れた。
- コックピットへの直撃は免れたが、シールドで防ぎきれなかった右肩が吹き飛んでしまった。
- またコックピット内にも火花が散り、警告を示すメッセージがコンソールのあちこちに表示される。
- バンの頭は混乱していた。
- 予想外の武器に、初めて陥った自分が被弾しているという事態。
- 今まで感じたことのない感情。
- そう、恐怖と言うものを、戦場で初めて肌で感じていた。
- 自分が死ぬかもしれないということを恐れている、ということを自覚し、それを慌てて否定する。
- しかしフリーズをずっと睨みつけながら、反撃へ転じることに踏み切れなかった。
-
- ヒューはストライクイージスの被弾を見て息を呑む。
- 見慣れない武器を使用したとは言え、バンが被弾したところを初めて見た。
- そしてフリーズに対して改めて驚きと恐怖を感じる。
- 最初に対峙した時はMSを歩かせるだけでもやっとだったはずなのに、今やこちらのエースを追い詰めるほどの攻撃を繰り出してくる。
- フリーズのパイロットは恐ろしいスピードで成長しているのだ。
- そして恐らくもっと凄いパイロットになる。
- 根拠は無いがそんな予感がした。
- 今ここで倒しておかなければきっと大きな障害になる。
- ヒューはフリーズのパイロットが誰だかも分からないまま、しかし最も危険な相手と認識した。
-
- だがその思考を遮るように、リックディアスから放たれたビームがフレアを掠める。
- フリーズを倒すためには先ずは目の前の相手をどうにかしなければならない邪魔者が居た。
- そのことに小さく舌打ちをすると、ジグザグに飛行して攻撃を避けきったところで、腰に大口ビーム砲を構えた。
- しかしビーム砲を撃とうとトリガーを引いたが、空かしたような感触だけが指に伝わり、ビームが出ない。
- 直後、コックピット内に警告音が鳴り響く。
- 核エネルギーの使用が禁止されている今、MSを起動エネルギーは新型バッテリーが主流だ。
- 当然無限ではなく、使い続ければエネルギー切れを起こす。
- フレアのエネルギーが危険域に入り、ビーム砲が撃てなくなったのだ。
- 当然、ストライクイージスも同じようにエネルギーがそろそろ尽きる頃だ。
-
- 「バン、ここは撤退だ。ストライクイージスもエネルギーがもう切れる」
-
- ヒューは舌打ちしながらバンに撤退を促す。
- まさかの敗北ということになるが、この宙域に留まる事は死を意味する。
- 反撃もままならないマラサイで、まだ執拗にフリーズに仕掛けようとするヨウナを、機体を強引に担いでその場を離れる。
- バンはヒューに俺に命令するなと鋭く唸るが、確かに今のダメージもあってエネルギーはもう残っていない。
- マスクの下から見える顔を真っ赤にしながらも、何とか冷静な判断を保つと機体の踵を返す。
-
- ミライはそれを追いかけようとするが、ザイオンが機体を割り込ませて止める。
-
- 「こちらの損害の方が大きい。深追いは禁物です」
-
- リックディアスもエネルギーが底をついていた。
- それに戦艦を1隻失ったばかりか、グロウズ部隊もほぼ全滅している。
- ミライのフリーズは元気かも知れないが、部隊全体としては追撃するだけの体力は残っていない。
- 端的にザイオンにそう説明されたミライは、まだ納得のいかない表情ながら渋々追うのを止める。
-
- 何とか追撃を止めることができたことに安堵しながら、しかし、とザイオンはフリーズをじっと見つめる。
- ミライがフリーズで出撃していなければ自分は確実に殺られていた。
- そしてフリーズをこうも操って敵のエースを退けた。
- それは揺ぎ無い事実だ。
- そのことを喜ぶべきかどうか、複雑な思いを抱えながらミライを促してケルビムへ戻る。
-
- 一方のバンは追いかけて来ないのを後ろ目で確認しながら、初めての敗北プライドは屈辱に塗れていた。
-
- 「セントルーズ、撤退するぞ。信号弾を上げろ」
-
- 口から血が出るほど歯を食い縛った後、低く唸るように、ようやくそれだけを搾り出した。
-
*
-
- リュウはバイアランの攻撃に、だんだんとついていけなくなっていた。
- 最初の内こそ相手の動きがしっかりと見えていたのだが、息も吐かせぬ連続攻撃に次第に防戦一方になる。
- そしてついに防ぎきれなかった攻撃に被弾し、リュウのグロウズは左足を失った。
- それにより機体は大きく傾ぐ。
- その隙を逃さずバイアランは右腕を突き出した。
- もっと楽しめるかと思ったが、ここで終わりらしい。
- 思わぬ呆気ない幕切れに、イリウスは鼻で笑いを一つ零すと躊躇わずに引金を引いた。
-
- しかしビームを発射する前に、バイアランの右腕が突然爆発した。
- イリウスにも一瞬何が起こったのか分からなかった。
- だがとにかくリュウのグロウズを仕留めることを邪魔されたことだけはハッキリ分かり、怒りが湧き上がる。
-
- 一方で助かったリュウには、一筋のビームがバイアランの右腕を貫く瞬間が見えていた。
- そのビームが飛んできた方向に目を向けると、グロウズが1機こちらに向かって来る。
- それはエデューが無理矢理乗り込んだ機体だ。
- フリーズの出撃でまだ怒号と混乱が残るドック内で、まだ無事なこれを見つけると、エデューは有無を言わさず起動させる。
- そして彼もまたまたブレインやレイチェルの怒りを押し退けて、出撃してきたのだ。
- そのグロウズが放ったビームが直撃したのだ。
-
- 「リュウ、お前は下がれ」
-
- そう言いながらあっという間にリュウのグロウズを追い越したかと思うと、バイアラン目掛けてビームサーベルを振り下ろす。
- イリウスは機体の左腕で防ごうと出すが、それもサーベルに切り捨てられる。
- 相手の素早い攻撃に早くも両腕を失ってしまった。
- しかしそれが闘志を奪うことにならない。
- むしろ怒りに喚く。
-
- 「邪魔するなー!」
-
- イリウスは怒りに血走った目を見開いて、腰のレール砲をエデューのグロウズに向ける。
- しかし円を描くような軽快な動きでひらりとかわすと、ビームサーベルを振り被って接近する。
- その狙いは寸分違わずコックピットを狙っていた。
-
- 他のグロウズ部隊を全滅させたグリムが、その様子に気がついた。
- まるで動きの違う1機のグロウズが、バイアランに今にも止め刺そうとしている。
- 助ける義理は彼には無いが、客観的な戦力というものを考えた時、バイアランを失うのは得策ではない。
- ただそれだけのことだ。
- グリムはのっそりとライフルを構えると、グロウズとバイアランの間に牽制のビームを一発放つ。
- そして方向転換したグロウズに、ビームサーベルを横から薙いで肉薄する。
- しかしエデューはそれも冷静に捉えていた。
- マラサイのビームサーベルをあっさり受け止めると、右手首を少しだけ傾けて器用にいなす。
- そして体勢の僅かに崩れたところに強烈な蹴りをお見舞いする。
- さらにその反動を利用してバイアラン目掛けて加速し、擦れ違いざまにビームサーベルで薙ぎ払う。
- イリウスはコックピットへの直撃は避けたものの、左のレール砲も切り落とされ、ほとんど反撃の術を失う。
- グリムは無表情のまましかし舌打ちすると、ライフルを連射する。
-
- エデューはバイアランがもう戦闘できないと判断すると、マラサイにターゲットを絞って大きく旋回すると、目掛けて加速する。
- だがグリムも同じ手を二度は喰わない。
- 反動をつけてサーベルを弾き、空いていた拳をグロウズの顔面に叩き込む。
- エデューは衝撃に小さく呻き声を漏らすが、すぐに体勢を立て直すと距離を取ってライフルをかわす。
-
- 「す、凄い」
-
- リュウはその動きを、ただただ唖然と見つめていた。
- 初めて見る同僚の戦いにしばし目を奪われ、同時に自分が情けなく思えた。
- 経験が無いとは言え、同じ機体を駆ってあそこまで扱うことは今の自分にはできない。
- 歴然としたパイロットとしての技量の差に悔しさが込み上げて、ただ操縦桿を強く握り締めることしかできなかった。
-
- その時、撤退を示す発光信号が打ち上がる。
- セントルーズから上がったものだ。
- 確認したグリムは一瞬驚くが、確かにマラサイのエネルギーは大分消耗している。
- 他の機体も同じような状況だろうと納得すると、まだもがくバイアランを引きずるように、セントルーズ目指して飛び退る。
-
- エデューはそれを追いかけようとしたが、ケルビムからも撤退の信号弾が上がる。
- そこで初めてリュウ以外のグロウズ部隊が全滅していることにも気がついて追撃を断念し、リュウのグロウズを引っ張ってケルビムへと戻る。
- だが自分が最初から出られなかったことと、こうもあっさりやられた味方に対して苛立ちが募る。
- エデューはその感情をぶつけるように目の前のコンソールに拳を叩きつけた。
-
*
-
- ケルビムは強襲部隊の遥か先を行く、戦艦を追っていた。
- しかしなかなか距離を詰めることが出来ない。
- 高速艦だと自負はしているが、MSの戦闘の真っ只中を横切って追いかけるわけにも行かず、迂回ルートを通っているためだ。
- あちらは一切転進しないことから、このまま目的を果たすか、あるいは時間に到達すればそのまま逃げるつもりだろう。
- このままではおめおめと逃してしまう。
- レイチェルはこの距離だが、主砲による攻撃を敢行することにした。
- 勝手に出撃したミライやエデューへの怒りはまだ納まっておらず、八つ当たりするには絶好の相手だった。
-
- 「主砲用意、目標敵戦艦」
-
- どよめきがブリッジ内に満ちるが、レイチェルは有無を言わさず矢継ぎ早にセントルーズに対する攻撃指示を行う。
- クルーは慌しくそれに従い、ブートバーナーの発射準備ができたことを報告する。
- レイチェルはそれに頷くと、立ち上がって凛と声を張る。
-
- 「ブートバーナー、てーっ!!」
-
- アールは舵をセントルーズに向けながら、照準がぶれないように操舵をしっかりと握り締めた。
- そしてケルビムの中央にマウントされた、巨大な砲身が大きく突き出され、光を吸い込んだかと思うと、眩い閃光を吐き出すようにブートバーナーは放たれた。
-
- 一方のナトーも敵の主砲が狙っているのを知ると、反撃を試みる。
-
- 「主砲撃て、狙いは敵戦艦のエンジンだ」
-
- そしてすかさず発射を指示する。
-
- 2隻の放った主砲は、平行に擦れ違うようにそれぞれの相手目掛けて真っ直ぐ伸びる。
-
- セントルーズの放った主砲はケルビムの右エンジンを掠める。
- 直後、右エンジンは爆発を起こし火を吹いた。
- その衝撃にブリッジは大きく揺れ、クルー達は悲鳴を上げて手すりやパネルに捕まる。
- レイチェルは手摺りに掴まりながらすぐに損害状況の報告を求めるた。
- 直撃ではないこともあり、幸い人的被害は無いようだ。
- しかしエンジンの稼働率はどんどんと低下して、まともな航行をできる状態にはなかった。
-
- ケルビムのブートバーナーもセントルーズを捉えていた。
- 左側面を掠めて、そちらにマウントされていた火器を全て薙ぎ払った。
- 相手の主砲の威力に内心舌を巻くが、しかしこちらは航行に支障が出るダメージではない。
- とは言え戦闘継続はもう無理だ。
- 衝撃に歯を食い縛りながら、ナトーは操舵手にスピードを落とさないように指示を飛ばす。
- そこにバンから通信が届く。
- バンが被弾したということに驚きを隠せないが、とにかく自軍の状況が不利だということだけは理解できた。
- 慌しく撤退信号の指示を飛ばしながら、同時に宙域からの離脱を急がせる。
- そしてバン達MSが着艦したのを確認すると、エンジンを最大出力まで上げた。
-
- その時ケルビムのブリッジにもザイオンから通信が入る。
-
- 「相手は撤退した。こっちも引くぞ」
-
- ミライとエデューの介入で状況を覆せたとは言え、こちらはそれ以上の損害があった。
- それにケルビムも相手を追いかけるだけのスピードは、今の状態では出せない。
- MSも奪われたままで、どちらかというとこちらの負けということになるのだが、生き残れた安堵の方が大きかった。
- レイチェルは遠ざかる光を見つめながら撤退信号の発射を指示すると、天を仰ぎながら大きな溜息を吐いて、シートの背もたれに体を預けた。
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