- ザフト軍駐留基地を出発した後、ケルビムの航行はこれまでの騒ぎが嘘だったかのように穏やかだった。
- 軍艦とは言え、常に戦闘を行っているわけではない。
- 娯楽施設もそれなりのものが揃っているし、目的地への移動中は半舷休息ながら緊張感から解き放たれた状態なのが普通で、これまでがむしろ異常な状況が続いただけだ。
- クルー達も今はどこか気楽な、宇宙のクルージングを体験しているかのような感覚の者さえいた。
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- そんな中、ミライは1人宛がわれた部屋でパソコン画面と睨めっこをしながら、フリーズのソフトの書き換えに頭を悩ませていた。
- しかしその作業も長くは続かない。
- 少しコードを書き込んでは溜息を吐いて椅子の背もたれにもたれたり、ベッドに飛び乗ったりということを繰り返しながら考えていた。
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- ついに集中力が完全に途切れたミライは、ベッドの上にごろんと寝転がる。
- そのままベッドに体を預けて、じっと天井を見つめる。
- 2体のハロが能天気な電子音声を響かせる以外は誰も居ない静かなこの部屋が、今のミライにはひどく広く感じられた。
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- 彼女はこれほど長く独りで居たことなど、今まで無かった。
- 確かに自分と対等の立場で話ができる友達は1人も居なかったが、それでもいつも周りには誰かがいていた。
- 自分を尊敬の眼差しで見つめたり、熱烈な歓迎であったり様々だが、そこには常に歓声と喝采、羨望があった。
- それが無い時も、温かな両親や姉兄の眼差しが傍にあったのだ。
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- しかし今は違う。
- 自分がここではあまり歓迎されていないことを理解している。
- ケルビムのクルーにとって自分は異質な存在なのだ。
- 事務総長の娘であるという時点で既に普通の人とは違うのだ、と言うことを嫌と言うほど思い知らされる。
- そしてその立場が、世間知らずなお嬢様というフィルター越しでしか自分を見られていないという現実を突きつける。
- 今までの喝采も、その特別扱いによるものだったのかと思うと、胸が苦しく、悲しくなる。
- 自分と言う存在に自信が持てなくなる。
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- 彼女はまだ幼い。
- ずっと甘やかされてきたわけではないが、常に両親の優しさに包まれていていたミライにとって、両親の唱える理想世界では無い、現実の生の世界と触れることは実質初めてだった。
- そしてミライは生まれて初めて他人に拒絶されるということを経験し、その心はひどく傷ついていた。
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- そこに敵襲を知らせる警報が鳴り響く。
- ミライはその音にガバッと飛び起きた。
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PHASE-12 「襲撃再び」
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- レイチェルやザイオンにとってはこうなる前に書き換え作業を終えて欲しかったのだろうが、フリーズのソフトの書き換えが終了していない以上、フリーズにはミライしか動かすことができない。
- ミライは部屋を飛び出すと、真っ直ぐMS格納庫へと向かう。
- まだ状況が分からないが、場合によっては再び自ら出撃するつもりだ。
- ミライとしては、それでソフトの書き換えが終わっていない責任を取ろうというつもりだった。
- それに部屋に1人で居るよりは、色々と悩まずに済むと思った。
- とにかく自分が普通の人間で、特別な存在ではないということを証明したかった。
- その一心でパイロットスーツに着替えると、フリーズのコックピットに乗り込む。
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- その間もクルーやザイオンが状況を確認する怒号が響いている。
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- 「敵機の数は?」
- 「確認しました。全部で12機です。うち6機は先日襲撃してきた所属不明のMS、その中にフレアとライジンが含まれています。後の6機はライブラリにありません。機種不明」
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- エミリオンが上ずった声で敵機の情報を報告する。
- 相手の数がこちらのMSの倍以上であることに、クルー達の間に一様に緊張感が走る。
- しかも新型機まで投入してきて、いよいよ本気でこちらを攻め落とすつもりらしい。
- だがESPEM本部まで後僅かというところまで来て、こちらもやられるわけにはいかない。
- 報告を聞いたザイオンは渋い表情で舌打ちをするが、テキパキと指示を飛ばす。
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- 「MSは出撃する。準備を急げ。ケルビムは迂回ルートを描きながら、ESPEM本部を目指せ。本部への応援要請も忘れるな」
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- 言いながら自分もMSのコックピットに飛び移る。
- 指示を受けて、ミライもフリーズの電源を入れ、発進準備を進めた。
- しかしザイオンは通信で、ミライには別の指示を言い渡す。
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- 「ミライ様は、フリーズで待機していてください」
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- 数的にも不利なのに、自分には出るなという指示にミライは驚く。
- 未だソフトの書き換え作業が進んでいないことを怒っているのだろうか。
- しかし今は目の前の状況をどうやって切り抜けるか、ということが最優先だ。
- そのためには自分は出撃すべきだ、1機でも多いほうが良いはずだと、ミライは言い募る。
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- 「貴女は別命があるまで待機です。いいですね」
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- だが尚も言い縋ろうとするミライに、ザイオンはいつになく厳しい口調で反論を遮る。
- その迫力にミライも、渋々はいと返事をするしかなかった。
- また自分が特別扱いを受けていると感じ、ますます孤独感を募らせて、ぎゅっと唇を噛み締める。
- ただ自分がしたいと思うことで、出来ると思うことをしようとしているだけなのに、キラとラクスという偉大な両親の娘というだけでそれが許されないのか。
- ミライは慰めるように名前を呼ぶハロをぎゅっと抱きしめて、溢れそうになる涙を堪えた。
-
- そんなザイオンとミライの通信を聞いて、ミライが一先ず出撃しないことに安堵したエデュー。
- しかしすぐにその自分の甘い感情を否定するように頭を振ると、キッと正面に広がる宇宙を見据える。
- ミライが出撃しないということは、それだけ自分達に負担が増すということだ。
- それなのに余計なことを考えている場合では無い、と自分に言い聞かせる。
- 加えて何故ミライが出撃しないことに安堵を覚えたのかも、エデューは自分で自分の気持ちに驚いていた。
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- ミライを出撃させるまでも無い。
- 自分が全て片を付けてやればそれで済むことだ。
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- それらの思いを無理矢理振り切り、エディーの中に凶暴なまでの闘争本能が頭をもたげていた。
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- 「リュウ、さっき話したとおり、お前は後方から俺の援護すればいい。いいな。エデュー=フィレンチェ、グロウズ、出る!」
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- 傷が癒えたばかりのリュウは、コックピットの中で緊張した面持ちで座っていた。
- 復帰してそうそう大変な局面に出くわしたものだと、悔やんでいいやら嘆いていいやら分からない。
- しかし生き残るためにはとにかくやるしかないことだけは、ルーキーと言えども容易に理解できた。
- さらに休んでいた間にも戦闘はありミライに出撃させたことを申し訳なく思い、その時の分も取り返そうと、自然と操縦桿を握る手に力が入る。
-
- 「了解、リュウ=サイオンジ、グロウズ、発進します!」
-
- エデューのグロウズはアタック装備、リュウのグロウズはバスター装備で飛び出していく。
- 相手の状況を聞いてエデューが判断し、リュウにも指示を与えた結果だ。
- リュウに援護させて、自分は敵陣深く切り込んで相手を倒そうという気迫が見て取れる。
- そのエデューの強い気持ちは、少なからずジローの心も奮い立たせた。
-
- 「これで決着がつけれたらええけどな。ジロー=サトウ、フウジン、行くで!」
-
- 2機の発進を見送った後で、ジローが本音とも冗談ともつかない台詞を呟いて、機体を発進させる。
- その言葉に内心で溜息を吐いてザイオンは、本当にな、と呟く。
-
- 「とにかく本部まで後少しだ。全力でここを切り抜けるぞ。ザイオン=バークス、リックディアス、出るぞ!」
-
- ケルビムのクルーにと言うよりは、自分自身に言い聞かせるように檄を飛ばすと、決死の思いで機体を発進させた。
-
*
-
- 「まさか、こんなものを引っ張り出すことになるとはな」
-
- バンは発進準備を進めながら、ストライクイージスのコックピットの中で毒づく。
- こんなものとは、先の戦闘の後補充した新しい機体、薄紫に、赤いラインで縁取られたボディーを持つガザのことだ。
- 条約など彼にとって知ったことではないが、これに頼ることは彼のプライドを大きく傷つけた。
- しかしそれを招いたのは自分の失態のせいだ。
- 分かっているからこそ、自分自身に腹が立つし、それ以上文句を言わない。
- ただ自分の輝かしい経歴に傷をつけたフリーズに対して、激しい憎悪の念を抱いていた。
- 尤も、仮面に覆われた顔からはその感情を読み取ることはできないが。
-
- そんな苛立った台詞を吐くバンをナトーが宥める。
-
- 「仕方ありません。これも命令ですから」
-
- 言いながら、ドックに佇む薄紫色の真新しいMSにちらりと視線をやる。
- ナトーもそれを使うことにはいささかの抵抗があった。
- 前の大きな戦争、"FOKA'S"の乱を経験したことのあるナトーにとって、このMSを使うことには抵抗があった。
- 本来国際条約で禁止されているあるシステムが導入されているから、ということではない。
- これは如何に戦争であろうと、人が本来扱うべきものではないと思っていたからだ。
- 以前の戦争以後全て破棄されたものと思っていたのだが、それがまさかこんなものを隠し持っていたとは。
- 今更ながら組織の強かさと言うか、底知れぬ技術の高さ、そして組織の長の考えには恐怖すら浮かんでくる。
- だが既にその思想に染まったナトーは、世界を正すにはこれもまた今は必要な力と思い直し、モニタに映るバンを見据える。
-
- ナトーの言葉にバンはふんと鼻を鳴らして、分かっていると返す。
-
- 「分かっているな。今度こそあの新造戦艦を押さえるぞ」
-
- それから怒りを押し殺した声で、全クルーに鋭く命令を飛ばす。
- その号令を受けて、次々にバンのストライクイージスを初め、3度ケルビムの部隊と刃を交えた6機と、ガザ6機が宇宙へと飛び出していく。
-
- 「いいか、しっかりガザもコントロールしろよ」
-
- バンは各機にそれだけ言い置くと、まっしぐらにケルビムを目指して加速する。
- とにかく胸に溜まった溜飲を下げるために、バンは一刻も早くケルビムを、そしてフリーズを撃墜することを望んでいた。
-
*
-
- 「来たぞ、散開!」
-
- ザイオン達とバン達がまさに交錯しようというその時、バン達の部隊が先に動く。
- ガザがライフルを構えたかと思うと、一斉にビームを放つ。
- ザイオンはその先制のビームに素早く反応して、部下に鋭く指示を飛ばして攻撃を避けると、目ざとくストライクイージスを見つけて攻撃を仕掛ける。
- 彼にはとにかく最も強敵だと思われるストライクイージスを抑えて、少しでも有利に戦闘を切り抜けたいという思惑があった。
- しかしバンにはザイオンのリックディアスなど眼中に無い。
-
- 「あの白い奴がいないな」
-
- リックディアスの攻撃を難なくかわしながら、周囲を見渡して呟く。
- 自分の機体を傷付けたフリーズに復讐することが彼の望みだ。
- それなのに、肝心のフリーズがいないのでは話にならない。
- 他の雑魚を相手にしたところで、自分の気持ちが晴れることは無い。
-
- 「ヒュー、こいつとちょっと遊んでいろ」
-
- リックディアスを目障りだと切り捨てたバンは、ヒューにそれだけ言い置いて、1機のガザを率いてケルビムに迫る。
-
- 「待て!」
-
- ザイオンがストライクイージスを追いかけようとするが、さっとヒューがその間に機体を入れて阻止する。
-
- 「これも命令なんでな、お前は俺の相手をしてもらう」
-
- 言いながらフレアの腰のビーム砲を放ち、リックディアスを牽制する。
- ザイオンは呻き声を上げて砲撃をかわすと、頭部のバルカン砲を起動して反撃する。
- ヒューも機体を回転させながら避けると、ビーム砲を構え直して、再び発射する。
- 数度打ち合う2機。
- その間に割って入るように、ガザがフレアの前に出てきてライフルを放つ。
- ガザは速い動きで機体を左右に振りながら、連続でビームを撃ってくる。
- その素早い連続攻撃に業を煮やしたザイオンは、射撃をビームシールドで防ぎながら一気に加速して、手の届く範囲まで接近すると、ビームサーベルを振り被って切りかかった。
- タイミング的には、これでガザは一刀両断となるはずだった。
- しかしガザは機体を捻って半身のような体勢を取り、リックディアスの攻撃を紙一重でかわした。
- 驚き目を見開くザイオン。
- その隙をついて、フレアのビーム砲が再びリックディアスを襲う。
- ザイオンは何とかシールドを構えて攻撃を受け止めるが、その威力に大きく弾き飛ばされる。
- 体勢の悪い状態を狙って、距離を取ったガザが再び攻撃を仕掛けてくる。
- 何とかシールドによる防御は間に合ったが、その射撃もピンポイントにコックピットやメインカメラを狙ってくる
- それは非常に正確な攻撃だ。
- しかも機体の動きも相当速い。
- 新型機にも相当優秀なパイロットが乗っているな、と評価する。
- どちらも1対1でも苦戦必死な相手なのに、2機同時に相手にするのは、非常に苦しいものがある。
- しかし数的不利なこちらはそれで応戦するしかない。
- ザイオンには他のパイロットや艦の心配をする余裕が消え失せていた。
-
- ジローもロックしたはずの射撃がガザにかわされ、驚きと苛立ちが募る。
- 相手が如何に強敵であっても、ここまで攻撃が当たらなかったことは無い。
- それが彼のプライドを逆撫でする。
-
- 「それやったら、これでどうや」
-
- 痺れを切らしたジローはロックの解除コードを入力し、フウジンのスピードを上げる。
- このスピードで迫ってゼロ距離攻撃を行えば、さすがに避けることはできないだろうと考えた。
- 光の尾と残像を引きながら、ガザに迫るフウジン。
- しかしそれを阻止したのはタクミのライジンだ。
-
- 「悪いがそれはさせない」
-
- タクミもキーボードを取り出すと、コードを入力する。
- するとライジンから噴出すバーニアの火が大きくなり、スピードが上がる。
- その加速の衝撃がタクミにも襲うが、タクミは息を止めてそのGに耐えると、ライジンがスローモーションの連続写真のように、残像を残して一直線にフウジンに迫る。
- それはガザに接触しようかというフウジンよりも早く届いた。
- サムライソードを抜いて切り掛かるタクミ。
- ライジンの動きに気付いたジローは、唸りながら操縦桿を引いて機体を一瞬止め、それから加速する方向を変えて攻撃をかわす。
- まさにコンマ以下の世界で、紙一重の攻防だった。
- ハッキリ言って、ジローがかわせたのは運が良かったからに過ぎない。
-
- 「せやったな。ライジンもスピードがめっちゃ速いんやったな!」
-
- ジローは苦々しく吐き棄てるように呟く。
- 兄弟機であるライジンにも、フウジンと同じようにバーニア出力の制限を解除する機能が備わっていた。
- 小回りはきかないが、直線的なスピードだけで言えばライジンの方がスピードは上だ。
-
- 「それそろその機体もこっちに渡してもらおうか」
- 「おもろない冗談は止めときや。寒うなるで」
-
- ジローはガザの存在も忘れて互いに罵りあうと、2機はまた目にも止まらぬ速さで交錯した。
-
*
-
- 「近づけさせるな。弾幕ー!」
-
- その頃ケルビムでも、必死に応戦していた。
- 迫るストライクイージスに声を張るレイチェル。
- しかしバンはその砲火をアッサリ掻い潜って、射程距離内にケルビムを捉える。
-
- 「さっさと出て来い、白いの!」
-
- 言いながらライフルの引金を引く。
- ビームはケルビムに直撃し、船体で大きな爆発を起こす。
- その衝撃にケルビムの中は激しく揺れる。
- ブリッジクルー達は近くの物に捕まりながら、叫び声を上げる。
- アールも必死に操舵輪を操るが、ストライクイージスの方が速くて振り切れない。
- その間にも2度目、3度目の衝撃が襲う。
-
- MSドック内も当然激しく揺れ、ミライもコックピットの中で短く悲鳴を上げた。
-
- 「このままでは艦が落とされてしまいます。私が出て艦から引き離します」
-
- 堪りかねたミライはレイチェル宛てにそう通信を送ると、一方的に切って発進シークエンスを起動させる。
- 胸の内にはザイオンの言うことを聞かなかったことに対する罪悪感があるが、そんなことを気にしている場合ではない。
- とにかく誰かがストライクイージスを抑えなければ、ケルビムのクルー達も、そして自分自身もやられてしまうのだ。
- 意を決すると、レイチェルが止める間もなく、フリーズはカタパルトを滑ってストライクイージスの目の前へと飛び出す。
- またも勝手な行動に出たミライに、レイチェルの怒りは募るが、今はそれどころではない。
- 敵の相手をしたいというのであれば相手をさせておけ、という気持ちだった。
-
- 「弾幕を張りつつ本部への迂回ルートを取る。本部へは応援要請の打診を続けて」
-
- まだ揺れの続くブリッジで、レイチェルは上ずった声で命令を飛ばした。
-
- 「ようやくお出ましか!」
-
- フリーズの姿を確認するとすぐに目標を変えて、唸りながらビームサーベルを抜いて、猛然と切りかかるバン。
- 気がついたミライもビームサーベルを抜くと、勢いよく振り下ろす。
- 激しくビームサーベルを交錯させる2機。
-
- ミライはまた先の戦闘で感じた違和感を、再び感じる。
-
- 「貴方は一体!?」
-
- 相手のビームサーベルを払いながら戸惑い、尋ねるミライ。
- しかしバンはその問い掛けに答えることなく、立続けにビームサーベルを雨の様に振り下ろす。
- フリーズを目の前にしたことで蓄積した怒りが爆発し、普段の冷静な攻撃ができなくなっていた。
- その妄執的な攻撃はモーションが大きく、ミライにもその隙がよく見えた。
- ミライは答えを諦めてシールドで手首の辺りを受け止めると、機体を半身に捻っていなし、その胴体に蹴りを喰らわせる。
- ストライクイージスは耐え切れず、後方へ大きく吹き飛ばされる。
- 距離が開いたことで体勢を立て直すミライ。
- だがその隙を与えないように、背後からガザがフリーズを狙う。
- 気がついたミライは、急加速をかけて大きく旋回する。
- 体に掛かるGに小さく呻き声を漏らすが、それを気にしている場合ではない。
- 2体1で対峙しているのだから、少しでも隙を見せればやられる。
- 戸惑いを振り切ると、操縦桿を巧みに弾いてガザの素早い連続攻撃をかわしていく。
- そして半身の状態から振り向きざまに素早くライフルを抜くと、ビームを放った。
- トリッキーな攻撃だが、銃口は間違いなくガザを捉え、これでガザは宇宙の藻屑と消えてしまうはずだった。
-
- だがその攻撃は当たることはなかった。
- 驚愕の表情を浮かべるミライ。
- その後も何度か攻撃を試みるが、フリーズの射撃はことごとくガザに避けられる。
- スコープがロックした先からひらりと機体を捻り、攻撃の方がまるで的を外しているように、ビームは何も無い宇宙空間の彼方に吸い込まれていく。
- ミライは既に3度の戦闘で、それなりの自信を得ていた。
- 実際ミライの射撃の正確性はかなりのものだ。
- それを紙一重で避ける相手の技量には舌を巻くしかない。
- また機体の動きもこれまで対峙した相手と比べてもかなり速く、攻撃間隔も短い、正確な攻撃だ。
なかなか反撃する隙を与えてくれない。
- どうすればそんな相手を倒すことができるのか、その方法を見出せないでいた。
-
- その戸惑い中、再びストライクイージスがビームサーベルを閃かせて切り込んでくる。
- ミライはそれをビームサーベルで受け止めながら、思わぬ強敵の出現にかつてない危機感と焦燥感を募らせて、防戦一方の状態に陥っていた。
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