- ケルビムに着艦したキラは大きく息を吐くと、ヘルメットを脱いでコックピットのハッチを開く。
- 久し振りに戦闘を行ったことで、肉体的にも精神的にもかなりの疲労が伴っている。
- その容姿は若く見えるが、既にキラも40歳。
- さすがに体力には少しずつ衰えが見え始めていた。
- キラはやっぱり年だね、と自虐的な笑みを零すと、コックピットから外へ出る。
- するとシャイニングフリーダムの足元には、畏まった表情で敬礼をしているレイチェル達の姿があった。
- 彼女達にとってみれば、キラは伝説とまで謳われた英雄であり、ESPEMの事務総長であるラクスの夫であり、雲の上のような存在に思っている。
- それが伝説のフリーダムに乗って現れ、噂に違わぬ力を目の前で見せたのだから、尊敬と畏怖の念も込めてキラのことを見るのは仕方の無いことだった。
- キラはその様子にまた苦笑を零すと、無重力の中をふわっと飛び降りる。
- そしてゆっくりと集まったクルー達の顔を見渡す。
- 正式な任命式も済んでいないのに、彼らはよくここまで来たと思う、というのがキラの正直な偽らざる感想だった。
- その気持ちが彼らを労い、応えるように敬礼を返す。
-
- キラが手を下ろすと、レイチェルが一歩進み出る。
- そして心底申し訳なさそうな表情で、苦しげに言葉を搾り出した。
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- 「あの、ミライ様のことでは、申し訳ありませんでした」
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- レイチェルが深々と頭を下げる。
- 既に電子文章ではミライがフリーズに乗っていることを報告している。
- それに対して、ラクスの署名で処分保留の通知も受け取っていた。
- ということは当然キラも知っているということは、簡単に予想がつく。
- おしどり夫婦としても有名だが、子供思いなことでもよく知られる人格者の彼らだ。
- きっと心配をしていたに違いない。
- それを思うと、黙ってそ知らぬ顔をしていることは、レイチェルには出来なかった。
- 心底申し訳ない気持ちで、顔を苦渋に歪ませる。
- しかし、いずれは釈明しなければならないことだとは思っていたが、突然現れたキラに対して、それ以上の言葉が浮かんでこなかった。
- エミリオンらも神妙な面持ちで、口を真一文字に結び立ち尽くしている。
- そこにザイオン達MSのパイロットも現れ、ザイオンがレイチェルの横に並んで同じく頭を下げる。
- これで許されるとは思っていないが、今偉大な英雄を前にして、その行動を取らずにはいられなかった。
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- それに対して、キラはいつもの穏やかな微笑みで制する。
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- 「報告は聞いたよ。でも君達に特に問題はないから、これ以上頭を下げないで。これまでどおりで頑張ってもらうから」
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- キラの言葉に、レイチェルはえっと驚いた顔を上げ、ザイオンも目を見開く。
- 何らかの処分を覚悟していただけに、少々肩透かしを喰らったような格好だ。
- 聞き間違いかとも思ったが、キラは微笑を湛えたまま任命書のデータが入ったメモリをザイオンに手渡す。
- どうやら本当に何の処分も課さないつもりらしい。
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- キラは驚いている彼らを他所に、パイロットスーツの一群の中にミライの姿も見とめると、無事な様子に安堵の笑みを零す。
- それはどこにでもある、娘を心配する父の姿だ。
- こちらを見ていたミライと視線がぶつかるが、その途端ミライが下を向いて視線を逸らしてしまった。
- そのミライの反応にキラは小さく口をへの字にして息を吐いて少し考えると、ザイオンの方を振り返って願い出る。
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- 「ミライと2人で話がしたいんだけど、どこか場所を貸してもらえるかな。例えば展望室とか」
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- キラの希望にザイオンとレイチェルは顔を見合わせるが、断る術も、また断る理由も見当たらなかった。
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- 「分かりました。キラ様がそう仰られるのであれば、そこをご自由にお使い下さい」
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- ザイオンがまた畏まり、ビシッと背筋を伸ばして敬礼して答える。
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- 「ありがとう。ああそれから、補給を受けている間は交代で休憩を取ってね。次の任務に取り掛かるのはそれからでいいから」
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- キラは笑顔でそう告げると、ミライを促しドックを後にする。
- ミライも少し浮かない表情で、黙ってその後に続く。
- その父娘の後姿をクルー達は呆然と見送りながら、キラのその大きな心に改めて、彼がただMSパイロットとして優れているだけでは無く、伝説の英雄と称される理由を垣間見た気がした。
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PHASE-15 「手にした力」
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- 通路の窓から星がキラキラと輝いて見える。
- 普段ならこの綺麗な光景を見て何らかの感動を覚えるのだろうが、浮かない表情のミライにはその余裕が無かった。
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- こうして父と2人きりで話をするのは何時以来だろうかと、ミライは記憶を辿る。
- 記憶の中の父はいつも優しかったが、仕事が忙しくてなかなかゆっくりと話は出来ていなかった。
- それに母ととても仲睦まじかったので、ミライの中のイメージでは2人は常にセットであり、父とだけで話をしたことはほとんど無い。
- というよりも、初めてではないかと思う。
- だから何となく、今の状況に違和感も感じるのだ。
- 父のことは大好きだし尊敬もしているが、今この状況で何を話せば良いか、また何を言われるのか、耳の奥に自分の心臓の音がハッキリと聞き取れるほどドキドキしていた。
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- と、目の前で立ち止まり、ゆっくりキラが振り返った。
- 色々考え込んでいる間に、いつの間にか目的の場所へと着いたのだ。
- ミライも展望室の手摺に捕まって止まると、些か緊張した面持ちで、キラが言葉を紡ぎ出すのを待つ。
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- 「ミライがフリーズのソフトを書き換えたんだって」
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- 怒るでもなく、静かにキラがミライに尋ねる。
- それはミライの行動を咎めるものではなく、本当に唯の確認。
- フリーズ達、ダブルエックスナンバーのソフトの開発を直接行ったのはキラではないが、そのチームを指揮したのはキラだ。
- 若干のスペックロスは感じていたことだが、システム開発の何たるかを知る彼は、人が使い易い操作性というものを重視して、当初の形でそのままインストールを承認、指示した。
- それだけに開発の責任者としては、問題点や変更点をきちんと把握しておきたいという気持ちがあった。
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- 同時にミライにそんなことが本当に出来たということは、俄かには信じ難かった。
- 確かにミライにも色々とソフトの開発手法や技術を教え、彼女自身の非凡な才能を見てきたが、初めて見たコードを一瞬で解析してそれを作り変えることは、いかに優秀なプログラマやエンジニアでも至難の業だ。
- 自分は機械工学のシステムをカレッジで学んでいた。
- しかも当時の担当教授がMSの開発に携わり、頼まれたとは言えそのデータ解析に一部目を通していたことから、自分の時は短時間でのOS変更ができたのだ。
- それを、MSのシステムロジックの予備知識も無い彼女が、ソフトウェアを作り変えてしまったと言うのは、やはりこの目で見て、耳で聞かなければ信じられない。
- 一体その内にどれだけの潜在能力を秘めているというのか。
- 尤もミライが組んだソフトは、他人には扱えないと言う、問題の無いシステムとは言い難いものではあるが。
-
- ミライはキラの問い掛けにコクリと頷くと、その時の状況を説明する。
- 父にも母にも言わずに、他の人にフリーズを使えなくして、結局勝手にケルビムに乗って遠くまで行ったことは素直に悪いと思っていた。
- しかしフリーズに乗って戦ったことは、間違っていないし仕方が無かったと、ミライは訴え掛ける。
-
- 黙ってミライの言い分を聞いていたキラだが、そんなところは似なくても良かったのに、と心の中で溜息を吐く。
- かつて自分もそうして、生まれて初めてMSに乗った。
- そして運命に翻弄されるように、戦いに飲み込まれていった。
- その中で得たものもあるし、失ったものもある。
- 過去のその自分の記憶を思い返しながら、少し胸が痛んだ。
- そして娘もまた同じ運命に巻き込まれようとしていることに、キラの心には不安が膨れ上がる。
-
- 「それで、ミライは戦って何も感じなかった?力を持つことの意味や、戦うことの虚しさを」
-
- 力を持つということは、それだけの責任と覚悟を持たなければならないということだ。
- それを理解しないまま力を振るうことは、必ずや悲劇に繋がってしまう。
- 喜んで子供を戦争に差し出す親などいない。
- それはキラ達も例外ではなく、娘に戦場に出て戦って欲しいとは思わない。
- しかしいずれは自分達の後を継いでいくであろう彼女のことを考えれば、それを一度は肌で知るべきことであるとキラは考えていた。
- だから戦場に出てしまったことを、今更責めるつもりはない。
- 心底心配はしていたが。
-
- 「それは感じました。やはり戦いは世界から無くすべきものなのだと。ですが私が出来る以上、それをやらなければケルビムの皆さんが死んでいたかも知れません。もちろん私も。だから私は戦いを選びました、守るために」
-
- ミライは毅然とした表情で答えた。
- それは間違いないことだ、と彼女の中では確信めいたものがあった。
- そうでなければ、こうして父を話をすることはできなかったかも知れないと。
-
- 「ですから父様も、今もMSに乗っておられるのでしょう」
-
- ミライはキラに問い掛けを返した。
- 父と同じ行動を、自分は取っただけだということを、強調して。
- 同時に父と同じ力を得たこと、それを発揮できたことは、小さな誇りでもあった。
-
- ミライの問い掛けを、キラは目を細めて聞いていた。
- その声のせいもあるかも知れないが、一瞬ラクスと話をしているのかと錯覚しそうになった。
- 論理立てて話を進め、反論の隙を与えない、それはラクスが政治の世界で用いる、彼女の論戦の戦術だ。
- それを間近で見てきたキラは、その凄さを知っている。
- それでいくつもの法案を通してきたのだから。
- その辺はラクス譲りなんだな、とキラは内心クスリと笑みを零す。
- 不謹慎かもしれないが、こんなところで娘の成長を実感するとは思わなかった。
- しかし笑ってばかりもいられない。
-
- 「その通りだよミライ、君の言っていることは間違ってはいない。でも、まだ見えてないものがあるみたいだね」
-
- キラが真摯な表情で肯定し、しかしミライに指摘する。
- まだ力を持つことの意味を完全には理解していないと。
-
- 想いと誇りを否定されたミライは思わず反発しそうになるが、父の含みのある言い方が気になった。
- 父には見えて、自分には見えていないものとは一体なんだろうか。
- 確かに父はこれまでもいくつもの戦場を潜り抜けてきた。
- その経験からくるものは、ミライには計り知れないものがあるだろう。
- だが回数をこなせば見えるものだとは到底思えない。
- 自分の持つ力と父の持つ力の差とは一体何なのか。
- 父は、これまでの戦場の中で何を見てきたのだろうか。
-
- 「このままフリーズのパイロットとして、しばらくケルビムに同行するといいよ。そうすればよく分かるんじゃないかな?」
-
- ミライの無言の疑問に答える代わりに、キラはゆっくりと、そう言葉を紡いだ。
- キラ自身がそれをうまく言葉にできるようなものでもないし、言葉で言って伝わるほど簡単なものではないから、やはりそれを自分の目で見て、体で感じなければ、理解できるものではないから。
- そして分かると言うよりは、分かって欲しいという願いを込めて。
-
- ミライは驚いた表情で父を見た。
- ケルビムはこれから地球に降りると聞いている。
- アフリカの砂漠地帯に起こっている内紛の争いを止めさせるため、無関係な市民を守るため、ESPEMの作戦としてその地に行くのだと。
- つまりはミライにもその場所に行って、MSパイロットとして戦い、現実を知れということだ。
- 父の口からそれを指示する言葉を聞くとは思ってもみなかった。
- 力を持つことの意味や必要性は、これまでの戦いで理解してきたつもりだ。
- 母や父が戦争を止めることを強く訴えながらどうして軍備を整えてきたのか、今ならちゃんと分かる。
- それでも父が、自分がMSのパイロットとなることを容認するとは思わなかった。
- 母とそのことで喧嘩にならないだろうか、と変な心配をしてしまう。
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- 色々な思いが頭の中を駆け巡るが、結局父の考えていることは何も分からず、ミライは探るような表情でキラを見つめ返す。
-
- 「でも無理はしちゃいけないよ。いいね」
-
- しかしキラははぐらかすようにミライの問いには答えず、相変わらずいつもの優しい笑みを返すばかりであった。
-
*
-
- バンは今までに無く荒れていた。
- セントルーズに帰るなり、心配してコックピットを覗き込んだヒューを乱暴に押し退けると、ヘルメットを投げつける。
- それは無重力空間をフワフワと漂って、やがて壁に当たって音を立てる。
- もちろんそれだけで彼の気持ちが治まることは無い。
- ブリッジへ上がってからも、彼は周囲の物に当り散らし、色々な物が音を立てて壊れていく。
- ヒューやグリムらは、溜息を吐きつつその様子を遠巻きに見つめるばかりだ。
- 他のクルー達に至っては怯えの色が滲んでいる。
-
- そこに通信が入る。
- オペレータはビクッと反応して慌てて通信を取ると、驚いた表情を浮かべた。
- それからバンの状況を横目で見て、恐る恐るナトーにどうするか伺いを立てる。
- ナトーは通信の相手を確認すると一瞬目を見開いた後、また溜息を吐きながら通信をオンにするように命じた。
-
- 「随分と荒れているようだね、バン」
-
- 通信機の向こうからは、その場の雰囲気にはおよそ似つかわしくない穏やかな男の声で、バンの行動を制する言葉が投げ掛けられる。
- SOUNDONLYと表示されたディスプレイの向こうから聞こえてくるのは、現在デュランダル派を率いるギルビット=デュラウバスの声だ。
- 彼は今、世界で最大規模とも評されるテログループの総帥として、色々と注目されている人物でもある。
- しかし誰も彼とは会ったことが無い。
- その容姿も誰にも知られていなかった。
- 外部の者のみならず、内部の者、それはバンに至るまで徹底的にだ。
- ギルビットは極端に人前に出ることを嫌い、いつも音声のみの通信で指示を出していた。
- その謎めいた正体が、一部の信者に狂信的に支持される要因にもなっている。
-
- そんなギルビットの言葉は、組織内において絶対的な重みを持つ。
- ヒューもそんなギルビットの言葉に感銘を受けて、今ここに身を投じているのだから。
- しかしそんなギルビットの言葉も、今のバンには効果が無い。
- むしろ逆効果だ。
- バンは声を荒げて、本来上官であるはずのギルビットに真っ向から噛み付く。
-
- 「これが荒れずにいられるかよ。俺は結局キラ=ヤマトに勝てなかった。産まれてからずっとその力に気付かず、怠惰を貪っていた奴にだ。俺は最高の力を持っているはずじゃなかったのかっ!」
-
- そもそもそれを言ったのはギルビット自身だ。
- まだ幼かったバンは、その言葉を信じたに過ぎない。
- その言葉を信じてそれを証明し、実感することで、自信と確信、己の存在意義を保ってきたのだ。
- そしてキラと違って、彼は正規の軍事訓練を幼い頃より受けてきた。
- キラに戦闘能力が勝ることはあっても、劣ることは無いという自負もあっただけに、ギルビットが言ったことは自分を煽てるためのものだとしたら、例え相手が上官にあたる者だとしても許さない。
- バンはギルビットに向けて怒りを込めて、同時にキラに対しても忌々しげに吠えると、拳を思い切り机に叩きつける。
- 今度はその力で机が大きくへこんだ。
- その様子からも、バンの中に渦巻く怒りや苛立ちが相当なものだと分かる。
-
- 傍らで聞いているヒューやナトー達には会話の内容が半分以上理解できなかったが、あの英雄キラ=ヤマトとバンの間には、浅からぬ因縁があることだけは分かった。
- 意味深なやりとりに、じっとバンとギルビットの会話に思わず聞き入るブリッジの一同。
-
- 怒鳴りすぎたのか、バンは肩を揺らしてゼェゼェと荒い息を吐き出し、少し大人しくなった。
- それを待ってからギルビットは静かに語りだす。
-
- 「それはキラ=ヤマトの力ではなく、フリーダムの力があったからだ」
-
- ギルビットが静かに、冷静に分析した結果をバンに諭す。
- 確かにバンの戦闘能力は、キラと同等かそれ以上のものがある。
- シミュレーションではそういう値をいつも叩き出していた。
- しかし機体の性能差、核エネルギーでほぼ無限に動ける機体とバッテリーエネルギーで制限時間のある機体では、戦いを五分以上に持っていくのは至難の業だ。
- トリッキーな戦術の取れる機体、例えば過去唯一フリーダムを撃墜したことがあるインパルスのような分離合体能力を持つ機体か、同等のエネルギーを持つ機体でなければ。
- だがそれを差し引いても、バンはキラに負けたことが我慢ならなかった。
- そんなことは関係ない、とまた声を荒げる。
- バンの返事に音声通信の向こうで苦笑する息遣いが聞こえてくるが、ギルビットは一つ咳払いをすると、気を取り直して明るい声で言葉を続ける。
-
- 「君に新しい機体を送った。フリーダムにもひけをとらない、いや、フリーダムを上回る機体だ」
-
- 工廠に作らせていたものがようやくできたんだ、とまるで夏休みの工作でも完成させた無邪気な子供の様にギルビットは笑い声が響く。
- これにはさすがにバンも勢いを削がれ、ギルビットの言葉に聞き耳を立てる。
-
- 「これこそ君が持つに相応しい剣だ。これを持つことで、君は本当に最高の力を手にして発揮できる」
-
- ギルビットはバンの心境を知ってか、自信満々といった感じで高らかに宣言する。
- だがそれは同時に、その力を持って、次はキラに勝てという意味も含まれている。
-
- 「後は君次第だ。検討を祈るよ」
-
- それだけ言うと通信が切れた。
-
- ざわざわとどよめく周囲を余所に、バンは怒りと戸惑いが入り混じった表情で、ギルビットの言葉を黙って頭の中で繰り返す。
- 彼は自分に相応しい最高の力を送ったと言った。
- それを持つことで、最高の力を発揮できると。
- もしそれが本当ならば、自分は今度こそキラ=ヤマトをこの世から抹殺することができる。
- ギルビットの言葉の裏に込められた意味も理解しているバンは、上等だと口の中で呟く。
-
- しばらくするとレーダーに接近する船影がある、とオペレータから報告があった。
- 同時にあるデータが送られてくる。
- そこには新型MSのフォルムとスペックデータ等々が記載されていた。
- バンはそれを不機嫌そうに受け取って、口元を歪めて読んでいたが、ページを進める手がピタリと止まったかと思うと、肩を震わせてクックッと喉の奥で笑いを堪え出す。
- 話を聞いてもどこか懐疑的だったバンだが、データを読むなりすぐにその気持ちを撤回した。
- そしてとうとう耐え切れなくなり、バンは大きな声を立てて、笑い始めた。
-
- 「あーははははは、そうか、これが俺の新しい力か。そうだ、これは俺にこそ相応しい」
-
- これでキラ=ヤマトを抹殺できる、と狂ったように笑い続ける。
- その姿を、周囲の者達はただ呆然と見つめることしかできなかった。
- 仮面に覆われて表情はよく分からなかったが、ヒューにはその下に狂気の笑みを見た気がした。
-
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