- バンはフットペダルを踏み込んで加速すると、部下達を引き離して脇目も振らずに、一直線にランサープリッツと交戦しているシャイニングフリーダムを目指した。
- 彼の頭にはキラを打ち負かすことしか頭に無い。
- それを分かっているヒュ−達はその背を諦めたように見送り、自分達は地球軍のMSと交戦を始める。
- 彼らの目的もまたESPEMの部隊だが、こうも地球軍の数が多く入り乱れては目的の相手がどこにいるのか分からない。
- そのため障害物は取り除いてしまおうという考えだった。
- これにより宙域は、3軍入り乱れての混戦状態へと突入した。
-
- 単機で深く戦闘の真っ只中に入り込んだバンはと言うと、銃口を向けて前に立ちはだかったウィンダムウェーブに見向きもせず、無造作にマルチロックシステムを起動させると背中のリフレクターに備わったドラグーンからビームを放つ。
- それはまるで後光が伸びるかのように機体の円周上に真っ直ぐ伸び、迫っていたウィンダムウェーブを破壊する。
- 鉄屑と化したそれらを蹴散らすように、真新しい輝きを放つボディーで弾いて突き進む。
- そしてモニタにハッキリとシャイニングフリーダムの姿を捉えると、口の端を持ち上げる。
-
- 「当たれよ」
-
- すかさずそう言って、アポカリプスの背中のリフレクターを大きく開くと、ドラグーンをパージする。
- そしてシャイニングフリーダムとランサープリッツを取り囲み、一斉に閃光を放った。
-
- アポカリプスの攻撃に気が付いたキラはくっと呻き声を漏らし、接近したランサープリッツの胴体に蹴りを入れて、その反動で機体を大きく後退させて回避する。
- しかし四方から襲い掛かるビームの雨は、シャイニングフリーダムの動きを追い掛けるように降り注ぐ。
- 堪らずキラもドラグーンを起動し、ビームの膜を作って攻撃を防ぐ。
- キラはランサープリッツとの戦闘に集中しすぎた自分に舌打ちをして、攻撃を仕掛けてきた相手を探す。
- そして見つけた時、思わず息を飲んだ。
- 機体のフォルム、そしてパイロットから発せられる不思議な感覚が、20年前の戦いを思い起こさせる。
- 己自身の命すら見つけられず、激しい憎しみを世界に撒き散らして儚い命を散らせた、悲しい人達の心の闇を。
- まるでそんな彼らと再び相対したような、そんな感覚さえ甦ってくる。
- それがプレッシャーとなってキラを押し潰そうとしていた。
-
- だが押されてばかりではない。
- キラもドラグーンの先端をアポカリプスの方に向けると、プレッシャーを跳ね除けるように気合を込めてビームを発射する。
- バンはフットペダルを踏み込み、機体を錐揉みさせて回避する。
- キラは内心でアポカリプスの動きに舌を巻くが、自分もフットペダルを踏み込んでスピードについていく。
-
- 突然やってきた機体がシャイニングフリーダムと戦闘を始めたことに、またキラがそちらの相手を優先させたことにフォルエンスはお楽しみを邪魔されたと腹を立てる。
-
- 「おいおい、何なんだお前は。フリーダムは俺の獲物だ!」
-
- そう唸ると、ランサープリッツの左腕からランサーダートが、シャイニングフリーダムとアポカリプス目掛けて放たれる。
- その攻撃はキラにもバンにも、しっかりと捉えられていた。
- ビームサーベルを振るい、或いはビームライフルを撃ち、ランサーダートを破壊して攻撃をかわす。
- それを見たフォルエンスは舌打ちして、アポカリプスに斬りかかる。
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- 一方のバンもキラとの戦いの邪魔をされたことに怒りを覚え、シャイニングフリーダムに牽制のライフルを放つと一旦距離を取り、ランサープリッツに向き合う。
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- 「雑魚に用は無い。失せろ」
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- ただバンの怒りはフォルエンスと違って、お楽しみを邪魔されたからではない。
- バンにとっては己の尊厳と存在意義を掛けた聖なる戦いだ。
- それを汚されたという思いに、純粋な怒りが満ちていく。
- その怒りに呼応するようにランサープリッツを取り囲むように広がったドラグーンから、一斉にビームが放たれる。
- それは宇宙に降り注ぐ光の雨のように、幾筋ものビームがランサープリッツを襲った。
- フォルエンスの目には突然何も無い空間からビームが発射されたように見え、まともに攻撃を喰らってしまう。
- 辛うじてシールドを掲げてコックピットへの直撃は防いだものの、頭部や脚部は失われ、全身に焼け焦げたような後が付き、機体は見るも無残な状態へ変貌を遂げた。
- 明らかに戦闘続行は不可能だった。
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- 相手がボロボロになったこと以上の興味を示さなかったバンは、トドメを刺すことも考えずに、返す刀にドラグーンの銃口をシャイニングフリーダムへと向ける。
- キラはその気配を瞬時に察すると、シャイニングフリーダムは器用に機体を捻り、光の筋の間をすり抜けるようにアポカリプスの攻撃を避けていく。
- その合間に足首のヴェスバーを放ち、アポカリプスを狙い撃つ。
- 今度はバンが呻き声を漏らして、機体を上昇させて回避する。
- 思い通りにいかない戦いにバンは歯噛みする。
- 最高の力を手に入れたはずなのに、それでもキラに押されている事実に、バンの心にはさらなる怒りと苛立ちがブリザードのように吹き荒れる。
-
- あんな何も知らない、怠惰を重ねただけの男が、最高のコーディネータなどと認めない。
- 俺こそが本当の最高のコーディネータだ!
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- バンはそう強く自分に言い聞かせた。
- その瞬間、体の奥底で何かが弾けたような音が聞こえた気がした。
- その直後から目の前の光景がまるでスローモーションのようにクリアに見える。
- 突然の感覚に戸惑うバン。
- しかし体は考えるよりも速く反応し、シャイニングフリーダムが放つ攻撃を鮮やかにかわしていく。
- 1つ2つと、まるで全ての細胞隅々にまで自らの意思が働いているかのような躍動感が漲っていくる。
- そしてシャイニングフリーダムの動きが、手に取るようにハッキリと見える。
- それがバンの感覚を戸惑いから自信へと変えていく。
- これならいけるとバンの意識は大きく広がり、それでいてシャイニングフリーダムの一挙手一投足をしっかりと捉えていた。
- さらに不殺を貫きコックピットを避けた場所しか狙わないキラの攻撃は、今のバンにとってかわすことは造作もないことだった。
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- 「そんな甘い攻撃で俺を倒せると思うな!」
-
- 一段と低い声で唸り、全ての火気を一斉にシャイニングフリーダム目掛けて放った。
- キラも負けじと全ての武器の砲火を放ち、それらは2機の中央でぶつかり合い、激しい爆発を起こす。
- その炎が治まる間もなく、2機はビームサーベルを抜いて接近すると激しく鍔迫り合っては、かと思うと次の瞬間には離れてライフルで撃ち合っている。
-
- そのあまりにもハイレベルな攻防を見ながら、何とか味方に回収されたフォルエンスはポツリと呟くことしかできなかった。
-
- 「何なんだ、お前らは・・・」
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PHASE-18 「英雄死す」
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-
- ザイオン達はケルビムの周りに纏わりついていたウィンダムウェーブを撃墜すると、キラの援護に向かおうと動き出す。
- しかしその前に新たな敵が出現したことに、戸惑いを隠せなかった。
- しかもあちらも地球軍と交戦状態に入っている。
- 最早誰が敵で誰が味方なのか、3軍入り乱れて把握できない。
-
- 「キラさんは?地球軍の動きはどうなっている?」
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- ザイオンは必死にレーダーを探るが、障害物が多くてよく分からない。
- ケルビムのブリッジでも同じことだった。
- エミリオンも必死に状況を語ろうとするが、目まぐるしく動く地球軍とバン達の部隊にとてもついていけない。
- 何かを言いかけてはそれを飲み込むということを数度繰り返していた。
-
- 「くそっ!これだけ混戦してりゃ誰が誰だか分からない」
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- エデュー忌々しげにレーダに表示される無数のMSを示す点を見て、愚痴を零す。
- これではレーダは役に立たない。
- 敵味方の判断をつけるのに己の目視だけが頼りだ。
-
- 「頼むから間違って当てんといてや」
-
- ジローはエデューのボヤキに軽く冗談を言いながら、目ざとくライジンの機影を認めると一目散にその方角へと加速する。
- しかしその間にウィンダムウェーブやAPSザクVが割り込み、攻撃を仕掛けてくる。
- 或いはその両機が、目の前で撃ち合い進路を阻む。
- またあらぬ方向から狙いの外れた流れ弾のビームが機体をかすめて飛んでいき、ハッキリ言って生きた心地がしない。
- それは他のパイロットも同じ気持ちだった。
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- 「機体が、重い」
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- リュウがくぐもった声で漏らす。
- ウィンダムウェーブの攻撃を回避するためにフットペダルの踏み込んだが、機体の動きにいつもとは違う違和感を感じていた。
- 地球に近いため重力が機体にも働いて、それがMSの動きに制約を掛けているのだ。
-
- 「各機、重力に引っ張られるなよ。地球に落ちるぞ」
-
- ザイオンも僅かに鈍る機体の動きに、自分にも言い聞かせるように、仲間達に注意を促した。
-
- 「父様!」
-
- そんな中、ミライはようやく発見したキラの元へ必死に近づこうと試みていた。
- そこに辿り着くまでの道のりは地球軍とバンの率いる強襲部隊が入り乱れて戦闘していて、果てしなく険しいもののように思える。
- それでもその先に父が居るのならば、行かねばならないと意を決してその中を突き進む。
- 目の前に割り込んだAPSザクVをライフル1発で頭を撃ち抜き、斬りかかってきたウィンダムウェーブはその腕を切り落とし、ビームやミサイルの雨の中を掻い潜ってようやくアポカリプスが射程に捉えられるところまで近づいた。
- そこではシャイニングフリーダムが、アポカリプスの攻撃から逃れるように機体を捻っていた。
- 父が伝説のフリーダムのパイロットである以上、負けるはずは無いと思いつつも手を出さずにはいられなかった。
-
- 「このっ!」
-
- ミライはライフルを構えるとアポカリプス目掛けて引き金を引く。
- しかしバンは難なくその攻撃をかわす。
- 今のバンには全ての攻撃がスローモーションのように見えていた。
-
- 「邪魔だ、消えろ」
-
- またくだらない横槍に戦いを邪魔されたと怒りを覚えるが、フリーズ自体には対して興味なさげに一瞥すると、抑揚の無い声でそれはまさに命令するように呟いた。
- その声に反応するように、アポカリプスのドラグーンはフリーズに狙いを定めて銃口の方向を変える。
- ミライは回避行動を取る間も無いまま、ドラグーンのビームをまともに喰らった。
- 否、喰らったはずだったが、衝撃を予想してコックピットの中でギュッと目を瞑り、縮こまったミライは衝撃がいつまでもこないことに恐る恐る目を開けて前を見た。
- そこにはシャイニングフリーダムの背中が頼もしくあった。
- 思わず安堵の息を吐くミライ。
- しかしそれは間違いだったとすぐに気がつき、愛らしい顔を驚きと苦痛に歪めた。
-
- アポカリプスの動きに気が付いたキラは、ミライを守ろうとフリーズの前に自らの機体を盾にして割り込んだ。
- 間一髪、フリーズに直撃する前にそれは出来た。
- しかしシールドで攻撃を防ぐのは遅れ、シャイニングフリーダムへのダメージは決して小さくなかった。
- 左の足首はヴェスバーもろとも吹き飛び、左腕は焦げた跡があって漏電の光も見える。
- キラは確認で動かして見るがその動きは明らかに鈍く、ビームシールドの出力は上がらない。
- どうやら回線がどこか切断されたらしい。
-
- 「父様、大丈夫ですか!?」
-
- シャイニングフリーダムのその様子を見てミライは悲壮な声を上げるが、キラは厳しい口調で制しアポカリプス目掛けて加速する。
- これまでも相手を見くびったことは無いが、今回ばかりは本気で負けるかも知れないという考えが頭を過ぎった。
- MSの操縦をしながら久しぶりにそんなことを思った自分に驚きながらも、頭は冷静に状況を捉えていた。
- いずれにしても、この強敵を前に誰かが近くにいることはその人を巻き添えにする可能性があった。
- それを恐れたキラは、自分一人で相対することを決意した。
- これ以上愛娘を危険に晒さないためにも。
-
- 「来るな!離れているんだ!」
-
- 初めて聞く父の怒鳴り声に、ミライはビクッと方を震わせて機体の動きを止める。
- 自分が父の助けになろうとしたのに、逆に足を引っ張ってしまったという事実もありショックを隠せない。
- ただ光の尾を引いて螺旋を描く2機の動きを、目で追いかけることしかできなかった。
-
- キラは呻き声を上げながら、力いっぱい操縦桿を引いた。
- しかし満身創痍の機体ではいつもの機動力を引き出せない。
- 回避行動がままならないまま、より正確に、より早くなっていくアポカリプスの攻撃に、次第に防戦一方に追い詰められていく。
-
- バンもシャイニングフリーダムの動きが鈍ったことを分かっていた。
- 余計な邪魔が入ってのことに多少の不満はあるが、それで攻撃の手を緩めるほどフェミニストでもない。
- 腕に構えられたライフルからの射撃も、腹部からのビーム砲も、容赦なくシャイニングフリーダムを襲う。
-
- 「何故君はそこまでしつこく僕を狙う!?」
-
- 激しい砲火に晒され、揺れるコックピットの中で、キラは再びバンに尋ねた。
- 彼自身にはこれほどの憎しみをぶつけられる覚えが無い。
-
- 対照的にバンはキラの言葉に、心の奥からふつふつと新たな怒りが湧いてくるのを感じる。
- この能天気な男が、何も知らずに育った男が、最高のコーディネータだという事実が胸の中に溜まっている衝動を駆り立てるのだ。
-
- 「知れたことを!貴様が唯一の最高のコーディネータ、そのオリジナルだからだろうが!!」
-
- 辛い過去を吐露する悲鳴のようにも聞こえるバンの叫びは、キラに大きな衝撃を与えた。
- 20年前の戦争で、自分という存在を巡る戦いは終わったものだとばかり思っていた。
- しかし目の前の相手は、また自分が最高のコーディネータという理由で攻撃するのだと叫んだ。
- どこか聞き覚えのあるような声で。
- 思わず反撃を躊躇してしまう。
-
- しかしバンはキラの心境など知らず、溢れる怒りをぶつけるように、ビームサーベルを振り被って加速する。
- 斬りかかるアポカリプスの攻撃にキラは何とか反応して回避を試みるが、機体の方がキラの反応についてこれなかった。
- 僅かに逃げ遅れた形になった左腕が肩から切り落とされる。
-
- キラは咄嗟に右手にビームサーベルを逆手に持って振り上げる。
- それでいくつかのドラグーン基を破壊することには成功したが、致命的なダメージではない。
- しかも機体は伸びきった形で、無防備に近い状態になってしまった。
- キラはしまったという表情を浮かべる。
-
- バンはその隙を逃さず、シャイニングフリーダムの胴体に蹴りを入れて体勢を崩すと、腹部のビーム砲を放つ。
- 体勢を崩されたキラは、回避行動を取ることができない。
- 咄嗟にビームシールドをかざして、防御する。
- しかし片腕をもがれ、シールドを1つ失ったシャイニングフリーダムでは攻撃を受け止めきれなかった。
- コックピットへの直撃は辛うじて防いだが、今度は攻撃を受け止めた右腕が言うことを聞かなくなった。
- いよいよ追い詰められたキラ。
-
- 「これで終わりだ、キラ=ヤマト」
-
- そんなシャイニングフリーダムに、バンは油断無く慎重に狙いを定めながら、しかし勝利を確信して引き金を引いた。
- キラは回避が不可能と判断すると反撃に転じて、武器を破壊して攻撃を出来なくする手段を取った。
- ドラグーンをアポカリプス目掛けて発射する。
- そこから放たれた光は、アポカリプスの腕や足を捉え、破壊することに成功した。
- しかしアポカリプスがライフルを撃つ方が、僅かに早かった。
- ライフルから伸びる光は、真っ直ぐにシャイニングフリーダムに向かう。
-
- 目の前に迫る光に、キラは予想される未来を呆然と受け入れた。
- 死ぬことに対する恐怖は無い。
- ただ気がかりなのは、愛する妻と子供達を残して志半ばで逝ってしまうことだけだ。
- 光に包まれる直前、キラは自分が一番好きなラクスの笑顔を思い浮かべた。
- ゴメンねと、呟きながら。
-
- 次の瞬間、シャイニングフリーダムのコックピットを一筋の光が貫いた。
- 反動で後ろに弾かれるように機体は流れ、その四肢は力なく前に突き出される。
- ボロボロの機体の目からは光が消え、スラスターの光も、フェイズシフトの色も、ロウソクの炎が消えるように落ちた。
- まるで命の火が消えてしまったかのように。
-
- 「父様!?・・・父様!!」
-
- シャイニングフリーダムがビームに貫かれる瞬間を、まるでスローモーションの映像を見せられるような感覚で、目の当たりにしたミライは最初その出来事を理解できなかった。
- しばし呆然とした後、シャイニングフリーダムの光という光が落ちたことに、ほとんど衝動的に次の行動に移り幾度も上ずった声でキラに通信を送る。
- しかしキラからの返事は無く、返ってくるのはノイズ音ばかりだ。
- そしてズタボロのシャイニングフリーダムは力なく宇宙を漂い、ミライからどんどん遠ざかる。
- ほとんど無意識に、ミライはキラの救出へと向かおうとした。
- だがミライの手はまだ遥か遠くの空間を虚しく薙いだ時、光が一瞬シャイニングフリーダムに収束した。
- かと思うと、眩いばかりの閃光がまるでもう1つ太陽が昇ったかのように、闇に染まる宇宙を照らし出す。
- それは核の光だ。
- シャイニングフリーダムの核エネルギーが暴走し、爆発を起こしたのだ。
- その禍々しい光が治まった後には、シャイニングフリーダムの影も形も見当たらない。
- まるで初めから何も無かったかのような闇が、ただただ広がっていた。
-
- アポカリプスも左腕の肘から先と、右手首、右足の膝下は吹き飛び、背中のリフレクターも左半分以上失われ、ボロボロの状態だ。
- だがシャイニングフリーダムは粉々に跡形も無く爆散したのに比べれば、ダメージは少ないと言えるだろう。
- 内容はどうあれ、バンは勝ち残ったのだ。
- 核の光が弾けたのを見て、バンは何かを堪えるように俯いて肩を震わせていたが、ついには狂ったように、甲高い声を上げて笑い出す。
- 長く待ち望んだ瞬間に、バンは喜びを爆発させた。
- まあ、元はオリジナルだしそのくらいの実力はあるかと、アポカリプスを大破させられたことに、勝者の余裕とでも言える妙に納得した気持ちも湧いてきた。
- その後到達した核爆発の衝撃波を受けても、それはさらに勝利を確信させるばかりで、高笑いはいつまでも止まらなかった。
-
- 核の衝撃はミライの元へも届いた。
- それはバンとは対照的に、キラの敗北を実感させるのに充分だった。
- あまりのショックに呆然とチラチラと残る光を見つめ、その衝撃波を防ぐことも耐えることも出来ず、まともに吹き飛ばされフリーズはくるくると宇宙を漂う。
- 揺れるコックピットの中で父との思い出が鮮やかすぎるほど思い出され、瞳からは涙が止まらなかった。
- 自分を庇ったために機体にダメージを負い、不利な状況での戦闘を余儀なくされたことが父の命を奪ったのだと思うと、とても居た堪れなかった。
- ミライは自分を責め、その心には少女が抱えるにはあまりにも大きな傷が刻まれる。
- 最後に父を呼ぶ叫びは、悲痛に満ちていた。
-
- 「父様ーーーーーっ!!」
-
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