- コンコン、と扉をノックする音が小さく響く。
- エミリオンはしばらく扉の前で返事を待ったが、それが無いのに溜息を吐くと勝手に開けて部屋に入る。
- ここは医務室で、備え付けられたベッドにはミライが横たわっている。
- しかし彼女は怪我をしているわけでも、眠っているわけではない。
- 目は開けられ、ボーっと天井を見つめている。
- だがその瞳の焦点は合っておらず、天井を本当に見ているかはどうかは定かではない。
- またエミリオンが入ってきたことに反応もしない。
- そのことに少し辛そうに眉を寄せるが、そんな表情ではいけないとぶんぶん頭を振る。
-
- 「気分はいかがですか?」
-
- エミリオンが努めて明るい笑顔を見せながら、手にした水を差し出す。
- 声を掛けられようやく彼女の存在に気がついたミライは、のっそりと上半身を起こし、憔悴しきった顔に痛々しい笑顔を浮かべて大丈夫ですと応える。
- それからコップを両手で受け取って、口に運ぶと一口だけ喉を通す。
- しかしすぐにお腹の前に手は下ろされ、ミライは俯いてまた何も喋らなくなった。
- その様子は見ていて居た堪れない。
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- 大気圏突入時の熱のためにコックピットの中で気を失ったミライだったが、ケルビムが大気圏を抜けたと同時に飛び出したエデューによって何とか収容された。
- 結局3日間も眠り込んだ後、今朝方ようやく目を覚ましたのだ。
- 尤も、眠り込んでいたのは単に体調を崩したからではない。
- 精神的なショックが現実を受け入れられず、一時的に覚醒を拒否した状態なのだと医師は説明した。
- それに思い当たる節のある彼女らは気まずそうに押し黙って、お互いの顔を見合わせるしかなかった。
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- ミライが目を覚ました後検査を行ったが、どこか怪我をした箇所というのは無かった。
- ただ体温が通常より高い状態が続いていたために念のため医務室で治療と休養を取ることになったのだが、それも今は治まっている。
- しかし体の方はもう何とも無いだろうが、心の方は大いに問題あるのが一目見ただけでも分かる。
- 医師の質問にも、心ここにあらずといった感じで反応は薄かった。
- まあ目の前で慕っていた父親の死を見せられては、ショックを受けるなと言う方が無理と言うものだ。
- 医師の診察が終わった後も結局こうしてボーっと天井を眺めて、もう半日以上が無為に過ぎていた。
- 心の傷は回復に時間が掛かる。
- 今はゆっくり休ませることしか、彼女らにできることはなかった。
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- 突然ミライはゆっくりとベッドから足を出して、立ち上がった。
- エミリオンはミライの行動を慌てて制する。
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- 「ダメですよ。まだ寝ておられた方が・・・」
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- しかしミライはエミリオンの言葉を遮って、首を横に振る。
- その表情には力の無い笑みが浮かんでいる。
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- 「いいえ、いつまでも寝ていては、父様に叱られてしまいますわ」
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- そう言って、昔朝なかなか起きなかった自分を起こしに来た父に優しく叱られたことを思い出して、その表情が一瞬強張る。
- しかしすぐに何事も無かったかのように、エミリオンの横を擦り抜ける。
- キラがMIAになったという事実を受け入れられていないわけではない。
- ただ自分のせいだという自責の念に駆られているミライは、何とかキラの死から目を逸らさずにいようと彼女なりに考えて、敢えてそういう言葉を使ったのだ。
- 父のことを忘れないように、己の行動を反省するために。
- 弱々しい表情とは裏腹に、ミライの心にはそのことが強く決意されていた。
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- そんな決意など知らぬエミリオンには、フラフラと医務室を出て行くミライの後姿を見るのは辛すぎて、ぶわっと涙が溢れてきた。
- どう見てもショックがアリアリなのに、ミライは気丈にもそれを見せまいとしている。
- それは他者から見ている方が、ずっと胸が痛くて辛いことだ。
- でもミライがそんな時だからこそちゃんと周囲が笑顔で励ましてやらねばならないと、エミリオンは自分に言い聞かせる。
- 拳を握って涙をゴシゴシと拭い取ると、ミライを小走りに追い掛けた。
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PHASE-20 「悲しみの旋律」
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- その頃ザイオンとレイチェルは今後の行動について、地図と睨めっこしながら話し合っていた。
- ミライのことを放っておけず、助けるためには仕方のないことだとは分かっているのだが、こうして目的の降下ポイントからズレたのは何とも痛い話だ。
- 本当であればアフリカ大陸の南側の海上に降下する予定だった。
- しかしフリーズの降下ポイントに合わせるために船体を寄せたことで、同じ大陸の北端の砂漠の上に不時着した格好となってしまった。
- このままじっとしていても仕方が無いので移動したいのもやまやまだが、そうも簡単にいかないのが現状だ。
- 地球に降りてからのニュースでは、やはりケルビムが地球に降下したことが話題となっていた。
- 批判の声や擁護する声が、様々な評論家の間で飛び交っている。
- また先の宣言についてESPEMと地球連邦の理事国首脳らとの交渉は続いているが、ケルビムのことで明らかにESPEMは不利な状況に立たされている。
- また降下前にザイオン達がキラから受けた任務の内容は、この地域のテロを制圧して内乱を止めることだったのだが、今となってはそれも無効になっている。
- ケルビムの到着を待っていたはずの部隊も任務に色々と支障をきたしていると思われるが、連絡が取れないのでは確認のしようも無い。
- ともかく一度ESPEMの事務所本部に戻りたいところだが、ここから宇宙へ飛び立つことは不可能だ。
- かと言ってそれを手助けしてくれる者もいない。
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- さらには地球連邦はケルビムを明らかに敵視して、監視を行っている。
- 特に海洋上は監視下に置かれていて、地球軍の艦隊がウロウロしているのだ。
- 大陸内にはテロ組織などが点在しており、援護の補給も受けられるかどうか分からない状況では、そちらに見つかって戦闘になるのも危険なことだ。
- ケルビムはまさに孤立無援、八方塞りの状態だった。
-
- その状況を再認識すると結局良い案は浮かばずに、ザイオンは机に肘をついて頭を抱え込み盛大な溜息を吐いた。
- 任命式の時からずっとこんな無理難題にぶつかってばかりだ。
- やはり自分は隊長に向いていないのではないかとか、疫病神に取り付かれているのではないかとか、色々と余計なことまで考えてしまっている。
- そんなことを考え出すと、現状を打破する策を考えることから次第に思考が脱線していく。
-
- これだけ独断的に行動してしまっては自分の首ではいくらあっても足りないだろうと自嘲し、これからどうなるのかということを不安にも思う。
- 別に罰せられることを恐れてはいないが、こんな隊長に就く事になったクルー達を思うと申し訳ない気持ちになる。
- それに自分を信じて送り出してくれた友人や家族達、それにラクス達の期待に応えられていないことを思うと戻れない方が良いかもなどと考えてしまう。
- そのまま思考は現状打破ではなく、親しい者達に対する思いの方へと脱線していく。
- ついにはヒカリ達は今の俺を見たらどう思うかなあ、と想いを寄せる幼馴染のことに思いを馳せていた。
-
- それに気付かないレイチェルも頭の中では同じように思考が脱線し、ザイオンに呼応するように大きく息を吐いてもう一度地図を見返す。
- 見れば見るほど気が重くなる一方だが、移動する先はこの中から探さねばならないので仕方がない。
- 地球降下前にはそれまでの行動の罪状は無しと言い渡されているが、その後に地球軍と交戦、独断での地球降下をしただけに、今度こそ首になったくらいでは取り返しのつかないつかないくらい罪状が付いていると思っていいだろう。
- ならばその上に1つや2つ罪状が付いたとしても大した違いではない。
- レイチェルはそう開き直って踏ん切りをつけると、1つの案を提示した。
-
- 「やはり砂漠を突っ切って当初の予定通り、オーブ方と交渉してみるしかないですね」
-
- そう言って、ケルビムが通ることになるルートを指でつつーっとなぞる。
- ザイオンはレイチェルに話しかけられて思考の旅から戻ってくると、渋い表情でその指が動く先をじっと見つめる。
-
- ケルビムは任務完了後オーブのマスドライバーを借りて宇宙に戻る、当初はそうゆう予定になっていた。
- オーブは地球連邦に加盟せず中立の立場を貫き、ESPEMの活動にも非常に協力的だ。
- また代表首長であるカガリはキラと兄弟であり、ラクスとは親友であるというのは知られている事実だ。
- それにラクスと並び称される偉大な為政者だ。
- キラがMIAになったことをどう取られているかは分からないが、地球連邦のお偉方のような短絡的な行動や判断は取らないと思われる。
- どの道地球軍のマスドライバーは借りられないのだから、それが最善の策に思える。
-
- 後はオーブに向かうには、どうあってもこの大陸の南東の海上を行かねばならない。
- そこは地球軍の管轄下にあり、見つからずに進むことは不可能だ。
- またそのルートに出るためには、大陸を沿岸沿いに迂回するか、砂漠を突っ切っていくしかない。
- 砂漠を進むということは、途中内乱を引き起こしているテロと遭遇することも意味する。
- しかしこのままじっとしていてもどうにもならないのだから、そのリスクを覚悟で砂漠を進もうというのだ。
- 地球軍と戦闘になるよりは、テロとやった方がまだやりやすいという判断があってのことで。
- またESPEMの部隊と運良く合流できるかも知れない。
- そうなれば今よりも少しは状況は好転するだろう、という希望的観測も含まれていた。
-
- 「そうだな・・・」
-
- 言いながらザイオンはしかし他に妙案が浮かぶわけでもないので、レイチェルの案を実行する方向で腹を決めていた。
-
*
-
- ザイオン達が今後の予定について頭を悩ませている頃、エデューとジロー、リュウは食堂でくつろいでいた。
- もう4日もこうして何もせずにじっとしているのだから、特にパイロットとしては、自分の機体のメンテナンス以外に出来ることはあまりない。
- 暇を持て余してこうして食堂に屯しているのは、もう見慣れた光景だった。
-
- と言っても、その表情は晴れやかにリラックスしたものではない。
- 先行きが全く見えない状況に何とか不安を押し殺している、と言った感じだ。
- 現に顔を突き合わせているが誰も一言も言葉を発していない。
- お互いに不安を煽らないように、視線も合わせずに押し黙っている。
-
- そこにミライがフラフラと入ってくる。
- 人の入る気配に顔を上げたリュウが、その人物を認めると驚いた表情で固まる。
- リュウの様子に気がついたエデュー達も何事かとそちらを振り返り、驚いた表情でミライを見つめる。
- しかし当のミライは振り返られたことに全く気付いた様子もなく、ゆっくりと椅子の間を奥へと進む。
- 他に数人いたクルー達も、会話を中断して弾かれたようにミライの方を向き、それからそわそわして視線を逸らす。
- ただでさえキラとラクスの娘ということで接しにくかったのに、目の前で父を失った傷心の彼女と、誰もがどのように接すれば良いか分からないでいた。
- であるから、エミリオン以外は誰も医務室に近づこうとはしなかった。
- それがあちらから目の前に現れたものだから、心の準備の出来ていない彼らは触れないようにするのが一番だという結論を導き出していた。
- 何事も無かったかのように、再び元の姿勢に戻って務めて明るい声で談笑を再開する。
-
- ミライはそんな彼らの様子に気付く様子もない。
- 俯き加減で、視線がどこを向いているのか分からない。
- エミリオンが心配そうに付き添っているが、歩く姿もどこか心許ない。
- そんな様子にエデューは心配になって、堪らず声を掛ける。
-
- 「まだ休んでいた方がいいんじゃないのか?」
-
- しかしミライは、何とか笑顔を作ると、大丈夫ですと応える。
-
- 「ずっと眠っていたので少しお腹が空きました。何か頂こうと思いまして」
-
- それは笑っているようにも見えたが、同時に泣いているようにも見える。
- その壊れそうな儚い笑顔に、一瞬ドキッと心臓が跳ね上がったエデューは必死に心臓を宥めて、そうかとだけ言葉を搾り出す。
- 不覚にも綺麗だと思ってしまった自分を心の中で叱責して、ふいとソッポを向いた。
- 微妙に頬も赤く染まっているが、幸い周囲の注目はミライに集まっているため、彼の変化に気付いた者はいない。
- それを確認すると、ホッと溜息を吐いた。
-
- 「まあ美味しいもんでも食えば、ちょっとは元気も出るやろ。しっかり食うてください」
-
- ジローは明るい口調でミライを励ました。
- リュウも同調して、ギコチナイ笑顔で手近な席に座るように促す。
- その励ましを受けて、ミライはありがとうございますと首を少しだけ傾げて足を止めた。
- しかしなかなか次の行動に移ろうとしない。
- 椅子を見つめたまま、じっと佇んでいる。
- そこにミライの後を追って入ってきたエミリオンが、見かねて肩を押して席に座らせると、食事のトレイを取ってきてミライの前に置く。
- ミライはまたありがとうございますと呟いたが、お腹が空いたという割にはそれに手をつけようとしない。
-
- その様子がまたエデュー達の表情を暗くする。
- 彼らにもキラが負けたということは未だに信じられない、信じたくない事実だ。
- 伝説のパイロットとMSとして憧れていただけに、信じていたものが足元から音を立てて崩れたような衝撃がある。
- その娘であるミライのショックは、相当なものだろうと察して余りある。
- 結局重苦しい空気だけが彼らを取り巻いていた。
-
*
-
- 月面にあるESPEMの事務所。
- ラクスはいつものように精力的に仕事をこなしていた。
- 事務総長室の席に座って資料に目を通してはサインをしていく、と言う至って単純な作業ではあるがその量は半端ではない。
- プラントの議長時代もそうだったが、組織のトップに立つ者の前にはどうしてこんなにも膨大資料が立ちはだかるのだろうかと、本気で悩んだこともある。
- しかし愚痴を零して手を抜いたりする性格でもない彼女は、いつものように黙々と仕事に取り組んでいた。
- ようやく半分ほどの資料に目を通し終えたラクスは、少し凝った肩を解そうと手を頭の上に突き出してう〜んと伸びをした。
-
- そこに事務官の1人が慌しく駆け込んでくる。
- 大きく肩で息を膝に手をついていることから、相当急いで走ってきたのだろう。
- ラクスは席を立ち上がると、膝をついてハアハア言っている事務官の背中を擦り大丈夫ですかと気遣う。
- 事務官はありがとうございます、と息絶え絶えに応えた後、少し時間を掛けて息を整えた。
-
- ようやく呼吸が整うと、落ち着いて聞いてください、と前置きした上で、その事務官も覚悟を決めたように大きく息を吸い込むと、ゆっくりとラクスに報告を伝える。
-
- 「キラ様が、戦闘の最中、MIAと認定されたということです。その・・・、シャイニングフリーダムは大破、核の光も確認されたということ、です」
-
- 最後の方は搾り出すように、言葉を紡いだ。
-
- ラクスは一瞬、事務官が何を言っているのか理解できなかった。
- キラのことで重大な報告をしていることは分かるが、その内容が一瞬頭に入ってこなかった。
-
- 「申し訳ありませんが、もう一度仰っていただけますか?」
-
- キョトンとした表情で依頼する。
- 事務官はひどく辛そうな表情を浮かべて、また同じ報告を繰り返す。
- それを聞いて、ラクスはようやく内容を理解した。
- まさかキラの身にそんなことが起こっていようとは、帰りを待っている間想像だにしていなかった。
- 目を大きく見開き、呆然とする。
- 事務総長という役職に就く責任感からか、取り乱したりすることは無かったが、次の行動にどう移っていいのか分からず押し黙ったままだ。
- 重苦しい沈黙が漂う。
-
- 事務官はその沈黙に耐え切れなくなり、次の報告を続けた。
-
- 「またミライ様は、ケルビムと共に地球に降下したという報告も受けております」
-
- ラクスはまたハッと気がついたようにビクッと体を揺らすと、何とかそうですかと応えた。
- 襲撃の後、ミライの姿が見えなかったことに心底心配していたが、フリーズに乗って出ていたという報告には驚いていた。
- 親としては娘の身を案じていたのだが、無事が聞けたことにはホッとした。
- だがそれ以外には色々と手を打たねばならない事項も含まれており、その対策を考える必要がある。
- しかしキラがMIAとなったことに、胸が誰かに無理矢理破り取られたような痛みが、ズキズキと淀み思考がうまく働かない。
- キラに対する思いばかりが締めていて、とてもではないが考えられる状態ではなかった。
- それでもラクスは努めて平静を装って、ご報告ありがとうございます、と柔らかい笑みを見せた。
- 事務官は胸が締め付けられるような思いがしたが、おそらくラクスの胸中はもっと苦しいものがあるだろうと察する。
- 敢えてそれを口にせず、失礼しますと一礼して部屋を後にした。
-
- しばし事務官が閉じた扉を呆然と見つめていたラクスは、フラフラと席の方に戻ると椅子には座らず、机の横に立って寄り掛かる。
- それからその上に並べてある写真立ての1つに目をやり、それを手に取った。
- そこには自分とキラが、楽しそうに笑っているツーショットの写真が収まっている。
- ゆっくりもう1つの写真立てを手に取ると、やはり笑っている自分とキラ、そしてまだ幼かった頃の子供達の姿がある。
- その写真を見て、淡く微笑む。
- それを見ると自分は何て幸せ者なのだろうと、いつも思わずにはいられない。
- 愛する夫に支えられて、愛する子供達に囲まれて、たくさんの楽しい時間を過ごすことが出来た。
- これを幸せと言わずして何と言うのか。
- きっとそれらがなければ、ここまで色々な仕事をこなすことはできなかったであろう。
-
- しかし今、その大切な人を失ったと聞かされたのだ。
- こうなることに覚悟が無かったわけではない。
- 戦いに出るということは、その可能性があるということだから。
- それでもキラの強さを信じていた。
- 優しく、その真っ直ぐな意志を失わない彼はどんなことがあっても負けないと、本気でそう思っていた。
-
- 「キラ・・・」
-
- 愛しい人の名を小さく声に出して呟き、そっと目を閉じる。
- その目の前に浮かんでくるのは、出会った時からのキラの顔。
- 傷ついている顔だったり、苦しんでいる顔だったり、泣いている顔だったり、色々な表情が浮かんでは消えていく。
- そして最後に笑っている顔が浮かぶ。
- ラクスは改めてその笑顔が好きなのだと認識した。
- キラが笑顔を向けるたびに、心が温かなもので満たされていた。
- それは例えようも無いほどの幸福感に溢れていた。
-
- でもその笑顔を見ることは、もう出来ない。
- よく事務官の前でも取り乱さなかったと、我ながら思う。
- キラと過ごした時間が幸せだったと思えば思うほど、胸の痛みは激しさを増す。
- 呼吸は息苦しくなり、写真を抱きしめながら、胸の辺りの服をぎゅっと握り締めて痛みに耐える。
- しかしついに崩れるように膝を床に落とし、机にしがみつくようにもたれかかった。
- そして堪えきれなくなり、身を震わせて嗚咽を漏らす。
- その目からは幾筋もの涙が、儚く流れ落ちた・・・。
-
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