- 戦闘が勃発するよりも数時間前のこと、バンが勝手に決めたESPEM部隊への侵攻作戦の準備を、グロッグは淡々と進めていた。
- その表情はどこか冴えない。
- 彼自身、ラクスの唱える思想に賛同することは出来ないし、ESPEMの存在を容認することは出来ない。
- 過去に何度かは小競り合いをしたこともあるし、戦う以上は容赦はしないので躊躇う気持ちは無い。
- ただ彼自身、積極的に戦争をしたい訳ではない。
- 彼の望みは誰からも支配されること無く、自分達のことは自分達で主体性を持って生きて行きたいだけだ。
- バンの命令に従うことに若干矛盾のジレンマを感じなくもないが、誰もが自分の能力を、そして限界を予め知った上で生きていくのだから、そこに支配という侵略や虐げは無いと信じている。
- だから多少の矛盾に目を瞑り、己の信じる未来のためにただ邁進するだけだと、戦いに身を投じる時に彼は誓いを立てた。
- そうでなければデュランダル派として戦いに身を投じたりはしていない。
- その思いを確認しながら、グロッグは自分のパイロットスーツを棚から取り出した。
- ララファは既にパイロットスーツに着替えて、壁に寄りかかってグロッグの着替えを見つめている。
- 服を着替える衣擦れの音だけがその部屋に響いていたのだが、ふいにララファが口を開く。
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- 「貴方はあの子が相当お気に入りのようだけど、どうしてかしら?」
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- まあ可愛い子だけどね、とおどけて、しかし僅かに不機嫌さを露にする。
- グロッグがヒューを気に掛けるのは構わないが、それが度を過ぎている気がする。
- それは今回に限ったことではなく、どちらかというといつも自分よりヒューの方を優先されている気がして、愛人として傍らに居る身としては正直面白くないのだ。
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- ララファの不満に、グロッグは視線を合わせずに淡々と答える。
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- 「あいつは、戦士をやるには心が優しすぎるからな」
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- 答えながら、少し遠い目をして着替える手を止める。
- 何かを思い返し思い出に浸るような、そんな目だ。
- そこにララファは入り込むことは出来ず、それが歯痒い。
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- グロッグとヒューの関係は、ララファとの付き合いよりも長い。
- そんな2人の間に過去何があったかは、まだヒューが少年と呼べる年頃の時に、一緒に戦ったことがあるということ以外彼らにしか分からない。
- ララファがいくら尋ねても、グロッグは笑顔ではぐらかすばかりで答えることはなかった。
- ただその笑顔は、今まで見たことが無いほど傷ついたような、そんな無理した笑顔だったことだけは印象に残っている。
- それはまるで2人だけの秘密を共有しているようで、男同士の友情だと言い聞かせるのだが、ララファは嫉妬の気持ちを禁じえない。
- だから彼を苛めたくなるのかも知れないと内心思ったりもする。
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- ララファは少しだけ声のトーンを落として、拗ねたように捨て台詞を吐いて部屋を出て行く。
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- 「ええ、どうせ私は優しくないですよ」
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- グロッグはしばし呆然とララファが出て行った扉を見つめ、溜息を吐いて苦笑を浮かべるしかない。
- 彼はララファのことを愛しているが、それとヒューを思う気持ちは別次元のことなのだ。
- しかしそのことを行っても、彼女には分かってもらえないであろう。
- それが分かっているから何も言わないし、ある程度は自由にさせて傍に置いているのだ。
- だからララファの態度には苦笑するしかないグロッグは、小さく溜息を吐いてパイロットスーツのファスナーを上げた。
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- 「それじゃ行こうか」
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- 全ての準備が整うと、自分に言い聞かせるようにポツリと零す。
- その途端グロッグの野獣のように目つきは鋭くなった。
- その瞳に睨まれた者は、それだけで身を切り刻まれるのではないかというほど。
- そこには屈強な戦士の顔をした、凶暴な男しか居なかった。
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PHASE-26 「砂上の陽炎」
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- ミライとヒューが悲しい再会をした頃、ザイオン達とグロッグ達の戦闘は激しさを増していた。
- 砂を巧みに掻き分けるように走り、空中のリックディアスの射撃を避け、隙を見ては飛び上がって襲い掛かるガルゥ。
- 別の上空ではララファのグフVとジローのフウジンがビームサーベルを激しく交錯させている。
- リュウのグロウズも3機のガルゥの連携攻撃に翻弄されながら、何とか凌いでいる。
- ケルビムも片方のエンジンから煙を上げながらも何とか姿勢を保って、ヴィシャスの主砲をかわして反撃している。
- 砂の上にはあちこちにそれらの火器の当たったと思われる小さな穴ができていて、それが激しさを物語っている。
- だが戦闘はこう着状態だ。
- どちらも決定打に欠けて状況を打開出来ないでいる。
- 何かのキッカケでどちらかに有利になるようなことが起これば一気にそちら側に流れが傾く。
- だから少しのミスも許されない。
- そんな緊迫感すら漂っている。
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- そんな時、上空にフリーズとフレアが現れた。
- 作戦ではグロッグの部隊がケルビムの前から戦闘を仕掛け、その間に後方からヒュー達が挟み撃ちにすることになっていた。
- それが援護のMSはおろか、ケルビムも沈めることが出来ずにこちら側に出てきたことで、グロッグはその場所から移動してしまうほど、激しい戦闘を繰り広げているのかとそちらにチラリと目をやるが、そうではない雰囲気に少し戸惑う。
- 傍目にはお互いが何か通じ合っているような、そんな印象を受けてしまう。
- ヒューからはフリーズのパイロットについて何の情報も聞いていないので、彼もパイロットのことは知らない筈だと思っていたのだが、どうもそうでは無いようでそれが解せない。
- グロッグがそんな疑問を思考に巡らせている時、遅れてライジンが2機を追うように現れる。
- タクミはエデューの攻撃を振り切ると、フリーズとフレアを追ってケルビムの前方へと出てきたのだ。
- 同時に戦闘状況を眼下で確認しながらグロッグに通信を送り、憤慨を込めた口調で状況を報告する。
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- 「よく分からないがヒューはフリーズを討つことを躊躇っている。今のあいつは使い物にならない」
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- タクミの報告にグロッグは驚くと同時に、彼がまた何か相手や周囲を気遣うような状況に陥ったのだろうと推測する。
- 特に相手を殺してしまった時は尚さら、それを悔やむような仕草を見せてきたことを知っているだけに、そんな彼を放っては置けなかった。
- そんな相手の命を思いやることは兵士、戦士としては失格なのかも知れない。
- だがグロッグは、自分には無いその人間臭さとでも言う感情を、戦いに身を投じながらも無くさないヒューを羨ましくも思っているのだ。
- 逆に言えばそんなヒューだからこそ、彼を信頼していると言っても良い。
- そういった者も、いや戦いの無くなった後の世界には、そういった者の方が必要だと思えるから。
- だからヒューのその部分は無くさないで居て欲しいといつも思ってきた。
- 理由は分からないが、今度もその優しさが強く前面に出ているようだ。
- そんな彼を守ってやらなければと、砂上を滑りながら180度ターンをして、フレアの方を追いかけようとする。
- だがアタック装備に換装したエデューのグロウズがグロッグの前に立ちはだかり、対艦刀を振り回す。
- エデューもまたライジンを追い、エネルギーの切れたランチャーを捨ててケルビムから対艦刀を手にして前に飛び出てきた。
-
- 「バークス隊長、フリーズにトラブル発生。ミライがおかしい」
- 「何だと!?分かった、俺が援護に向かう。エデューはここを頼む」
-
- エデューもザイオンにミライの状況を説明する。
- ザイオンはそれを聞いてグロッグのガルゥの相手をエデューに任せると、直ぐにフリーズを守るべく機体を追い掛ける。
- 戦闘の前は少し落ち着いていたようだが、特にシャイニングフリーダムが敗れてからの彼女は非常に危うい状態にあり、精神的な不安定さを危惧していた。
- 何があったかは分からないが、何か彼女の心を圧迫するような出来事があったと察した。
- 彼もまた友人達の代わりに、兄貴分としてミライのことを気にかけていた。
- そしてキラを失っている今、これ以上彼らに悲しい思いをさせる訳にはいかないと、操縦桿を握り締める手に力が入る。
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- 「ちっ、邪魔をするな!」
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- グロウズに行く手を遮られたグロッグは舌打ちすると、ガルゥの四肢で砂地を力強く蹴って立ちはだかったグロウズの頭上を飛び越える。
- その擦れ違い様、口のビームサーベルを器用に立ててグロウズに切り掛かる。
- エデューはそれを対艦刀で受け止めるが、ガルゥの飛び掛った勢いに押されてバランスを崩し背中から砂地に倒れる。
- グロッグは先にグロウズをそのまま切り刻もうと、ガルゥを素早くターンさせた。
-
- しかし振り向き様、メインモニタで爆発が起こりその衝撃がコックピットを揺らした。
-
- 「な、何だ、何が起こった!?」
-
- 唸りながら爆発箇所を確認し、モニタを確認する。
- しかしモニタに破損があるらしく、左端が黒く塗り潰されたようにうまく映らない。
- 舌打ちしながら爆発の原因を探った。
- 続いて足元でまた爆発が起こる。
- 今度は直撃はしなかったが、どうやらどこからか砲撃を受けているようだ。
- それらが飛んできたと思われる方に目を向けると、辛うじて歪んで映るモニタの奥の方に砂煙が巻き上がっているのが確認出来る。
- 望遠率を上げると、MSとバギーがこちらに向かってくるのが確認できる。
-
- それはマイクの部隊だ。
- 砂漠仕様のグロウズ3機と多数のバギーに銃器を手に乗り込み、ザイオン達の援護に来たのだ。
- バギーから飛んできた3度ロケットミサイルを、グロッグは驚いた表情を浮かべながら後ろに飛んで回避する。
- グロッグはケルビムに援護が来ることは全く予想していなかった。
- いや、援護に来られないように先に本隊だと思っていたESPEMの部隊を襲撃したのだ。
- そのため援護が来ることを想定しないまま準備をしていたのだ。
- これでは充分に対処することは出来ない。
- グロッグは自分達の敗北を静かに悟る。
-
- ケルビムのブリッジでも新しい部隊の到着をキャッチし、それが味方であると分かるとどよめきが起こる。
- レイチェルも驚いた表情でマイクの通信を取る。
-
- 「どうして貴方々がここに。我々の援護は出来ないと言っていたのでは?」
-
- 言われてマイクは少し恥ずかしそうに頭を掻いた。
- 彼はケルビムが飛び去った後、すぐに追撃部隊を向かうことを指示した。
- ああは言ったものの、実際マイクには追撃の気持ちはあった。
- だが現状の置かれた状況から、ケルビムの援護を素直に受けても良いのか迷っていた。
- 色んな意味で曰くつきとなった艦だ。
- 後で難癖付けられては適わない。
- だが隊長であるザイオンは、自分が失くしそうになっていた熱い気持ちを持っていた。
- 自分が信じた道を進もうとする真っ直ぐな気持ちを。
- それがマイクの心に再び決意をさせた。
-
- 「本来は俺達がやるべき仕事だ。それを君らだけにやらせるほど、怠慢を決め込むつもりは無い」
-
- マイクは雄々しくそう答えると、肩に背負ったバズーカをくいっと上げてみせる。
- その仕草に部下達も雄叫びを上げて、砂鯨の部隊に突っ込んでいく。
-
- その光景を見たレイチェルは、肩の荷が少し下りた気がした。
- 自分達の部隊だけが何かを背負っているような気負いがあったのだが、決してそうでは無いことが分かったことが、何より嬉しかった。
- ブリッジのクルー達もどこか嬉しそうな表情をしている。
-
- 「よし、一気に反撃する。ミサイル、バリアント一斉発射」
-
- これで勢いづいたケルビムはヴィシャスに猛攻を仕掛ける。
- ミサイルとバリアントを立続けに発射し、ヴィシャスの砲門は次々と破壊されていく。
- ほどなくしてヴィシャスから幾筋もの黒煙が上がり、戦闘出来ない状態であることは傍目にも分かった。
- 残っていたガルゥも、リュウとマイク部隊のグロウズの放つライフルに次々と討ち取られていく。
-
- その状況にララファは焦りを感じ始める。
- 出撃前はしっかりと勝算があったはずなのに、今やまともに動けるのは数機のMSだけだ。
- ただの雑魚相手なら自分1人で何機でも相手にする自信はあるのだが、目の前の相手もかなりの実力者ときている。
- だんだんとこちらの動きに慣れてきたのか、ヒートロッドもかわされるようになってきた。
- このままでは全滅は時間の問題だ。
-
- 「ここでの勝敗は決した。総員速やかにここから離脱しろ。これ以上命を粗末にするな」
-
- そうこうしていると、グロッグから撤退の指示が響いた。
- ララファはその言葉に敗北をハッキリと認識し、悔しさに唇を噛み締める。
- フウジンの射撃を巧みに避けながら、それもこれも予想外な行動を取ったヒューのせいだと、恨み積もった分までフレアの方を睨みつけ撤退ポイントへと機体を退かせた。
-
- しかし当のヒューはそんなことなど露知らず、未だ思考の迷路の中を彷徨っていた。
- 未だ焦点の定まらない視線でフリーズの動きを見つめている。
-
- その頃ザイオンはミライの援護に上空高く舞い上がった。
- しかし先を行くライジンの方が接触が早い。
- このままではライジンのいい的だ。
-
- 「ミライ、応答しろ。ここは戦場だ。そのままだとお前が死ぬぞ」
-
- ザイオンは必死に呼びかけるが、ミライの耳には届いていない。
- ミライは自分が殺人者になることに未だに強い抵抗がある。
- 戦争というものを甘く見ていたことを、今更ながら思い知らされる。
- 父が言いたかったことはこうゆうことかと、ようやく意識の端で理解をし始めていた。
- おそらく父は知っていたのだ。
- 戦い武器を振るうことは、誰かを守ると同時に誰かを傷付けることなのだと。
- だからMSに乗っている時の父は悲しそうな顔だったのだと、またキラの姿が脳裏に思い起こされる。
-
- その時、警報を示すブザーがけたたましく鳴り出した。
- ミライはその音にハッと意識を現実に引き戻し、モニタに迫るライジンの姿を確認する。
- そこでようやく今が戦闘中だったということを思い出す。
- 慌てて操縦桿を握り、振り下ろされたザンテツケンを回避する。
- しかしその動きは緩慢だった。
- まだショックから立ち直りきれないのだ。
- 一の太刀は回避出来たが、返す刀の横からの攻撃はシールドでまともに受けてしまった。
- 空中で大きくバランスを崩すフリーズ。
- ライジンは止めを刺すべく、ザンテツケンを大きく振り被って迫った。
- そこで今まで呆然自失としていたヒューも状況を飲み込む。
- ヒューは思わずフリーズを守ろうと、ビーム砲をライジンに狙いを定めた。
- そこで気が付いて大きく頭を横に振る。
- 自分は一体何をしようとしたのか。
- 敵であるはずのミライを庇って、味方のタクミを撃とうとするなんて。
- ヒューは頭を抱えて自分を責める。
-
- その間にもライジンはフリーズに迫るが、間一髪、その横からリックディアスが体当たりをして攻撃を防いだ。
- フリーズを討つ事に意識が集中し過ぎたタクミは、まったく注意を払えずにそのまま引き剥がされる。
- タクミは直ぐにリックディアスを振り払おうとするが、相手は本来隊長として仕えるべき相手であり、MSパイロットとしての技量は一枚上手だ。
- そう簡単に離れてはくれない。
-
- ライジンの特性を知っているザイオンは、このまま距離を取った方が不利だと即座に判断していた。
- リックディアスのスピードでは到底敵わないのだ。
- ならばとライジンの肩をしっかりと捕まえたまま離さない。
- そしてビームサーベルを突き刺そうともう片方の腕を振り被った。
-
- このままでは仲間が相手の凶刃に倒れてしまう。
- ヒューの心がそれを激しく拒絶し、反射的に体が反応する。
- 今度こそフレアの腰のレールガンを放って、それがリックディアスに直撃する。
- ザイオンはかわしきれずに、ライジンを掴んでいた手を放して爆煙の中でバランスを崩す。
- ヒューはそのままリックディアス目掛けて突っ込み、ビーム砲を構える。
-
- 今度はザイオンが危機に陥った。
- それを見るとはなく見ていたミライの体がピクンと反応する。
- 気持ちの整理は全くついていないが、誰かが目の前で死んでいくのを見たくないという気持ちが考えるよりも先に体を動かしていた。
- ミライは操縦桿のトリガーをついに引く。
- フリーズが撃ったライフルはフレアの左腕に命中した。
- 全く油断していたヒューは、フリーズの攻撃を回避することは出来なかった。
- 被弾したフレアは左腕を吹き飛ばされる。
- さらに爆発の衝撃で錐揉みしながら、リックディアスを追い越して地面に落下し、フレアは不時着する形で砂漠に膝を突いた。
- そこに落下を追い抜かれる間に体勢を立て直したリックディアスが間髪入れずに迫る。
- 地面すれすれの低空飛行に移ったザイオンは、スコープで正面のフレアをロックすると躊躇うことなく引金を引いた。
- 放たれた光はフレア目掛けて真っ直ぐ伸びる。
- ミライはその光景に、シャイニングフリーダム爆発のビジョンがフラッシュバックし、ヒューが燃え尽きる姿と重なる。
- 思わずビームの直撃を防ごうとフレア目掛けて加速した。
- しかし距離があり過ぎて間に合わない。
-
- だがそんなミライよりも早く、ビームが直撃する直前、何かの影がフレアに体当たりをしてビームの先から逸らせた。
- 影の正体はグロッグのガルゥだ。
- グロッグはフレアの危機を見て取ると、エデューの攻撃で右の前脚を失いながらも攻撃を振り切って駆けつけたのだ。
- そして迷わずフレアをビームの先から逃すことだけを考えた。
- 結果、フレアは砂地の上に弾き飛ばされてビームから逃れることが出来て無事だ。
- だがリックディアスの放ったビームはガルゥを真横から貫いた。
- 貫かれた衝撃でガルゥは横に大きく吹き飛ばされる。
- それは命の躍動を失った動物のように、力なく横から砂漠に倒れこむ。
- グロッグは漏電したコックピットの中で、血を吐きながらフレアが無事なのを確認すると、笑みを浮かべた。
- その笑顔はヒューを救うことが出来た満足感と安堵に満ちていた。
- そして少しだけ、心の中で彼に優しく説教を呟く。
- 戦闘中は戦いに集中しろ、と。
- そうでなければ生き残れない、そして誰かを救うことは出来ないと。
- それは純粋にヒューのことを心配し、そして未来を託していた。
- それからララファは悲しむかな、それとも勝手に死んでと怒るかなと、愛する者のことをボンヤリと思い浮かべる。
- しかしその思いは誰にも知られなることなく、辛うじて早く撤退しろという命令を発すると、真っ白な閃光の中にグロッグの意識は溶けていった。
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- ヒューは呆然と倒れるガルゥを見つめていたが、次の行動に移る前にガルゥに一瞬光が収束したかと思うと、次の瞬間には激しい炎を上げて爆発した。
- 赤い炎が、グロッグの弔い火の様にもうもうと立ち上る。
- しばし呆然としてヒューはその光景を見つめていたが、やがて大きな、泣き叫ぶような声を上げてグロッグの名を呼んだ。
- しかし通信機からはノイズ音が返ってくるばかりだった。
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