- ブレイン達整備スタッフは、フリーズのソフトウェアが解析出来ずに頭を抱えていた。
- 一体ミライはどのようにしてこのプログラムを短時間で組んだのか、さっぱり分からない。
- 仮にもプロとしてこの仕事に従事している者としては、悔しいやら情けないやらだ。
- そうこうしている間も、ケルビムを揺さぶる振動は断続的に続いている。
- こうゆう時に己の無力さを思い知らされると、正直自信を喪失してしまう。
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- そこにこちらに向かってくる足音が響く。
- ブレイン達が一斉に振り返ると、ミライが走ってくるのが見える。
- ザイオンの話では精神的な問題で今回は出撃は無理だろうと言うことだったが、しっかりとパイロットスーツを身に着けていることに驚く一同。
- この短時間で一体どんな心境の変化があったのかとも思うが、今はそれどころではない。
- ともかくフリーズを動かせるようにするのが先決だ。
- 全員どこか安堵したような笑みを浮かべてミライの到着を歓迎する。
- しかしミライは誰とも目を合わそうとせず、言葉も交わすことなく、フリーズに乗り込もうとする。
- ちらっと見えたその瞳は、いつもの柔らかいものではなく、どこか冷たい印象を受け、遅れてきたことに対する謝罪も無いミライに文句の一つも言おうとしたブレインだったが、思わず言葉を飲み込む。
- そんなブレインを余所に、さっさとフリーズのコックピットに乗り込んだミライは、キーボードを取り出すと凄い勢いでキー入力を始める。
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- 「フリーズのリフレクターを水中モードに切り替え。起動制御プログラムはIDWD237をコンパイル。ニューラルネットワークテンプレートはファイル6387から6724を選択。相対係数は水圧と海流データをインプットして補正。リンケージセクションはスキーマWAF06に設定。ロードモジュール差し替え完了」
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- ブレイン達は、早口でぶつぶつと呟きながら次々に設定変更をしていくミライを呆然と見つめるしかない。
- そして数分ほどでフリーズは水中モードで起動する。
- あまりの早業に、一同は声も出ないほど驚き呆ける。
- そんなブレイン達の驚きに全く意を介さず、ミライは続けて出撃準備に入り、装備する武器を選択していく。
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- 「武器はバズーカとアーマードナイフで行きます。ビームライフルやビームサーベルは使えません。バスターシールドは?」
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- ミライの問い掛けにブレインがハッとして答える。
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- 「ドラグーンシステムを利用しているものですから、地上や水中では使えません」
- 「と言うことはシールドキャノンも使えないということですわね。分かりました」
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- 結局ミライは淡々と素っ気無いまでに出撃準備を整え、それだけ確認するとフリーズのハッチは閉じられた。
- まるでそこに閉じこもるように。
- 今までとのあまりの態度の違いに戸惑いながらも、ブレインはキャットウォークの移動を指示し、フリーズが発進できる準備を整える。
- 発進カタパルトから足を外したフリーズは壁に掛けられたバズーカを手に取り、そのまま外ヘ向かって歩を進める。
- ブレインは歩いてハッチを出て行くフリーズの後姿を見つめながら、ミライの様子がずっと引っ掛かっていた。
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PHASE-29 「紅に染まる海」
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- エデューとリュウは焦りを感じ始めていた。
- もう何発もバズーカを撃っているのに、弾は一発もブトーに掠りさえもしない。
- だがブトーの放つミサイルは、確実にケルビムにダメージを与えている。
- このままではケルビムが航行出来なくなってしまう。
- かと言って、対等に渡り合えるMSや武器が他に無い以上、何か良い案が浮かぶわけでも手が打てるわけでもない。
- こういったジリ貧の戦法や戦局がエデューは嫌いなのだ。
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- 苛立ちが頂点に達したエデューは、グロウズを海中へと躍らせる。
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- 「エデューさん、グロウズじゃ水中戦は無茶です。相手はブトーですよ!?」
- 「煩い。やってみなきゃ、敵わないなかどうか分からんだろうが!!」
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- リュウは慌てて海に潜ったエデューに通信を送るが、エデューは取り付く島も無い。
- グロウズは水中戦に対応できる機体でないため、水中ではまともに戦えないことは百も承知だ。
- だがいつまでもこんなもぐら叩きのような攻撃では埒があかないのも事実。
- どの道まともにやり合えないなら、ダメ元で水中戦で対抗しようというのだ。
- とにかく相手に一泡でも吹かせてやりたいと息巻き、水中に目を凝らすエデュー。
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- エデューが飛び込むと同時に、1機のブトーが海中に来たグロウズに気がついた。
- すぐに旋回してエデューのグロウズに向かって加速する。
- 真正面から迫るそのブトーに向かって、エデューはバズーカを一発放った。
- しかしブトーは難なく機体を捻ってかわすと、真っ直ぐグロウズに接近する。
- そしてそのまま凄いスピードで迫ったかと思うと、体当たりを喰らわせてあっと言う間に離れて水の向こうに消える。
- エデューはぐあっ、と呻き声を漏らしながら、懸命に操縦桿を引いたりフットペダルを踏んだりして何とかバランスを保つが、やはり水の抵抗をまともに受けて機体が思うように動かない。
- この状態で水中を自在に動き回せる相手についていくのは、いかに腕の良いパイロットでも不可能だった。
- 姿勢制御に四苦八苦しているところにブトーが再び迫り、今度はミサイルを発射する。
- エデューはミサイルの接近に気がつき、回避行動を試みるがやはりうまく回避できず直撃を喰らう。
- もんどりうつように仰向けに海底にゆっくりと倒れこむグロウズ。
- そこを逃さずブトーが迫り、上から押し潰すようにグロウズに圧し掛かった。
- ブトーに押さえつけられた格好になったエデューは、何とか振り解こうともがく。
- しかしブトーに備え付けられた4本のマニュピレータが、がっちりとグロウズの四肢を押さえて身動きできない。
- エデューがもがいている間に、ブトーは押さえ込んだグロウズに、上体を起こして背に背負ったレールキャノン砲の銃口を向ける。
- 逃れる術はなく、この距離では機体は無事ではいられない。
- もしコックピットに直撃はしなくとも、このまま水中から出られなければそのうち窒息死するだろうし、水が入ってくれば溺れ死ぬ。
- 命を脅かすものは何も敵だけではないのだ。
- ようやく水中戦での怖さを理解したエデューだったが、時既に遅しだ。
- 目の前一杯に広がる銃口を睨みながら、エデューは死を覚悟して目を反らした。
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- しかし次の瞬間、ブトーは背中から黒煙を上げてグロウズから離れていく。
- 何事かと視線を上げると、レールキャノン砲を潰されたブトーの機影が確認できる。
- それだけではない。
- マニュピレータを切り落とされ、グロウズを押さえつけていた力が無くなっている。
- グラリと傾くブトーに、エデューは咄嗟にビームサーベルを突き立てた。
- 水中ではいくらビームの出力が落ちると言っても、この至近距離で突き立てれば、その熱で機体を切り裂くことくらいは出来る。
- 水の中では少しの傷でもそこから水が入り、それが致命的なダメージになることもある。
- ましてやコックピットに届くまでの大きな穴は。
- 例に漏れず、刺されたブトーはサーベルの刺さった穴から大量の気泡を吐き出したかと思うと、力なく海底にゴロリと転がった。
- その直後、爆発を起こす。
-
- 肩で息をしながら、それを確認したエデューは状況を把握しようと目線を上げた。
- リュウが援護に海中に下りてきたのかと思ったのだ。
- しかし目の前に佇んでいたのはフリーズだった。
-
- 「エデュー、すぐに浮上してください。グロウズでは水中戦は無理です。後は私がやります」
-
- そのフリーズからミライの声が通信越しに響く。
- グロウズからブトーを引き剥がしたのはミライのフリーズだった。
- まさかフリーズがいるなどと思わなかったエデューは、一瞬目を見開いて驚きを露にする。
- しかしすぐに、口の端を持ち上げて笑みを浮かべる。
- 遅れて来たことに対して怒りが無いわけではない。
- だが死に直面していながら生き残った興奮のようなものが、エデューのテンションを上昇させていた。
-
- 「ふん、遅れてきた奴がよく言う。だが、これで命を助けられたのは2度目だな。まあ俺だけでも切り抜けられたんだが、今回は礼は言っておいてやる」
-
- エデューの素直でない物言いに、ミライも小さく笑みを零す。
- それだけ強がりが言えるのであれば、彼自信は無事だということが確認出来る。
- しかしすぐにブトーの動きに神経を尖らせると、真剣な表情をしてエミリオンに通信を送る。
-
- 「相手の数は?」
- 「海中にブトーが後3機です。上空のウィンダムウェーブは、バークス隊長とジローさんが全て撃墜しました。2人はそのまま敵母艦に向かいます」
- 「了解」
-
- 通信を終了すると同時に、レーダーが前方から迫るブトーを捉える。
- ミライはアーマードシュナイダーを右手に持つと身構え、それを迎え撃つ。
- 勢いよく突っ込んできたブトーを、フリーズの上体を反らせて器用に避ける。
- そして擦れ違い様、手にしたアーマードシュナイダーで左側のスクリューを横から切り裂く。
- 推進力を片方失ったブトーは機体のバランスを維持出来ず、激しい気泡を噴出して錐揉みしながら海底に転がる。
- もう動けないだろうと思ったミライは、相手の戦力からこの1機を差し引く。
-
- 残った2機が仇討ちとばかりに、左右から挟み撃ちを仕掛ける。
- ミライはそれを冷静に見て、先ず左側から迫るブトーに向かってバズーカを発射する。
- そのブトーは当然、回避行動を取る。
- それが2機の連携を狂わせ、隙を作る。
- 攻撃のタイミング、フリーズとの接触時間が狂ったのだ。
- それを瞬時に計算したミライは、今度は右がら迫るブトーにターゲットを絞り、充分引き付けて、アーマードシュナイダーで右側のマニュピレータを切り落とす。
- その衝撃でバランスを崩すブトーに、エデューがバズーカを打ち込み見事に命中する。
- 爆発の衝撃が大きな水柱を作る。
-
- 最後の1機となったブトーはフリーズの眼前まで来るが、不利な状況に逃げ腰になったのか、Uターンするように離れていく。
- ミライは数発バズーカを放つが、大きく旋回するブトーに全てかわされる。
- ならばとバズーカを投げ捨てると、海底を蹴って跳躍しブトーを追い掛けた。
- 水中での機動性、方向転換は、水の抵抗まで計算されてボディの形状が作られているブトーが抜群に優れている。
- だが追いかけっこであればフリーズでもひけを取らない。
- 背中のリフレクターから勢いよく気泡を噴出すると、ブトーとほぼ同じ速度で水中を飛ぶ。
- ケルビムの下で円を描くように逃げるブトーを、ミライは必死に追い掛ける。
- しかしそれは策だった。
- しばらく追いかけっこを続けた後、不意にブトーは方向転換をして、フリーズ目掛けて突っ込んできた。
- あまりにも急な方向転換に、さすがにミライは反応しきれずに、体当たりをまともに喰らってしまう。
- その衝撃でアーマードシュナイダーを落としてしまう。
- コックピットに伝わる振動に呻き声を漏らすミライ。
- だが反対の手で咄嗟にマニュピレータを掴み、放さなかった。
- フリーズを横にぶら下げた格好で水中を滑るブトー。
- フリーズを振り落とそうと揺さぶるが、ミライも振り落とされまいとしがみ付く。
-
- だがもう武器は無い。
- このままでは海中をただ泳ぎ回るだけだ。
-
- しかしミライのなかに瞬時に閃いたものがあった。
- すぐにブトーの上に覆いかぶさるように乗ると、左腕のシールドの先端をスクリューの上部に突き刺す。
- しかし少しばかり装甲をへこませるだけで、これだけでは致命的なダメージを与えられない。
- だがこの行動真の目的は、シールドを相手に押し付けることにあった。
- ミライは続けてキーボードを取り出すと、バスターシールドのキャノン砲のロックを、プログラムの書き換えで解除する。
- モニタにキャノン砲発射OKの文字が躍り、迷わずトリガーを引いてそのままシールドキャノンを放った。
- ビームは眩い光を帯びて、フリーズの左腕から放たれる。
- 本来シールドキャノンの威力はあまりにも強く、シールドを腕に装着したままでは機体がもたないのだ。
- それ故に通常機体からパージされているかを感知して、パージされていない場合は発射をロックするようにプログラムされていたのだが、ミライはそのプログラムを強制的に解除したのだ。
- 水中による拡散も手伝って、暴発したように放たれたビームの衝撃にはやはり耐え切れず、フリーズの左腕は吹き飛び、その衝撃でブトーの上から弾き飛ばされるように離れて海底に沈んでいく。
- そして左腕が爆発した衝撃はコックピットにも響き、大きく揺さぶられたミライは堪らず悲鳴を上げる。
- だが至近距離であったことが幸いした。
- 発射されたビームは、拡散、暴発したように周辺を眩く照らし、フリーズに多大なダメージを与えたが、見事にブトーのスクリューも貫いていた。
- 機動力を失ったブトーは、煙のように気泡を上げながら、フラフラと撤退するしかなかった。
- それを確認して、ミライは安堵の表情を浮かべて大きな溜息を吐いた。
- これで水中の戦闘も終わったと、気を緩めたのだ。
-
- その時、海底に転がっていたブトーが息を吹き返した。
- 片方のスクリューで、スピードが半減しながらもフリーズに迫ると、背中のレールキャノンを撃つ。
- 油断していたミライは、フリーズの顔面にまともにくらい、揺れるコックピットで身を縮める。
- 衝撃が治まるとミライは何とか対峙しようと、操縦桿を引いた。
- しかし左腕が破壊された影響か、フリーズは満足に動かない。
- そうこうしている間に、コックピットには何らかの異常を示す警報が煩いほど鳴り始める。
- それにもう本当に何も武器が無い。
- 死の恐怖が喉元に刃を突きつけるように、足元からせり上がってくる。
- ミライはその恐怖と、対抗出来ない事態に悔しさが入り混じった表情で、ゆっくりと迫るブトーを睨みつける。
-
- そのフリーズの危機に、今度はエデューが援護しようとブトーに向かって飛び上がった。
- 片方のスクリューで真っ直ぐ移動することが精一杯のブトーでは、グロウズでも追いつくことが出来た。
- フリーズが落としたアーマードシュナイダーを拾ったエデューが、ブトーに突き刺す。
- ブトーは突き刺されたところから火花を散らせると、そこからぶくぶくと泡を吐き出して制御を失い、今度こそ完全に沈黙して海底に沈み、大きな爆発を起こして粉々になった。
-
- エデューはフリーズがとりあえずまだシグナルを失っていないのを確認すると、さきほど撤退したブトーが戻ってきていないか油断無く構える。
- しかし今度は完全に撤退したようで、レーダーに反応も無く音も聞こえない。
- ようやく水中にも敵がいなくなったことを確認したエデューはホッと溜息を吐いて、海底に倒れこんだフリーズを抱きかかえる。
-
- 「おい、大丈夫か!?」
-
- 万一機体に穴が開いていたりしたら、水が中に入ってきてパイロットも危険だ。
- 心配そうにミライの様子を確認しながら、速やかに浮上する必要性を認識し、海上のケルビム目掛けて上昇する。
- そして左腕を失ったフリーズを見ながら、エデューは考える。
- フリーズがこれだけボロボロになったのは初めて見た。
- 今回はそれだけ激しい戦闘だったとも言えるのだが、やはり自分がこの機体や、本来のフレアに乗っていないこと、そのために戦いに制約を受けていること、ミライに頼らなくてはいけないことが歯痒くて仕方が無かった。
- それが逆恨み的に、ヒュー達への憎しみを募らせる。
- エデュー自身はヒューの名前も顔も知らないが、彼が恨むには充分過ぎる理由だった。
-
- 「ええ、大丈夫です・・・」
-
- エデューの思惑に全く気付かないミライは、無事を確認する問い掛けに肩で息をしながら、喘ぐような声で答える。
- その表情は苦しみを堪えるているようだ。
- 戦闘が終了したことでようやく冷静さを取り戻したミライは、また戦い、相手を傷付けたことを悩んでいた。
- 誰が乗っていたのかは今度は知らないが、少なくともヒューでは無いだろう。
- しかし知り合いでなければ良いというものでもなく、やはりその見知らぬ誰かにとって自分達は仲間の仇になるのだと思うと、やり切れない思いでいっぱいだった。
-
- ミライはシートの背もたれに力なく体を預けたまま、どうしてもうMSには乗らないと決めたはずなのに、フリーズのコックピットにいるのだろうとぼんやり考える。
- 自分やケルビムの皆が死ぬことを思った時、またあの不思議な感覚がしたことだけは覚えている。
- 何かが弾けたような、聞こえてくる音や見える物がひどくクリアに感じられる、まるで自分がMSと一体にでもなったかのような快感と恐怖が入り混じる恐ろしい感覚。
- それ以降は自分の行動は覚えていても、何を考えていたのかひどく曖昧だ。
- ただケルビムを守る、そのために相手を倒すことに集中していたのだ。
- まるで戦いを好む野蛮なもう1人の自分が自分の中にいるみたいで、薄ら寒いものすら感じる。
-
- いや、私は戦い何て望まない。
- もう誰も傷付けたくないのです。
-
- 自問自答してその影を何とか振り払うと、右手の甲を額に当てて、ゆっくりと瞼を閉じる。
- ともかく戦闘は終わったことに、安堵と悲しみを湛えて。
- その目からは一滴の涙が零れた。
-
- その頃、上空のウィンダムウェーブ部隊を全滅させたザイオンとジローは、周辺海域を捜索し、敵母艦を発見していた。
- すかさず空から迫り、攻撃を仕掛ける2人。
- マルコフは対空ミサイルを放つが、MS相手にそれだけで対抗するには無理があった。
- 護衛艦共々ミサイル発射口やMS発進口、エンジンを破壊される。
- ブリッジの中に響くのは、被害報告や悲鳴、そして爆発音に合わせて伝わる振動ばかりだ。
- さらにオペレータから、MS部隊全滅の知らせが伝えられる。
- クラウンの頭には、完勝といかないまでも、これだけの戦力で攻めれば情報にある通りの数のMSであれば勝てるだろうと踏んでいたのだ。
- しかしそれもあっさり覆され、クラウンは最初驚愕の表情で戦況報告を聞いていたが、すぐに淡々と現実を受け入れた。
-
- 「噂以上の戦闘力だな。我々の手には負えない大物、と言うわけか」
-
- 自虐的にそう零すと、あっさりと自らの敗北を認めた。
- 最新型ということを差し引いても、相手の能力はこちらよりも相当高いのを認めざるを得ない。
- そんな相手に、この戦力で挑むのは無謀と呼ぶのもおこがましい。
- 元々野心や上昇志向を持っていないクラウンは、この状況で自分の命を守ることを優先したのだった。
-
- 「我々はこの海域より離脱する。速やかに潜行せよ」
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- その指示と同時に、撤退を示す信号弾が打ち上げられる。
- そして炎と黒煙を上げながら、最も近い陸地を目指して去っていった。
-
- それを確認したザイオンも、戦闘が終了したことを通信で送る。
- 水中の方もフリーズが出撃して片が付いたことに驚くが、ともかく負傷者らしい負傷者も出さずに敵を退けられたことには心から安堵した。
- それは隣にいるジローも、レイチェル達ケルビムのクルーも同じ気持ちだった。
- こうして彼らはまた、厳しい戦いを何とか乗り越えたのだった。
-
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