- ケルビムに帰艦したザイオンは、左腕を失い、見るからに傷だらけになっているフリーズを見て驚いた。
- 水中の敵はミライとエデューで片付けたと聞いていただけに、この状況は想像もしていなかった。
- すぐにミライの状態を心配する。
- しかし疲労している様子は見受けられたが、怪我は無いと聞いて安堵の溜息を吐くザイオン。
- だが出撃前の様子などをブレインから聞いて、やはりミライがおかしいのは心の悩みなどから来るものだと確信すると、ミライの様子が気になった。
- やはり地球降下直後から、情緒不安定で精神的に危うい様子は続いているようだ。
- きっかけはキラがMIAとなったことだろうが、それだけではないことも何となく分かる。
- その理由が何なのかということは分からないが。
- とにかく戦闘に対する意識が出撃する度に変わっているのだ。
- まだ若いザイオンには、彼女をどのように扱えばよいのか検討もつかないでいた。
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- だがこれではフリーズはしばらく出撃出来ない。
- まあミライの状態が状態なので、機体が無事であっても出撃命令は出したくないのが本音なのだが。
- 仮に命令を出したとしても、ミライは命令を無視して出撃してしまい、立場的にそれを止め切れないのだ。
- それを考えると、これはこれで良かったのかも知れないと思える。
- 隊長として不届きなのかも知れないが、また万一敵の襲撃を受けると苦しいのだが、致し方ない。
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- そう考えながら、ザイオンはふと気が付く。
- 結局ミライと、ミライが操縦するフリーズは自分の部隊の戦力にしっかり入っており、頼っていることに。
- そんな自分自身に腹も立つ。
- 本来であれば”平和の歌姫”を継ぐ筈のミライを、ヤマト事務総長の娘を戦場に引っ張り出さなくてはならないのは、自分にそれだけの力が無いからだと自分を責める。
- 隊長として無力さを改めて痛感する。
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- 1人思い悩むザイオンに、ブレインが肩に手を置き首を横に振る。
- 今この状況では悩んでいてもおそらく何も解決しない。
- とにかく今はオーブに辿り着くことが重要だ。
- 無駄な犠牲者を出さないためにも、ミライをこれ以上戦場を連れ回さないためにも、それを最優先で考えるべきなのだ。
- ブレインの無言の励ましを受けて、何とか気持ちを切り替えるとザイオンは大きく息を吐き出した。
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- 「オーブまでは後少しだ。そこまでこれ以上追撃が無いことを祈るしか無いか」
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- そしてフリーズを見上げながらそう零す。
- 呟きを聞いたブレインもそうですねと同意を示し、同じようにフリーズを見上げる。
- そのボロボロのフリーズは、今のミライの心を表しているようにも見えて痛々しかった。
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PHASE-30 「復讐鬼」
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- ケルビムは地球軍の部隊を退けてからは特に襲撃も無く、順調に航行していた。
- オーブの領海はもう目と鼻の先だ。
- 後数時間の内には辿り着ける。
- 誰もがこのまま何事も無くオーブに辿り着けることを願っていた。
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- だが空模様は先ほどまでの快晴が嘘の様に、低く重そうな黒い雲が頭上に広がり始めている。
- 遠くではその雲から稲光が零れる様子も見える。
- まるでこれから何か良くないことが起こる前触れの様に。
- レイチェルはそんな不安を抱えながら、艦長席にじっと座していた。
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- 「レーダーに反応。輸送機が1機こちらに近づいてきます」
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- 突然エミリオンから声が上がる。
- 輸送機という知らせに、レイチェルは怪訝な表情を浮かべる。
- 自分達が今通っている場所は、通常の輸送機などは通る所ではない。
- まして今の自分達は孤立無援の状態なのだ。
- 救難信号も出していないので、補給物資が届いたとも考えられない。
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- 「どうゆうこと?向こうから通信は?」
- 「ありません。こちらの呼び掛けにも応答しません」
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- レイチェルは自分の不安が的中してしまったことに、余計なことを考えていた自分に舌打ちする。
- しかしそのことを悔やんでもどうにもならないので、すぐに気持ちを切り替えると次の指示を出す。
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- 「すぐに何処の所属か確認して。艦内に第2種警戒指令を発令」
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- だがレイチェルが叫ぶと同時に、輸送機の貨物部分からはMSが現れた。
- それも彼らにとってはよく見慣れた。
- エミリオンの調査結果を聞かずとも、それが何者なのかを理解したレイチェルは、すぐに警戒指令を敵襲警報に切り替える。
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- 「あと少しだって言うのに!」
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- ケルビムの操舵を握り締めながら零したアールの愚痴が、いやに重くレイチェルの心に圧し掛かった。
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- そして接近する輸送機から現れたのは、フレア、ライジン、マラサイ、グフVの4機。
- グロッグの仇討ちに飛び出したヒュー達は手近な軍港を襲い、そこで輸送機を奪い、ケルビムを追いかけてきたのだ。
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- 輸送機を奪う少し前、砂鯨のアジトのMSドックに現れた怒りと憎しみに染まったヒューの表情に驚いたタクミとララファだが、戦闘力の高さは評価している。
- 先ほどとは別人のように近寄り難い雰囲気を漂わせて、黙々と機体の整備をするヒュー。
- その姿に背筋に冷たいものすら感じながら、これなら次はまともに戦えるだろうとタクミが考えた作戦を説明した。
- かなり無謀な戦いに挑もうとしていることは分かっているが、全く勝ち目の無い戦いをするつもりも無かったので、結局ヨウナを含めた4人で追撃に向かったのだ。
- 尤もヒューの方は、勝手にでも付いて行くつもりだったが。
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- 4人は怒りに溢れた怒涛の襲撃で難なく大型輸送機を奪うと、すぐにMSを積み込みケルビムの後を追った。
- 先の戦闘もあってケルビムは若干の足止めを喰らっている。
- そのため、オーブに入られる前に追いつくことが出来たのは、彼らにとっては幸いだった。
- もしオーブの領海に入ってしまっていたら、オーブ軍も相手に突っ込んでいたところだ。
- 何にせよ、復讐を果たすチャンスが訪れたことには変わりない。
- すぐにコックピットに乗り込んで、出撃準備を整える。
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- 「あいつらはここで沈めてしまうのよ。良いわね」
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- 復讐のことしか頭に無いララファが、念を押すように鋭く唸る。
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- 「言われるまでも無い」
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- タクミが当然だと言わんばかりに答え、ヒューとヨウナを促す。
- それが元々の任務なので、もちろんそのつもりだった。
- 同意を求められたヨウナは相変わらず血走った目をして、がなり声で当たり前だと答えるが、ヒューは何も言わない。
- タクミは不信に思い、通信モニタでヒューの様子を伺う。
- フレアのコックピットで、ヒューは無表情に目を細めて、すっとモニタに映るケルビムを見つめていた。
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- あそこにグロッグの仇が居る。
- 今度こそ、俺はそいつを倒さなくてはならない。
- 一切の甘えも妥協も捨て去るんだ。
- それがミライだとしても、容赦はしない。
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- そう自分に言い聞かせると、ドス黒い感情が全身を駆け巡る。
- その表情はまた鬼の様に、ひどく険しいものになった。
- それを見て問題無いと判断したタクミは何も言わず、ケルビムを睨みつける。
- 誰もが因縁に決着を付けるつもりでいた。
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- 「よし、行くぞ」
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- ヒューの声を合図に、4機のMSは輸送機から飛び出した。
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- その頃、医務室で横になっているミライは医師の検診を受けながら、気だるそうな表情で天井を見つめていた。
- エデューは心配そうに横に付き添っている。
- 医師の診断では身体に特に異常は無く、問題ないということだ。
- その結果に安堵の表情を浮かべるエデュー。
- 今は処置も終わり、一応安静にということでベッドに寝転がっている状態だ。
-
- 「まったくお前は無茶し過ぎだぞ。水中でビーム兵器をあんな使い方するなんて」
-
- 検査も終わって落ち着いたエデューは、シールドキャノンを強引に放ったミライの行動を諌める。
- 無事だったから良かったものの、水中というとこもあり、コックピットにも影響があったら命だって危うかったのだ。
- 我侭で出撃しなかった事への怒りよりも、無事で良かったという思いの方がずっと大きかった。
- 口調もいつもの厳しいものではなくて、らしくないくらい穏やかで優しいものだ。
-
- ミライはゆっくりとエデューの方に顔を向けると、儚いような、見ている者の心が痛くなる笑顔を見せて、申し訳ありませんと謝罪の言葉を口にする。
- エデューは素直に謝るミライに、慌てて咳払いをすると手を上げて制する。
-
- 「いや謝らなくていい。無事だったならそれでな」
-
- その悲しみを湛えているように潤んだ瞳を見ていると、飲み込まれてしまいそうな、そんな気がしてドキドキしてしまう。
- 心臓が煩いくらいに鼓動を打ち、エデューはすっかり照れてしまって、それを隠そうとぶっきらぼうにしか言えなかった。
- 言ってしまってから、心の中ではもっと気の利いたことは言えないのかと頭を抱える。
- 色恋沙汰に今まで縁が無かったエデューは、こうゆう時女の子にどう言えば良いのか分からなかった。
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- そこに敵襲を知らせる警報が鳴り響く。
-
- 「行かなくては」
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- 反射的にミライが上半身をガバッと起こして、出撃に向かおうとする。
- それをエデューが肩を押さえて制する。
-
- 「今のお前じゃ戦闘は無理だ。それにフリーズが壊れてて出撃出来ない。今回はゆっくり休んでいろ」
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- 言われて、ミライは確かにMSが無ければ出撃出来ないと思い当たり、意気消沈したように項垂れる。
- だが自分が出撃しないことで、もし誰かが死ぬようなことになったら嫌だ。
- 自惚れている訳ではないが、自分がこれまでケルビムを守ってきたと言う自負がある。
- また戦いに出ることで、相手を傷付けることが怖いことも事実だ。
- さっきの戦いは無我夢中でそんなことを考えている余裕が無かった、と言うよりも無意識にそのことを排除していたように、純粋にケルビムを守るために戦うことしか考えていなかった。
- もし出撃出来たとしても、同じように迷いを振り切って戦うことが出来るかは自信が無い。
- そんな中途半端な状態では、返って他の人に迷惑を掛けることを砂漠での戦闘で理解している。
- ミライは自分でも整理のつかない複雑な思いを抱えて、俯いたまま苦悶の表情を浮かべていた。
-
- そんな落ち込むミライの姿を見たエデューは、励ますように肩にそっと手をやる。
-
- 「心配するな。お前の分まで俺が戦ってやる。必ず守ってやるよ、皆」
-
- ミライの肩に触れていた手で握り拳を作って決意すると、慌しく医務室を出て行こうとする。
- だがエデューは出入り口で立ち止まる。
- しばらく無言で立ち尽くしていたが、背を向けたまま、ミライに声を掛ける。
-
- 「戻ってきたら話したいことがある。だから俺は死にはしない」
-
- それだけ言い置いて、エデューはMSドックへと急いだ。
- 取り残された形になったミライは、エデューが去った扉を見つめながら、一体何を言いたいのだろうと思い再び横になった。
- どの道出撃出来ないのだから、今回はエデューの言うとおり休んでいようと思い直す。
- だが思わせぶりな台詞を残して行ったエデューのことが気になって仕方無く、とても落ち着いて横にはなっていられなかった。
- そこに戦闘への恐怖は無く、ミライの心にはもやもやとしたものと一緒に、何か温かなものが宿っていた。
-
- エデューがMSに乗り込んだところで、ザイオンは急いで機体を発進カタパルトに移動させながら指示を送る。
-
- 「フリーズは修理がまだで出撃出来ない。俺達4機で抑えるぞ」
-
- 不幸中の幸いなのは、相手も4機で水中用はいないということだ。
- これならフリーズ抜きでも何とか互角に応戦出来そうだ。
- だが油断は禁物。
- その4機は奪われた機体を使って何度も襲撃してきた部隊に、砂漠でも苦戦したグフVだ。
- ここまでくると、しつこいを通り越して奇妙な縁まで感じてしまう。
- ザイオンはその妙な感慨を頭を振って振り払うと、厚い雲で光を遮られた空に下に飛び出していく。
-
- ララファはケルビムから飛び出したリックディアスの姿を認めると、一目散に目掛けて加速する。
- 彼女には、グロッグのガルゥを撃ったリックディアスの姿がしっかりと記憶されていた。
-
- 「グロッグの仇、討たせてもらうわ!」
-
- ララファは低く唸りながら、リックディアスに向かってヒートロッドを振り下ろす。
- ザイオンはくっと小さく呻き声を漏らしてその鞭先から機体を逸らせ、回転しながらライフルを放つ。
- 攻撃をかわされたララファは舌打ちしてすぐにロッドを引っ込めると、射撃をかわすために機体を海に向かって急降下させる。
- そのまま落下するように高度を下げていくが、海面すれすれでバーニアを吹かせると海面を蹴って飛び上がる。
- そしてビームソードを構えると、その勢いのまま下からそれを振り上げた。
- ザイオンも歯を食い縛って、ビームサーベルを抜いて振り下ろす。
- 2機の間でぶつかり合ったビームのエネルギーが激しくスパークを起こして、機体から稲妻が零れるように照らし出す。
- その光の筋は、ララファから迸る憎悪のようにも見えた。
-
- タクミはフウジンの機影を見つけると、他の2機を制して立ちはだかる。
-
- 「お前らは手を出すな。奴との決着は、俺が付ける!」
-
- ジローもライジンの機影を見つけると、フットペダルを踏み込んで真っ直ぐに向かっていく。
-
- 「タクミ、ええ加減に決着着けたるでっ!」
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- フウジンが横に薙ぐビームサーベルを、斬艦刀で受け止めるタクミ。
- それを力を溜めて弾き飛ばすと、その勢いで大きく振り被ったそれを振り下ろす。
- ジローはそれを何とかサーベルで受け止めるが、タクミはそこで攻撃の手を緩めない。
-
- 俺は俺の理想を実現するために、目の前に立ちはだかる障害を全て排除してみせる。
- それがかつての仲間であっても、容赦はしない。
- そいつらは敵なんだ、俺の邪魔をする敵だ。
-
- タクミは必死に自分を言い聞かせながら、フウジンを追い込んでいく。
- ヒューの様な無様な姿を晒さないために。
- 自分が本当に望んでいる筈の世界へ辿り着くために。
- タクミは今度こそフウジンの、ジローの息の根を止めて、己の甘さを清算するつもりでいた。
-
- ジローはいつもよりもずっと迫力のあるライジンの攻撃を、苦悶の表情を浮かべながら必死にかわしていく。
- 今まで手抜きをしていたわけではないが、今度こそ命のやり取りを本気でやならければ殺られると、パイロットの本能とでも言うべきものがそう頭の中で告げる。
-
- 「そっちがその気やったら俺も本気出すで!」
-
- 斬艦刀をうまくいなして距離を取ると、リミッター解除の操作を行う。
- 一気にバーニアの出力が上がるフウジン。
- 轟きだした雷鳴の間を縫うように、スピードに乗ってライジンの懐に入るとビームサーベルの切っ先を伸ばした。
- タクミは呻き声を漏らして機体を捻る。
- サーベルはライジンの左の脇腹を掠めたが直撃はしなかった。
- ジローは左腕を持っていくつもりだったが、狙いが僅かにはずれた。
- いや、タクミが辛うじて反応して当てさせなかったのだ。
- 擦れ違うように立ち位置を入れ替えて向き合う2機。
-
- 「そうだ、全力で来い。俺も全力でお前を殺す!」
-
- いつになく険しい表情を見せると、タクミもライジンのリミッターを解除する。
- 背中から溢れんばかりにバーニアの光が零れ出す。
- そしてその加速力で持って、一気にフウジンと機体の顔を接触するくらいのところまで近づく。
- 間髪入れずに斬艦刀も振り下ろされる。
- だがジローもその動きについていき、半身になって避けると、ジグザグと先の読めない動きでライジンの周囲を旋回する。
- タクミは冷静にその動きを目で追い、一つの影に狙いを定めると、一直線に突っ込む。
- そのまま目にも止まらぬ速さで、ビームの交差する光だけを残して、2機のMSはぶつかり合った。
-
- フウジンの相手をタクミに任せたヒューとヨウナは、一直線にケルビム目掛けて突っ込んでいく。
- その甲板の上では、バスター装備のグロウズ2機が待ち構えている。
-
- 「またお前達か。今度こそその機体は返してもらうぜ!」
-
- フレアの姿を認めたエデューは吠えると、フレアに向かってランチャーを発射した。
- ヒューは冷静にその射線をかわすと、ケルビムに向かってビーム砲を撃つ。
- それは左のミサイル発射口に命中し、そこから黒い煙が立ち昇る。
- エデューは舌打ちして、フレア目掛けてランチャーを連射する。
- しかしフレアはそれを嘲笑うかのように、ひらりとかわしてはランチャーをケルビムに当てる。
- まるで遊ばれているようなその動きに苛立ったエデューは、甲板を蹴って飛び上がるとフレアに体当たりをする。
- その攻撃は避けられず、コックピットにも衝撃が伝わる。
- エデューは胴体を足で蹴って、甲板の上に戻る。
-
- 「ほら、お前の相手は俺がしてやる、掛かって来いよ」
-
- さらにフレアに向かって挑発をして、こちらに目を向けさせるように仕向ける。
- ケルビムにはミライが乗っている。
- 何としても彼女を守る、と言う気持ちがエデューにその行動を取らせていた。
-
- 挑発されたヒューは、ケルビムよりもエデューのグロウズが目障りだと感じ、先にそちらを落とすべきだと計算を立て直した。
-
- 「邪魔をするなら、お前から落としてやる」
-
- 凶暴な瞳を光らせて、ヒューはエデューのグロウズに向き合った。
-
- 一方エデューの攻撃を掻い潜ってさらにケルビムに接近したヨウナは、銃を乱射しながらキョロキョロと周囲を見渡した。
-
- 「白い奴はどうしたー!」
-
- 口からよだれを撒き散らして、ヨウナが唸る。
- ヨウナの頭の中には、ケルビムも他の機体もどうでも良かった。
- フリーズのことしか無かった。
- そのフリーズを討ち取ることを唯一目標にしてここまで来たのに、肝心のフリーズの姿が見えないのだ。
- これでは溜飲がますます溜まるばかりだ。
-
- 今ヨウナが乗っているマラサイにグフのフライングアーマーパーツを無理矢理取り付けて、空を飛べるようにしたものだ。
- もっともジョイント部分が正規の物ではないので、グフと比べると機動性は落ちるが。
- だがこれで空中から攻撃を仕掛けることが出来る。
- わざわざ性能が落ちる海を泳ぐ必要も無い分、汎用性は高まったと言えるだろう。
- それに改造のお陰で付いて来れたし、こうして海の上でも思う存分戦えるのだ。
- この際贅沢は言わない。
- とにかく戦ってフリーズを落とせれば、ヨウナは何でも良かったのだ。
-
- 「後ちょっとでオーブなんだ。こんなところでケルビムをやらせない!」
-
- リュウは決意を込めて、目の前に現れたマラサイ目掛けて引金を引く。
- ヨウナは放たれたビームに気が付くと、機体を錐揉みさせて回避し、リュウのグロウズ目掛けて突撃する。
- リュウは甲板にランチャーを置くと、ビームサーベルを抜いて、マラサイ目掛けて飛び上がる。
- 空中で激しく鍔迫り合いをすると、リュウは再び甲板に降りて、ランチャーを掴み直し再びビームを放つ。
- ヨウナはそのビームをシールドで受け止めると、その勢いに逆らうかのように突っ込み、激しい体当たりを見舞う。
- 甲板に押し倒されるリュウのグロウズ。
- ヨウナは止めを刺そうと、ビームサーベルを突き立てるべく両手に持って振り被った。
- リュウは咄嗟に背中を蹴り上げマラサイの体勢を崩すと、巴投げの要領で投げ捨てる。
- もんどりうって倒れこむマラサイ。
- だがヨウナは奇声を上げるとすぐに機体を起こし、ビームサーベルを振り回して迫る。
- リュウもそれに応戦しようとビームサーベルを下から振り上げた。
- 機体のシルエットが稲光の前で交差したと同時に、互いの左腕が宙に舞う。
- 次の瞬間、稲光を背に2機のシルエットが浮かび上がる。
- だが2人は稲光に全く気を取られずに、残った右腕にビームサーベルを持って振り返り、緊迫した様子でお互いを睨み合う。
- まさに一蹴即発の状況だ。
-
- こうして4組とも、それぞれ激しい戦闘を繰り広げる。
- それらの戦闘を煽るように、彼らの頭上からは大粒の雨が降り始めた。
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