- オーブ艦隊の旗艦ブリッジで、シンは複雑な思いだった。
- まさかこんな形でケルビムを迎え入れることになるとは思わなかったからだ。
- 本当であればESPEMに協力すると言うことで、すんなりとケルビムを受け入れ、月に戻るための手配を取れる筈だった。
- だがエルリックの演説で、それは叶わなくなる。
- ESPEMに手を貸すことが、国際的にテロリストに手を貸すことと見なされることになってしまったからだ。
- 結果としてケルビムをオーブ艦隊で連行するような形で、オーブへ連れて行くことしか出来なくなっていた。
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- ESPEM本部で襲撃に巻き込まれた後、キラの手引きですぐにオーブへと戻ってきたシン。
- 状況をカガリに報告した後、直ちに秘密裏に対策のために行動を開始した。
再び世界を巻き込んだ戦争が起こらないようにと。
- だがこちらが手を打つ前に、世界の状況は一変した。
- 解体されたと思っていたブルーコスモスが再び表舞台に出てきて、地球連邦政府の実権を事実上握ってしまった。
- さらにはキラのシャイニングフリーダムが落とされ、MIAになったというのには驚いた。
- まさかキラがMS戦において負けるなど、ありえないことだと思っていた。
- 逆にそれだけの力を持った相手が現れたとなると、ぐずぐずしていはいられない。
- すぐにカガリ達も対抗策を講じ始め、水面下では徹底抗戦も辞さないように準備が進められていた。
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- そんな矢先のケルビムからの通信だった。
- オーブ行政府に通信があった時には驚いたが、事情が事情なのですぐに受け入れ準備に入った。
- だが取り巻く環境はあまりよろしくない。
- ブルーコスモスが地球連邦を牛耳ったことで、コーディネータ排斥の気運が高まりつつある。
- それはESPEMの解体にも繋がっている。
- コーディネータであるラクスがトップにいる組織は信用出来ない、というのだ。
- 大変な言い掛かりだが、かつてブルーコスモスが取ってきた対応を見る限り、譲歩するつもりは無いだろう。
- そしてオーブにも、連邦に加わるように打診があった。
- 当然カガリは中立維持を即答で返している。
- それだけに、ケルビムを受け入れてESPEMへ特別な便宜を図った見なされては、攻め入る口実を与えることになりかねない。
- とは言っても、ケルビムの部隊はオーブからの出向者も部隊メンバーに含まれているし、地球軍からの出向者もいる。
- 彼らを放っておくわけにもいかず、そのためいきなり侵略してくることは無いだろうと判断したのだ。
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- そんなオーブ側の紆余曲折の末、とりあえずオーブ艦隊がケルビムを誘導し、オーブ本土へと到着した。
- ザイオン達は一先ず安堵の溜息を吐く。
- これでようやく襲撃の心配をせずに眠ることが出来るし、とりあえずの任務を果たすことが出来た。
- 初めて訪れる者、戻ってきた者等反応は様々だが、当初の目的を達成できた安堵感が他のクルー達の間にも広がっていた。
- それでも問題が解決したわけではない。
- これから一体どうすれば良いのか、自分達の処遇はどうなるのか、ESPEMはどうなってしまうのか、心に多少の余裕が生まれたことで逆にそれらのことが心配になりだす。
- また失った仲間のことを思うと、心からは喜べなかった。
- すぐに意気消沈した表情で、ぐっと奥歯を噛み締める。
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- その頃シンは港に入ったケルビムのブリッジに、オーブ政府としての依頼や決定事項を伝えるために上がった。
- そこではシンの目から見ても、クルー達には疲労の色が見て取れた。
- 準備もままらなないまま飛び出して、ここまで気の休まることがなかったのだろう。
- それを見て、少しミネルバに乗っていた時の事を思い出す。
- あの時の自分も、突然の襲撃から準備もままならないままプラントを飛び出し、地球にまで降りてしまった。
- そして大きな戦いの渦に飲み込まれ、自分で理解しないまま力を振るって、世界に混乱を招いてしまった。
- 懐かしさ、恥ずかしさや後悔の念等が込み上げるが、今は感傷に浸っている場合ではない。
- シンは自嘲すると自分がここまでやってきた目的を果たす。
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- 「この部隊の責任者、及びミライ=ヤマトに行政府への出頭を依頼する」
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- シンの通達に、ザイオンとレイチェルは顔を見合わせた。
- 自分達が呼ばれるのは分かるが、ミライも呼ばれるということに疑問が生じる。
- ミライがヤマト事務総長の娘だからと言う理由は分かるのだが、問題はそれではなく、何故ケルビムに乗っていることを、オーブが知っているかだ。
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- ミライは正式にはケルビムのクルーとして登録していない。
- 緊急事態によって搭乗したのであるから元々メンバーに入っていないのは当然だし、キラから指令を受けた時も、結局は部隊への登録措置は取られなかった。
- もちろんESPEMへの志願兵という措置は取られているが。
- また今回の通信でも、ミライが乗っていることは敢えて知らせなかったのだ。
- だから本来であれば知りえる筈が無いのだが、それでも知っていたと言うことは、情報が何処からか漏れているということが考えられる。
- もしくは誰かが漏らしている、と言うことだ。
- ザイオンとレイチェルは、いかに自分達がクルー達の行動を掌握出来ていなかったかということを思い知らされた。
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PHASE-33 「オーブの獅子」
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- シンに連れられて行政府を訪れたザイオンとレイチェルは、緊張した面持ちで案内された部屋の扉を潜った。
- それもそのはず。
- オーブの代表首長と言えば、子供でも知らない者はいないと言われる、政界の大物だ。
- 女性にしてその豪腕でオーブをしっかりと治めている偉大な人物との面談に、緊張するなという方が無理な相談だ。
- 直立不動の姿勢で部屋の入り口に立ち竦む2人。
- だがミライだけは全く緊張の色は見せず、しかし少し辛そうな表情で2人の後に続いた。
- オーブを訪れるのは久し振りだ。
- しかし以前訪れた時は、父と母に連れられてだった。
- そのことが胸をチクチクと突き刺すのだ。
- そうして俯きながら扉を潜ったミライを心配そうに見つめながら、シンは3人が入った部屋の扉を閉めた。
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- 部屋に入った3人を先ず迎えたのはアスランだ。
- 固い表情の彼らに苦笑を浮かべると、軽く頷いて目の前の席に座るように促す。
- それから後ろで背を向けている人物の方を振り返る。
- そこに立っている人物こそ、この国の代表首長その人だ。
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- カガリは窓辺に立って、じっと外の景色を見ていた。
- その胸中には色々なものが渦巻いていた。
- これからの世界のこと、オーブがどう巻き込まれていくか、遠く離れた友人達は大丈夫か等、心配事が尽きることは無い。
- そんなことを考えていたから、誰かが部屋に入ってきたことにすぐに気付かなかった。
- アスランに声を掛けられ、そこでようやく呼びつけた者達が到着したことに気が付き、彼らの方を振り返る。
- そして柔らかい笑顔を浮かべた。
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- 「ようこそオーブへ。私がオーブ首長国連邦、代表首長のカガリ=ユラ=アスハだ」
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- 凛とした声で名乗るカガリに、ザイオンもレイチェルも圧倒されっ放しだ。
- 固い表情と動きで敬礼をすると、上ずった声で名乗る。
- カガリはすっかり恐縮してしまっている2人に苦笑を浮かべ、もっと肩の力を抜くといいと気さくに話し掛ける。
- それからつかつかとミライのところまで歩み寄る。
- ミライも黙ってカガリを見つめると、近づくのを待っている。
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- 「久し振りだな、ミライ。ここまでお前も大変だったな」
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- カガリは正面に立ち、愛しむ瞳を細めて、ミライにそっと慰めの言葉を送った。
- 父を目の前で失う辛さは彼女も経験している。
- だからミライの気持ちが痛いほど分かっていた。
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- 「はい、カガリ伯母様もアスラン伯父様もお元気そうで」
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- ミライは心配を掛けまいと、精一杯の笑顔でそう答えたつもりだった。
- だがカガリはそれ見て苦笑を浮かべると、ゆっくりとミライの前に立ち、柔らかな母を思わせる声色で語りかける。
-
- 「もう我慢しなくていいんだぞ。ここにはお前を苦しめるものは、何も無い」
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- カガリの目に見ても、ミライが無理をしていることは一目瞭然だった。
- まだ少女と呼べる年齢なのに、父の死を目の当たりにして、それでもMSに乗って戦いを潜り抜けてきたのだ。
- 辛くない筈が無い。
- カガリはそっと、その華奢な体を抱き寄せた。
-
- ミライはその優しい言葉、そして久し振りに触れた気がする人肌の温もりに、母と父に抱かれた時の事を思い出し、今まで我慢していたものが一気に溢れてきた。
- それは嗚咽となり外に零れ、目からは大粒の涙が滴り落ちる。
- そして最後には大きな声を上げて、ただひたすら泣いた。
- 父や仲間を目の前で失った悲しみを、戦闘に身を投じた辛さを、少しでも忘れるように。
- カガリは笑顔を浮かべながら、髪を優しく撫でてそれを受け止める。
- 傍から見て、それは娘をあやす優しい母のようであった。
-
- キラとカガリが双子の姉弟であることは、一般には公表されていない。
- そのため2人に近しい関係者以外は、そのことを知らないのである。
- だからミライがカガリ、アスランと顔見知りなことに、ザイオンとレイチェル驚いた。
- だが、よくよく考えればそれは当然のことかも知れないとも思い直す。
- ラクスとカガリが友人であるのは有名な話だ。
- お互いに外交交渉でも、プライベートでもよく交流しているということを聞く。
- となれば当然、ラクスの娘であるミライとも面識はあってしかるべきだろうと考えた。
-
- そしてミライの心をいとも簡単に引き出したカガリを、改めて凄いと感想を持つ。
- 何故カガリが為政者として優秀なのか、垣間見た気がした。
- ただ厳しいだけでは無い、母親のような慈しみの心で、国民のことを考え、接しているからだと。
-
*
-
- ミライが落ち着いてから、ようやく非公式の対談ということで、カガリ、アスランとザイオン達は向かい合って席についた。
-
- 「君達の戦闘記録を読ませてもらった。色々と大変だったようだな」
-
- アスランが手元の資料を見ながらそう切り出した。
- 実際彼らは初陣からここまで、かなりの厳しい状況を潜り抜けている。
- アスランは戦士、部隊としてのそんな彼らをかなり評価していた。
- そう、まるでかつてのアークエンジェルを思わせる戦いぶりだ。
- 懐かしいような痛いような気持ちで、そっと自分がそのアークエンジェルを追っていたことを思い出す。
-
- すると突然、ザイオンが勢いよく立ち上がり頭を下げた。
-
- 「申し訳ありません。私の至らなさのために、お預かりした大事な人材を失ってしまいました」
-
- 最初の襲撃で負傷した者、そして目前まで来ていながらジローとフウジンを失ったことに、ザイオンは責任を感じていた。
- 緊張していたのはただオーブの代表と会うからだけでは無い。
- そのことをどう謝罪し、また償えば良いのか、彼はずっと悩んでいたのだ。
- そしてこれまでの戦跡を多少なりとも湛えられて、居た堪れなくなったのだ。
-
- レイチェルはそんな彼の行動を内心溜息を吐きながら、しかし彼らしいと半分は笑みを浮かべていた。
- これまで見てきた地球軍の上官と言うのは、己に非があってもそれを素直に謝罪はせず、何かと言い訳を見繕っては責任逃れをしてきていたような者ばかりだった。
- また組織の上に立つ者には、多少そういった責任回避能力も求められることも事実。
- そうでなければ、部下共々罰が下ることもあるのだから。
- そうして部下を守る意味では、ザイオンは軍人の隊長としては優秀とは言い難いかも知れない。
- まして非公式とは言え、今はESPEMを代表している立場になる。
- 地球連邦相手であれば、ESPEMはさらに苦境に立たされかねない。
- しかしこの素直さ、真っ直ぐさは人間的にはずっと素晴らしいと、これまでの行動の中でそう評価を見出していた。
- 困難から逃げずに立ち向かい、部下のことを真剣に考えて向き合おうとしている。
- 自分も上官としてはそうありたいと願い、そんな彼の部下で良かったと思うのだ。
-
- 一方、ザイオンの行動にカガリは淡く微笑むと、首を横に振る。
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- 「顔を上げろ、バークス隊長。それは君のせいではない。タクミが裏切ったと言う件も、本来はこちらで充分に調査していなければならなかったことだ。むしろそのために色々迷惑を掛けてしまって、すまないと思っている」
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- 言いながら頭を下げた。
- それはカガリの偽らざる本音だ。
- まさかオーブの出向者から、テロリストと通じている者がいようとは思わなかった。
- それも最新型のMS搭乗者であったなど、あってはならないことだ。
- もちろんカガリ達オーブの軍本部も、出向者の素行や素性は確認しているのだが、そこで発見できなかった。
- 油断があったのかも知れないが、それだけデュランダル派が巧妙に、すぐ近くに潜り込んでいるということでもある。
- そう言う意味では、これから先もどこで裏切り者が出るか分からないという不安はある。
- それでも彼女やラクスの根本にあるのは人を信じるということ、人の善なるものを信じて、そこに訴えかけて、より良い世界を共に目指すという信念だ。
- だからこそタカ派の者からすれば甘いと思えるのだろうが、それこそが最終的に世界から争いを無くすことができる道だと信じている。
- しかし信じているからこそ、カガリには裏切り者が出たことはショックだったし、調査不十分の責任も感じてしまう。
- その思いがカガリの口を重くした。
-
- ザイオン達は頭を垂れるカガリに内心慌て、彼らも口を閉ざしてしまう。
- その重苦しい空気を取り繕うように、アスランが言葉を引き継ぐ。
-
- 「ともかく今はその責任の所在よりも、これからどうすべきか、と言うことの方が重要だ。過去に囚われていては先へ進めないからな。そのための意見を、厳しい状況を潜り抜けてきた君達の意見を聞かせて欲しい」
-
- カガリとアスランにそう言われたことで、ザイオンの心は少し軽くなった。
- 過去に起こった出来事は変えられない。
- だが未来に起こることは、これからの自分達の意志、行動次第で変える事が出来る。
- 彼らもそうやって乗り越え、時代を築いてきたのだ。
- つまりはザイオン達にも、その意志であり力を持って欲しいと願っているのだ。
-
- そんなアスランの意図するところはよく理解出来ていないが、促されてザイオンは正直に今の心境を語った。
-
- 「私はこれからどうすれば良いのか分かりません。どうやって戦っていけばいいのか、いえ、戦うべきなのかどうかですら、判断出来ないのです」
-
- 苦しげな表情で言葉を搾り出す。
- レイチェルも同じような表情を浮かべて俯く。
- 彼らだけではない、ケルビムのクルー達は皆、この先のことに不安でいっぱいだった。
- これからどうすれば良いのか、自分達がどうなっていくのか、不安で仕方が無いのだ。
- ザイオンとレイチェルは、部隊の上に立つ者としてクルー達の前ではそれを隠していたが、カガリ達を前に強がりや嘘は無意味だと、その不安を吐露する。
- ミライも少しすっきりした気持ちで、今の自分の考えを述べる。
-
- 「守るために戦っても、結局それは相手の大切なものを奪うことになります。戦うことに私は正義を見出せません。ですから私は戦いたくはありません。ですがその気持ちを私だけが持っていても仕方が無いことも確かです。力を持つ者が戦わないことで、守られるべき人達の幸せが、明日が奪われるのですから。だとしますと、何が一番正しいのか、今の私には分かりません。ただ誰も戦わない、傷つかない世界であれば良いのにと思います」
-
- 戦うも罪、戦わぬも罪であるとしたら、一体どちらを選択すればいいのだろう。
- 父や母であれば、どちらを選択するのだろうか。
- 或いは目の前の伯母や伯父ならばどうだろうか。
- そんなことを思いながらミライは改めて戦うことの意味を考え、少しずつキラの言わんとしていたこと、ラクスが目指していた世界がどんなものかを理解し始めていた。
-
- 3人の様子を見て、カガリは一つ頷くと、ゆっくりと口を開く。
-
- 「世界は今大きく動こうとしている。ブルーコスモスが再び支配した地球連邦。そのために孤立してしまったESPEM」
-
- そこでミライは辛そうに目を伏せる。
- ケルビムと共に飛び出してからは、母の様子も分からない。
- 仲の良かった友人達や、EPSEMの職員達もどうしているだろうか。
- 僅かな時間の筈なのに、とてつもなく長い時間、そして遠くまで来てしまったようで、懐かしさが込み上げてくる。
- それを思うと、急に心配になった。
- ミライの心配を余所に、カガリはさらに言葉を続ける。
-
- 「またプラントにも、どうやら不穏な動きがあるようだ。地球連邦もこれからどんなことをしてコーディネータ排斥を目論んでくるか分からないからな。それを阻止、或いは反抗しようと言う者は多いだろう」
-
- ミライ達にとっては信じられない話だった。
- 彼らは以前の大戦を知らない、歴史の勉強でしかその話をしらない世代だ。
- だからナチュラルであろうとコーディネータであろうと、お互いに溝があることを知ってはいるが、それでも同じ人間でそこまで憎しみ合えると言うことが考えられない。
- 自分達がその混成で出来た部隊に居るだけに余計だ。
-
- しかし彼らの思いを裏切るように、今世界に流れている不安定な雰囲気は、どこかで小さな綻びの様に崩れると、一気に不安や憤怒、嫉妬といった感情が押し寄せる。
- それが人々の思いを時の惑わせ、凶暴な暴徒とも化す。
- その奔流が大戦の要因にもなったのだ。
- そのことを良く知るカガリ達は、それこそを止めたいと頑張っている。
- だがそのためには、ミライ達大戦の悲劇を知らない世代も、これからどうすべきかを自分で考え、行動しなければならない。
- 戦うことの意味と悲しさを知り、それを真に止めたいと願う心が。
-
- しかしそのためには、まだまだ時間が必要なようだ。
- 無理も無い。
- これからの時代を担うべき若者が育ってきた穏やかな世界からは急激に変わり始めていて、思考や感情が少しそれに付いていっていないのだから。
-
- 「これからどうすべきかはゆっくり考えるといい。少なくともオーブには争いは無い。まだ時間もあるから先ずはよく休んでからだな。少しであればオーブへの上陸も許可しよう」
-
- カガリは昔から変わらない、屈託の無い明るい笑顔で休息を取ることを勧めた。
- 確かにここまで、ケルビムクルー達は緊張の連続で、ゆっくりと休めてはいない。
- その疲労感が、彼らの心を苦しめてる要因でもあることを、カガリは見抜いていた。
- それに今はまだ時間がある。
- 準備は急がねばならないが、焦って物事を見誤っては後悔もするだろう。
- だから今じっくりと考えて欲しいと思う。
- 自分達の未来はどうあるべきか、どうして行きたいのかを。
-
- ザイオンはしばらく考え込んだが、カガリの申し出を甘んじて受け入れることを決めた。
- これまでとにかく目の前の戦いを切り抜けることばかりで、じっくりとこれからのことを考えたことは無かった。
- 与えられた任務に従うことが当たり前で、それ以外の世界についてはあまりにも無知だということを思い知らされていた。
- ならば今はそれを知り、考える時間なのだろうと思うことにする。
- ミライもそのことには依存は無かった。
- ただ急に見えている世界が変わり行く中で、ゆっくりと休めるかどうかは心配だった。
-
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