- 「それは我々にESPEMを、今ここにいる仲間達を裏切れ、ということですか?」
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- レイチェルは戸惑いながら、しかしはっきりとした不快感を含んだ声色で聞き返した。
- だがその問いただした通信モニタに映る相手は、淡々とした口調で命令書を読み返すばかりで答えになっていない。
- それがまたレイチェルの苛々を募らせるのだ。
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- オーブに辿り着いてから1週間。
- 艦やMSの修理などで細々と仕事はあるが、次の指示は届いていないためそれほど急ぎのものは無く、半分休暇のような状況でケルビムのクルーはのんびりとした時間を過ごしていた。
- 尤も地球連邦政府の発表やプラントの宣言を聞いた後なので、誰もが先行きに不安は感じてはいるのだが。
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- そんな中でレイチェル宛てに通信が入った。
- それはESPEM本部からではなく、地球軍から極秘指令を伝えるものだった。
- 地球連邦軍から極秘に通信が入ったことを不審に思いながら、艦長室で1人開いてみれば、それは地球軍より出向しているケルビムクルーは直ちに出向を取り消し、地球軍の部隊に戻すというものだった。
- それも艦と搭載されているMSを持って、本部への帰搭せよというのだ。
- 予想外の通達にレイチェルは驚き、そして怒りが込み上げる。
- 少なくともレイチェルの中には、地球軍所属であろうとそうでなかろうと、ましてナチュラルであろうとコーディネータであろうとここまで共に戦ったクルー達は皆仲間だという意識がある。
- 命令はそんな自分達の思いを無視し、また他の仲間達を踏み躙るものでもあった。
- それにケルビムは大きく技術提供しているからともかくとしても、搭載しているMSは地球軍が所有しているものでもなければ技術提供したものでもない。
- これではほとんど強奪と変わらない。
- 驚きよりも呆れたとしか言いようが無い、傍若無人極まりない命令だ。
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- レイチェルの本来の所属は地球軍であるから、唯単に地球軍に戻るだけの命令であれば異議は無い。
- 仲間と離れ離れになるのは辛いことだが、何時かは戻ることは分かっていたのだから、それも仕方の無いことだとまだ割り切れる。
- しかしいくらエルリックの宣言を聞いた後で、地球軍がこれからコーディネータに戦争を仕掛けようとしているとは言え、この命令には全く納得出来なかった。
- まるで仲間を裏切っているかのような背徳感に寒気がし、地球連邦軍の上層部に対して不信感が募るばかりだ。
- 軍人としてあるまじき行為だとは分かっていても、反論せずにはいられなかった。
- しかし命令を伝える兵士からも、命令どおりに伝えているだけなのだろう。
- 上層部からの命令に拒否権は無い、速やかに実行されたし、ということの一点張りだ。
- そしてレイチェルはあくまで地球軍の士官である以上、それに従わざるを得ないのだ。
- しばらく堂々巡りの押し問答を繰り返した後、レイチェルは渋々了解しましたと敬礼をすると、通信機のスイッチを乱暴に切る。
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- 最初は怒りに顔を歪めていたが、それは次第に切なげな苦しいものに変わっていく。
- 結局自分は仲間達を裏切る決断をしたのだと思うと、自分自身を情けなくなった。
- 同時に自分が地球軍に戻ることは、ザフト軍より出向していたザイオン達と、戦う羽目になるのだということにも気が付いた。
- もしかしたら、ケルビムや搭載MSで彼らを討つことになるかも知れないと。
- 今更ながら、自分がどれほど恐ろしい決断をしたかと思うと、やり場の無い怒りが込み上げる。
- 何故あんな命令を聞き入れてしまったのだろうという後悔の念も押し寄せる。
- 仲間の命が掛かっているのに、命令違反が何だと言うのだ。
- だがそう思っても後の祭りだ。
- 軍人としての責任と人としての道徳のせめぎ合いに苦しみながら、真面目な彼女には今更命令を無視することは出来なかった。
- それに他の出向者にも迷惑が掛かってしまう。
- 自分だけではどうすることも出来ず、自分が裏切り者になってしまうことがひどく疎ましく、悲しく、腹立たしく感じた。
- レイチェルは掌に爪が食い込むほど拳を握り締めると、その手で机を思い切り叩きつけた。
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PHASE-37 「別離」
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- レイチェルは気持ちが落ち着くと、ともかくザイオンに報告しなければならないと、隊長室を訪れた。
- だが部屋に入って僅かにたじろぐ。
- そこにはカガリとアスランがいたためだ。
- それなりの時間はいたのだろう。
- 机の上には3人分のカップがあり、どれも空になっている。
- 出直そうかとも一瞬思ったが、それほど悠長に時間があるわけではないので、重要なことを報告に来たのだと言うことを伝える。
- しかしカガリもアスランも一向に出て行く気配も無く、ザイオンも追い出す気配は無い。
- どうやらこのままカガリ達も一緒に報告を聞く、というスタンスのようだ。
- レイチェルは重要な命令をザイオン以外に聞かせるのはどうかと考えるが、カガリであれば相談も兼ねてどうすれば良いか助言をくれるかもしれないと思い直すと、一つ大きく息を吸い込んで、自分の中になる不快な感情を抑えこんで、受けと取った命令を告げる。
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- 「私達地球軍所属の出向者には、本部への帰搭命令が出ました。ケルビムと搭載機を持って、地球軍に復帰するようにとのことでした」
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- ザイオンは最初驚いた表情を浮かべるが、少し切なげな笑みを浮かべると、あっさりと分かったと頷く。
- もっと色々と反論なり質問があることを覚悟していたレイチェルは、若干拍子抜けする。
- だがカガリがここにいる理由を聞いて、驚くと同時に納得する。
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- カガリもまた、オーブ軍より出向しているメンバーの一時帰国を伝えに来たのだ。
- ザイオンに対して申し訳ないとは思いつつ、今の世界の情勢では自国の防衛強化は重要なことになる。
- もとよりかなりの人員や技術をESPEMに割いているオーブは、いくらかは人材を呼び戻さなければ人手が足りないのだ。
- 情勢が情勢なので、ザイオンも致し方ないとカガリの話を聞き入れていた。
- そこにレイチェルの報告である。
- つまりケルビムのクルー達はここでバラバラになる、と言うことになる。
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- 同じ部隊として編成されてから一緒に行動したのは数ヶ月という時間だったが、改めてもう何年も苦楽を共にしたような気がするのは気のせいではないだろう。
- それだけ濃い時間を共有したのだ。
- そのことを改めて認識すると、レイチェルはしばし逡巡して、意を決して口を開いた。
-
- 「私は艦もMSも置いて、地球軍に戻りたいと思います」
-
- 命令どおりに持ち帰っても、ケルビムやフリーズがコーディネータを討つ道具に使われるだけだ。
- そんなことには絶対に使って欲しく無かった。
- そうなるくらいなら、懲罰覚悟でケルビムを置いて戻った方がよっぽどマシに思えた。
- 己の保身や利権しか見えない上層部には分かるまい、この素晴らしい記憶を汚されたくない、彼女なりのささやかな抵抗だった。
-
- レイチェルの言葉に、ザイオンは今度こそ心底驚いたという表情を浮かべて立ち上がる。
- 少なからずレイチェルの考えや気持ちは理解出来るが、そんなことをすればレイチェルがどんな処罰を受けるか分かったものではない。
- ザイオンはそんなことは少しも嬉しくなかった。
- しかし本部とも連絡が取れないため、艦やMSをどうするかは自分達で決めなくてはならないこの状況で、どうするのが一番良いのかすぐには思い浮かばない。
-
- カガリとアスランも自分のことをもっと大事に考えろと諌め、何か良い案は無いかと思考を巡らせる。
- 自分を犠牲にして仲間や友達を助けても、残された者の悲しみ、心の痛みを知る彼らはそれが最良の決断だとは思わない。
- 誰かの犠牲でしか成り立たない世界など、彼らは認めない。
-
- うーんと誰もが頭を捻る中で、ふとアスランに閃いたものがあった。
- それほど効果があるものではないが、と前置きした上で自分の考えを披露する。
-
- 「MSは降ろしてケルビムだけで帰搭するのはどうだ。戦艦は寄港の誤魔化しようが無いが、MSはこれまでの戦闘で全て大破したということにしてしまえば、データも誤魔化せるし、向こうだって納得せざるを得ないからな。それならまだ処罰は軽くなる、或いは無しで済むかも知れない」
-
- それであちらが全て納得できるとも思えないが、カガリはひどく納得した様子でその案を勧め、何ならオーブ代表として艦内調査の報告書を署名付きで提出するという。
- 地球連邦政府に加盟しないオーブの代表の署名だけに、アスランが言うようにどこまで効果の程があるかは分からないが、レイチェルにとって、ザイオンにとってもその申し出はありがたかった。
-
- それからいくつか意見を交わした後、それで地球軍に戻ることで話がまとまると、ザイオンはスッと立ち上がり背筋を伸ばし、寂しげな笑みを浮かべて右手を差し出してきた。
-
- 「今まで、頼りない私を支えてくださって、ありがとうございます」
-
- 他人行儀名言葉を並べたが、それはザイオンの偽らざる本音だ。
- クルーのほとんどが自分よりも年齢が上だった。
- そして自分には若く経験も無かったため、レイチェルのサポートが無ければここまで辿り着けることは無かっただろう。
- 命令違反とも取れる無茶な決断にも付いて来てくれて、時に意見がぶつかったこともあったが、彼女が我侭に付き合ってクルー達を引っ張ってくれたから、何とかここまで来れたと思う。
- 彼女が副官で良かったと、ザイオンは心から思っていた。
-
- 一方レイチェルは少し驚いた表情でザイオンの顔とその手を見つめ、しかしザイオンの気持ちが伝わると、ふっと表情を和らげて、それから自分も右手を差し出してガッチリと握手を交わす。
- ザイオンが言ったことは自分も同じ気持ちだった。
- ザイオンの決断力が無ければ、途中で命を落としていたかも知れない。
- 時にその命令に苛立ち悩んだこともあったが、今ならそれは正しかったと言える。
- 結局彼は隊長として優秀だったのだと。
-
- そして触れている手から伝わる温もりが、心を熱くして落ち着かなくする。
- 自身の感情に若干戸惑うが、自分は隊長としてだけでなく、男性としてザイオンに惹かれていたのだなということを自覚する。
- 彼はいつだって真っ直ぐなのだ。
- 任務を遂行する時も、人と向き合う時も、逃げずに正面から立ち向かい、それを乗り越えてくる姿を傍で見てきた。
- それが彼女の心を強く揺さぶったのだ。
-
- このままここに留まれたどれだけ良いだろうかという考えがまた頭をもたげるが、懸命にこの思いを打ち消す。
- 彼はザフト軍に所属するコーディネータで、自分は地球軍に所属するナチュラルの士官だ。
- これから相成れない道を進むことは間違いない。
- そして二度と、こうして会うこと、一緒に戦うことは無いだろう。
- きっと思いが届くことも叶うことも無い。
- ならばここで全ての思いを置き去りにしていこう。
- レイチェルは芽生えた気持ちを振り払うと、精一杯の笑顔を浮かべて別れの言葉を紡いだ。
-
- 「こちらこそ、ここまで不甲斐ない私達を引っ張ってくださって、ありがとうございました」
-
- せめてこの先、敵同士として戦場で会わないことを祈りながら、レイチェルは躊躇いがちに握っていたその手を離した。
- ザイオンには、レイチェルの浮かべた笑顔が今までで一番美しく、悲しげに見えた。
-
*
-
- ケルビムは出港準備が整うと、地球軍所属のクルーだけを乗せて港を出発した。
- MSはモルゲンレーテのハンガーの中に納まっている。
-
- レイチェル達が地球軍に戻る話を聞かされたミライ達は、軽い衝撃を受けた。
- まさかここで突然別れることになるとは思っていなかった。
- またリュウ達もオーブに残るということを聞かされて、それが胸に抱える不安を煽る。
- これから世界が、自分の置かれる状況がどうなるか分からなくなっていく中で、それぞれの場所でそれぞれの道を踏み出さなければならないことに。
- まだ心が暗闇の中を彷徨っているミライにとっては、それは足元が覚束無い、立っていることが恐ろしい感覚すらある。
- その時にまるで我が家を取り上げられたようだ。
- ケルビムが遠ざかっていくのを見送りながら、ミライは寂しそうに瞳を揺らした。
- ここまで苦しみながらも戦いを潜り抜けてきた者同士。
- ミライもまた、ケルビムクルー達に対して強い仲間意識を抱き始めていた。
- 何時かは誰もが、それぞれの場所に帰らなければならないことは分かっていた筈なのに、こうして離れ離れになることになって、ようやくそのことに気付いたのだ。
- いつも大切なものは、失ってから気付く。
- 父の時も、エデューの時も、そして今も。
- 父やエデューのことを思い返すと胸が痛むが、2人を取り戻すことなど出来ない。
- その痛みを与えたのも、少なからず癒してくれたのもあの場所だったのだ。
- ミライは胸にポッカリと穴が開いたような喪失感を覚えながら、ケルビムから目を離すことが出来なかった。
-
- カガリも少し寂しそうにミライの横に並んでケルビムを見送りながら、その姿が海の彼方に消えるとザイオンに向かって尋ねる。
-
- 「ザフト軍から出向している者達はどうするんだ。戻って来いという指令は来ているのか?」
-
- オーブの代表というよりラクスの親友として、ザイオン達のことを気に掛ける親心のようなものだ。
-
- プラントも地球連邦と徹底交戦の構えを見せているため、何時かはその命令も出てくると思われた。
- しかしオーブにいるから通信が届かないからなのかは分からないが、今のところそういった指令は受けていない。
- それに艦を失った状態になった今では、もし指令が出ていたとしても受け取ることが出来ない。
-
- 「いえ、私達は一度ESPEM本部へ戻ろうと思います」
-
- ザイオンは渋い表情で答える。
- 何も指令は来ていないが、これまでの部隊の戦況等の報告をする必要もあり、このままここに留まっている訳にもいかない。
- それにもし指令があるのなら、やはり本部に来ているのだろうとも思われた。
- ケルビムが無い今、指令を受け取ることが出来ないので尚更だ。
- それを確認する意味でも、逸早く本部に戻る必要があると見解を示した。
-
- カガリはザイオンの言葉にそれもそうかと納得して頷くと、今度はエミリオンに向かって尋ねる。
-
- 「君もそうするのか?」
-
- エミリオンはナチュラルだ。
- だが彼女は出向という形ではない。
- ESPEMに直接所属している、異色の経歴の持ち主だ。
- 結局ケルビムクルーでESPEMに戻るのは、彼女以外はコーディネータだけということになる。
- ザイオン達が彼女を差別的な目で見ることは無いだろうが、彼女がESPEMに残るということはナチュラルの裏切り者とレッテルを貼られる可能性もある。
- その辺を慮っての問い掛けだ。
- もし望むなら、オーブでの受け入れも検討する準備は出来ている。
-
- しかし、エミリオンは迷いの無い表情で答える。
-
- 「はい。私は地球軍でもザフト軍でもありません。ESPEMの人間です。ですのでやはりラクス様にご報告し、今後のことをご相談したいと思います」
-
- ハッキリした物腰に、エミリオンがどれだけラクスを信頼しているかが窺える。
- 同時にラクスがエミリオンをどうしてケルビムに乗せたのかも、少し分かる気がした。
- 彼女は真っ直ぐこれからのことを見据えている。
- 自分が何をすべきなのか、ラクスに相談すると言いながら、彼女の中にはきっと既に答えは出ているだろう。
- ケルビムに乗って戦場を経験して得たものは、きっと大きな財産になったと思える。
- だからこそESPEMの、ラクスと共にこれからも歩みたいというのがエミリオンの心からの願いだった。
- それについてはカガリも微笑ましく思いながら、彼女の気持ちを尊重することにする。
-
- 「分かった、本部に戻るためのシャトルは用意させよう。MSも一緒に持って上がるといい。今の君達にはあの力が必要になる可能性が高いからな。それと捕虜はこちらで預かっておこう」
-
- 捕虜とはヒューのことだ。
- ヒューは捕縛されてから、ずっとケルビムで治療と尋問を受けていた。
- 襲撃した部隊のことなどを聞き出すためだ。
- しかしヒューはぶすっとした表情を崩さず、一切の黙秘を続けていた。
- それはオーブに到着してからも変わらず、今のところ何の情報も引き出せてない。
- そしてケルビムが地球軍に行くことになった時に、一緒に降ろされた。
- ヒューもコーディネータであるため、地球軍に連れて行かれてはどのような仕打ちを受けるか分からなかった。
- かといって今の状況ではESPEM本部に連れては行けず、情報が引き出せるまでオーブでもうしばらく勾留されることになる。
-
- ミライはそれに安堵したような残念なような複雑な思いを抱えていた。
- 何故かは分からないが、ヒューとはもう一度会って、じっくりと話をしたいと思う自分がいた。
- それは叶わぬ願いだとは分かっていながら。
- もしかしたらこのまま二度と会えなくなるかも知れないからか、それとも別の理由があるのか。
- とにかくヒューのことを考えると心がもやもやと落ち着かなくなるのだ。
- それを決して誰にも悟られぬように、そっと心の奥に仕舞い込む。
-
- カガリの話がまとまると、同じくミライ達と一緒にケルビムを見送っていたリュウがポツリと零す。
-
- 「寂しく、なりますね」
-
- まだ新人である彼にとって、初めて一緒に戦った仲間だ。
- 短い時間だったが、それでも多くのことを教わり経験してきた。
- 辛かった記憶も共有できたことが、ここまでやってこれた要因だと思うと、やはり離れ離れになるのは名残惜しい。
-
- ザイオンは苦笑を浮かべて、そんなリュウの肩をポンと叩く。
-
- 「君はいいセンスを持っている。このまま腕を磨けば立派なパイロットになれるさ。オーブ軍でもしっかり頑張れよ」
-
- リュウの実力を認めた上で、そう励ました。
- しかしリュウはその激励を、少し複雑な思いで受け取った。
- これからもMSのパイロットでいるということは、どこかでタクミと戦わなくてはならないかも知れないということだ。
- その覚悟も出来ないまま、果たしてやっていけるのかという不安がある。
- オーブに戻ることが決まった時点で、パイロットを、軍を辞めようかとも考えていたのだ。
- だが上司であったザイオンが自分のことを認めてくれていたのは素直に嬉しかった。
-
- 様々な思いが溢れてリュウは涙が零れそうになったが、それをぐっと堪えると姿勢を正して敬礼をする。
-
- 「今までご指導ありがとうございました」
-
- すると一斉にリュウに倣い、オーブの出身者達がザイオンに向かって敬礼をする。
- ザイオンはその光景に目を細め、姿勢を正して向き合い敬礼を返す。
-
- 「こちらこそ、頼りない私に付いて来てくれて礼を言う。皆元気で」
-
- ミライはその様子を切なげな表情で、ザイオンの後ろから見つめていた。
- どうしてこんなにも深い絆で結ばれている彼らが、ここで突然の別れを迎えなければならないのだろう。
- それも引き裂いたのは、戦争が起ころうとしている世界の流れなのだ。
- 出会いがあれば別れがあるのも分かるが、今ここで彼らが別々の道を行くのは必然とは思えない。
- 何故なら、今の世界が正しいものだとは、到底思えなかったからである。
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