- ブレインの指示で進行方向を変えたシャトルは、月とプラントの中間に位置するデブリベルトの中を進んでいた。
- シャトルはおろか、戦艦でも通るには危険なルートだが、だからこそ普通はここに入ってくる者などおらず、秘密基地を構えるには丁度良いという訳だ。
-
- デブリの仲間入りをしないように慎重にシャトルが進んでいくと、かなり大きめの岩石の塊が目の前に現れた。
- シャトルのパイロットはそれを避けようとするが、ブレインはその岩石を指差しそこに行けと指示を出す。
- パイロットは驚くがとにかくブレインを信じてゆっくりと機体を近づけると、不意にその一部が口を開いた。
- どうやらこの中がブレイン言っていたシャトルを着陸させられる場所らしい。
- シャトルはそこから岩石の中に進入し、静かに鋼鉄の床の上に着陸した。
- ここはヤマト派が密かに持つファクトリーの1つ。
- その中でも新型のMSを開発、研究している施設だった。
- ヤマト派に所属するブレインは、密かにここでMS開発の技術スタッフの責任者の1人として名を連ねていたのだ。
-
- 到着したシャトルを降り立ったミライ達は、こんなところに秘密基地があることも驚きだが、中も地下組織とは思えないほど充実した設備が整っている様子に、誰もが固まってしまう。
- ザイオンですらおっかなびっくり、周りをキョロキョロと見渡している。
- そんな戸惑う一同にブレインは全員に聞こえるように声を上げる。
-
- 「悪いが一先ずこの部屋で待機してくれ。少し話をしてくる」
-
- そう言って広間のような部屋にメンバーを案内する。
- 緊急事態だったのでここへと連れてきたが、まだ正式に客人というわけではないので、これ以上中へ案内するわけにも行かず、他の責任者達にも説明をしなければならない。
- プラントではザラ派に寝返った者もいるだけに、この中にスパイが紛れ込んでいないとも言い切れない。
- だから全てを語る上では慎重にならなければならない。
- それでもブレインがここに彼らを連れてきたのは、ミライがそこにいたからであり、少なくとも自分の上官であるザイオンとエミリオンは信用していたからである。
-
- ちなみに提供された部屋はと言うと簡単なテーブルと椅子以外何も無い部屋だがかなり中は広く、5,60人入ってもかなりゆったりとしたスペースが持てそうだ。
- とりあえず窮屈に押し込めようという気は無いことだけは分かると、多少安堵の表情を浮かべてザイオンを筆頭にゾロゾロと部屋の中に入る。
-
- 「ミライ様、お見せしたい物があります」
-
- ブレインは一番後ろから部屋に入ろうとしたミライを呼び止めた。
- そして何も言わずにふわふわとザイオン達を案内した部屋ではなく、さらにその先に見える廊下の方へ流れていく。
- ミライは不思議そうな表情を浮かべるが、とにかくブレインの後に付いて行った。
-
- 案内されたのは少し薄暗く奥まった部屋。
- そこは何重もの扉で厳重に隔離されており、とても重要な機密を守っているのだということは想像に難くない。
- そんなところに自分を連れてきてどうするつもりなのかは分からないが、ミライは促されるまま部屋に足を踏み入れた。
- そこは部屋というよりは、倉庫のようだ。
- 長い柵に挟まれた通路が延びており、左側には真っ暗な大きな空間がある。
- ブレインはミライが扉を潜ると、壁に設置されているスイッチを入れた。
- その瞬間灯り部屋の中を明るく照らし出し、ミライは自分が立っている場所が何かを知ると驚く。
- そこはMSのドックであり、ミライが立っているのはキャットウォークだった。
- そして暗がりに見えなかった空間の中に、1機のMSが浮かび上がる。
- ミライはそれを目を見開いて見つめる。
- フェイズシフトこそダウンしているが、そこにはキラが乗っていたシャイニングフリーダムとそっくりのMSが顔があり、まるで主が来るのを待っているかのように静かに佇んでいた。
-
-
-
-
PHASE-40 「選択の時」
-
-
-
- 「これはアルティメットフリーダム。キラ様がお乗りになっていた'X10'(エックステンナンバー)、フリーダムシリーズの最新型の機体です」
-
- 呆然とMSを見上げるミライにブレインが説明する。
- それはシャイニングフリーダムに新しい技術を取り込んだ、現時点で究極と呼べる力を終結させた、ファクトリーが自信を持って送り出す機体だ。
- その開発にはブレインも直接では無いが関わっている。
- まあだからこそこのファクトリーに場所も知っているし、ミライ達を連れてくることが出来たのだが。
-
- フリーズ達新たなダブルエックスbェ出来た時点で、シャイニングフリーダムのオーバーホールとマイナーヴァージョンアップなどの調整準備をしていたファクトリーだったが、ダブルエックスb強奪する組織の存在、そして独自に開発されたエックスcVリーズの登場を受けて、新たな脅威を振り払うための力が必要だと判断した。
- さらにザラ派やブルーコスモスと言った組織にも不穏な動きが見られたため、新しいMSの開発を急いだ。
- その結果誕生したのがこのアルティメットフリーダムだ。
- シャイニングフリーダムのパワーを4倍にして、バーニアの出力そして火力ともに大幅に向上させている。
- さらに装甲に使用する金属も新たに精錬された”ネオガンダニウム合金”で、これまでのチタン合金などよりも薄くて軽くなりながら数倍の強度を誇り、防御力と機動力の向上も図られている。
- これでフリーダムの戦闘力を大きく引き上げることで、キラが絶対的な力を発揮出来るようにと、新しい剣として提供する予定だった。
- だがそのキラはアポカリプスとの戦闘に敗れて現在MIA。
- そしてフリーダム特有の機体のパワーやマルチロックシステム、ドラグーンシステムなどの操縦の難解性から、キラ以外に搭乗出来る技量を持ったパイロットが存在せず、せっかくのMSも宝の持ち腐れになっていた。
-
- しかしブレインの中には一つの確信があった。
- フリーズに突然乗り込んでいながら、ソフトを自ら書き換えてあれだけ巧みに操縦し、そして戦闘を潜り抜けてきたミライならばきっと乗りこなせる。
- そしてキラとラクスより幼少から教育を受けているミライならば、その心も受け継がれている筈だと。
- フリーダムを引き継ぐ者に相応しいのは彼女を置いて他にいないことを。
-
- 「貴方に意志があるのならばこれを貴方の剣としてお使いください。そうラクス様から承っています」
-
- ブレインはそのことを密かにヤマト派のターミナルを通じて報告をしていたのだ。
- エミリオンに見られたのはこの報告をしているところだった。
- そしてブレインの考えに異論を挟む者はいなかった。
- ミライがMSに乗ることにラクスも心を痛めなかった訳ではないが、それでもブレインの考えを否定しなかった。
- 誰よりも力を持つことの意味を理解していたから。
- ラクスの許可も得られたことで、後はミライの決断一つだ。
-
- 「少し、考えさせてください」
-
- しかしミライは辛そうに俯き、アルティメットフリーダムに乗ることを拒絶した。
- 戦場に出て銃の引金を引くことはやはり大きな抵抗がある。
- それは人を傷つけ、命を奪う行為以外の何ものでもない。
- そのことを改めて知った今、とてもでは無いがMSに乗って戦場に出ようとは思わない。
- それに詳細な説明を受けなくても、父が乗っていた機体の最新型だ。
- このMSがどれほどの力を発揮するかは容易に想像が付く。
- 今の自分にその強大な力を操るだけの自信も無かった。
-
- ミライが了承しないことはある程度予想されていた展開ではあったので、ブレインは内心溜息を吐いたが落ち着いてミライの言葉を受け止める。
- その上で敢えて煽るような言葉も投げ掛ける。
-
- 「分かりました。ですがあまり時間はありません。今こうしている間も、ラクス様のいらっしゃるESPEM本部は戦いの真っ只中にあるのです」
-
- 言われてミライはハッとする。
- そうラクスは今危うい状況の中にいるのだ。
- シャトルが到着する直前に伝えられた情報では、ESPEMの防衛部隊は不利な状況にあると言う。
- そしてキラを打ち破ったMSの存在も確認されていると言うことだった。
- 今のタイミングでここに自分を連れてきたということは、これに乗って母を助けろと暗に言っていることが分かる。
- そしてその決断をする時間はそれほど残されていないことが突き付けられたのだ。
- そのことに焦りを感じ始める。
-
- だが焦燥感に駆られれば駆られるほどどうすれば良いのか分からなくなる。
- 母を助けたい。
- でも戦いたくない、相手を傷付けたくない。
- 矛盾する2つの思いに挟まれて、思考は堂々巡りを続ける。
- 加えて父でも敵わなかった相手に、自分が出て行ったところで敵うのかという不安、恐怖もミライの心を押し潰し、俯いたまま唇を軽く噛んだ。
-
- ミライの様子にブレインは一つ息を吐き出すと、俯くミライを置いてその場を後にする。
- まだ16の少女には酷な決断を迫っていることに胸を痛めないでもない。
- それでもキラを失った今のヤマト派には、ミライの力は必要だった。
- そしてミライが自分自身で答えを出さなければ戦い抜くことなど出来ない。
- 迷いは戦場では死を招く。
- そのことはブレインも分かっている。
- だから願いは口にしても強要はしなかった。
- ミライにはどうあっても生き延びて欲しいから。
- 人類の、何より彼女自身の未来のために。
-
- 1人残されたミライはぎゅっと拳を握り締めると、儚い瞳を揺らしてアルティメットフリーダムをもう一度見上げる。
- 光に照らされるアルティメットフリーダムは何も言わず、静かにミライの決断を待っているように見えて、ますます悩みは深くなった。
- 足元で小さく跳ねるハロ達の、この場所にあまり似つかわしくないとぼけた声だけがドック内に響いているのが、唯一ミライの気持ちを少しだけ和ませていた。
-
*
-
- ブレインはミライをアルティメットフリーダムの元に案内した後、このファクトリーの関係者達に状況を報告していた。
- 皆一様に渋面をしていたが、ミライが同乗していたこともあり状況的に致し方なしと言うことでとりあえずは納得してもらった。
- だが本部の、ラクスの脅威が去った訳ではない。
- ミライの状況を説明すると、一同はますます渋面を浮かべるが、こればかりは自分達ではどうしようもないとともかく待つ姿勢を打ち出す。
- ヤマト派はいざ行動を起こすとなったら躊躇わないが、まず事実を差し出しその決断を必ず本人にさせる。
- それが地下組織でありながら巨大であり、綻びが生じにくい理由でもあった。
-
- ブレインは一通りの説明が終わると、ようやくザイオン達の待つ部屋へと戻ってきた。
- エミリオンは戻ってきたブレインの所に文字通り飛んでくると、勢いよく頭を下げた。
-
- 「失礼な疑いを掛けてすいませんでした」
-
- いきなり謝罪をされて一瞬戸惑ったブレインだが、すぐに笑みを浮かべて別に気にしていないと答えた。
-
- 「俺こそ怪しい行動をして悪かったな」
-
- 疑われても仕方ないという自覚はブレインにもあった。
- どこにスパイが居るかも分からない状況では本当のことも言えずに、自身も歯痒い思いはしていたのだ。
- あのまま溝があるままではこれからの活動に支障が出たかも知れないが、これで何の蟠りも無くなったと安堵もした。
-
- そこにザイオンがやってくる。
-
- 「ちょっとお願いがあるんですが良いですか?」
-
- 真剣な表情で話し掛けるザイオンに、ブレインは身構えて頷く。
-
- 「私はフリーズに乗って本部の援護に向かいたいと思います。そのために機体の調整をお願いしたいのですが」
-
- 予想外の言葉にブレインは心外そうな表情を作り、エミリオンも素っ頓狂な声を上げる。
- フリーズはミライでなければ操縦できない代物と化している。
- ソフトウェアを書き換えればそれは解消するが、それではスペックが低下するため結局手をつけていない。
- それに短時間で改修出来るだけのプログラマもいないのが実情だ。
- あれほど独創的なコーディングが出来るのはミライ以外にはキラくらいだろう。
- だからフリーズの整備はしても、ソフトの調整までは手をつけてこなかった。
- それに戦闘をするのならば、リックディアスはザイオンの搭乗機なのだからそちらに乗れば済むだけの話だ。
-
- だがザイオン本人は、ESPEM本部の援護に向かうにはリックディアスの戦闘能力では不足していると感じていた。
- だから今のミライが乗れない状況であるというのなら、自分が乗って少しでも状況を打破出来る確率を上げたい。
- ザイオンは諦めてなどいなかった。
- これまで八方塞の状況に置かれ続けたのを切り抜けてきた自信からでは無く、諦めなければ道は開けるものだと知ったからこその行動であり決意だった。
-
- 「だから今から短時間で操縦方法などを習得します。その間に機体を発進出来るように準備をお願いします」
- 「そんな無茶ですよ。機体をちゃんと操縦出来なかったら、戦場で的になるだけですよ」
-
- ザイオンの提案にエミリオンは即座に反対する。
- 彼女自身にMSの操縦経験は無いが、それを習得するのがどれほど大変なことなのか、オペレーティングしながらシミュレーションするパイロットをたくさん見てきた経験からよく分かっていた。
- まして他人が乗っていたMSでは、そのパイロットの癖と言うものが染み付いており、いかにザイオンが若くして隊長を任されるほど優秀だとしても簡単なことでは無い。
- 中途半端なスキル状態では、命を自ら捨てに行くようなものだ。
- ただでさえ地球で仲間の機体が討たれ、そして失うという悲劇を経験している。
- それで戦争の悲惨さを改めて認識していた。
- これ以上仲間を失いたくないという思いが、エミリオンに抗議の声を上げさせた。
-
- だがザイオンは力強い笑みを浮かべて、エミリオンの意見をやんわりと否定する。
-
- 「それでもここでじっとしていることは出来ない。俺は俺が今出来ることをやらなければきっと後悔する。それにミライは訓練もせずにあれだけ扱ってきたんだ。俺もそのくらいのことをやれなきゃ隊長として情け無いだろ」
-
- もし自分がフリーズを操縦できていれば、ミライを戦場に送り出さなくても済んだかも知れない。
- そんな罪悪感と隊長としての責任感がその言葉を言わせた。
-
- ザイオンの意志の固さに、考え込んでいたブレインは分かったと短く答えると、整備スタッフに召集をかけてすぐに準備を指示する。
- だが仮にザイオンがフリーズを短時間で扱えるようになったとしても、残念ながらそれだけで戦局を覆すことが出来るとは思えない。
- もっと絶対的な力が無ければ、ザイオンをも失いかねない。
- ザイオンもそのことは全て理解した上で出撃すると言っていることは分かっている。
- だがこれから先のことを考えれば1人でも多くの心ある者に生き延びてもらわなければならないのだ。
-
- 「ミライ様に戦いは強制したくない。だがこの危機を乗り切るために、ラクス様を救い出すためにはあの方の力が必要だ」
-
- ブレインが唸るように呟く。
- その呟きにザイオンも考える。
- 確かにこれまでの戦績を見れば、ミライが出撃することはESPEMにとってプラスになるだろう。
- だがだからと言ってミライがフリーズで出撃したとして、果たしてどれ程の戦力的にプラスになるだろうか。
- ザイオンは率直にそのことを述べた。
- するとブレインは、いたく真面目な表情で返事を返す。
-
- 「実はミライ様には新しいMSへの搭乗をお願いした。まあ悩まれていてそこでは返事をいただけなかったが」
-
- そこでザイオンとエミリオンにもアルティメットフリーダムのことを説明する。
- 2人とも驚いた表情は浮かべたが、黙ってブレインの説明を聞く。
- 改めてヤマト派というのがいかに用意周到でかつ決断が早く、組織力の高い集団かと言うことが分かってくる。
- 現実も見据えた上で、先を読んで行動しているのだ。
- 決してラクスが理想だけを掲げている訳では無いことも理解する。
- 同時にザイオンには希望も見えてきた。
- もしミライがそのフリーダムに乗ったならば、戦局を覆すことが出来るかも知れないと、1人黙って考える。
-
- 説明を終えたブレインはエミリオンに向かって頼む。
-
- 「ミライ様を今一度MSに乗るように説得してはもらえないだろうか?」
-
- エミリオンなら自分よりも旨く説得出来るかも知れないと思ったからだ。
- ミライがアルティメットフリーダムで出撃してくれたら、ラクスを救出する確率はぐっと高くなる。
- それは一縷の希望でもあった。
-
- しかしエミリオンはその頼みを固辞する。
- ブレインが言いたいことは分かると言えば分かる。
- だがそれはミライの気持ちを考えていない、大人の言い分に過ぎない。
- 彼女が今そのことでどれほど苦しんでいるかを考えると、MSに乗せて戦わせるべきではないと思う。
- あくまでミライの苦しみを取り除くことを主張する。
-
- ザイオンがそんなエミリオンに問い掛ける。
-
- 「俺も出来ればミライを戦わせたくは無い。あの娘は本当に心が純粋だ。だから戦うことで相手を傷付けることを敏感に感じ取り、それを恐れてる。でもその気持ちを持っている者が戦いの中に身を投じて戦いを止めろと叫ぶことが必要なんじゃないかと思う、大きな戦争が起ころうとしている今だから尚のこと」
-
- そう言いながらこれまでの戦いを振り返って、今はここに居ない仲間達のことを思う。
- 元々所属する軍隊が違うという理由で別れた者もいるが、戦場で散ってしまった者もいる。
- そんな者達のことを考えると、自分にもっと力があればと思ってしまう。
- きっとミライもそんな気持ちがあったから、何だかんだでフリーズに乗っていたのだと思う。
- ならば今乗らないことで後悔することがあるかも知れない。
- 辛い心から逃げずに向き合って、それから選択して欲しいと思うのは、コウやヒカリに変わって傍に居る、兄心のようなものだろう。
- そこまで考えると、ザイオンは力の篭った眼差しでエミリオンに訴える。
-
- 「ラクス様を失うわけにはいかない。世界のためにも、ミライのためにもな。だから俺は出撃する。そしてミライもここで立ち止まっているべき人間じゃない。あの娘、いやあの方はキラ様やラクス様の跡を継いで世界を導く方だ。だからこそ逃げずに現実を直視して欲しい」
-
- ザイオンは自分の思いを全て語った。
- 話を聞いたエミリオンはしばらく考え込んでいたが、渋々分かりましたと答える。
- ザイオンの言うことはよく理解出来たから。
-
- 「でも強制はやはりできません。あくまでミライ様がご自分の意志でお決めになったことを私は尊重します」
-
- これが彼女なりの最大限の譲歩だ。
- しかしそれだけで充分だった。
- ザイオンは満足そうに微笑む。
-
- 「それでいい。自分がすべきことは与えられる物じゃないだろう。自分で見つけて切り開かなければ成し遂げることは出来ない。ラクス様ならそう言うんじゃないか」
-
- ザイオンに言われてエミリオンはハッとする。
- それは自分に向けても言われているような気がして。
- そしてミライのために本当に自分がしなければならいことは何なのか、よく考える。
-
- その様子に自分の考えを理解してくれたと感じると、じゃあ頼むと言い置いて、ザイオンとブレインは部屋を慌しく後にする。
- その後姿を見送ったエミリオンは溜息を吐きつつも、ミライを探すために部屋を出る。
- 気は進まないことは確かだが、今ミライの力が出来れば必要だということは分かる。
- それに彼女自身何故戦う者として身を置いたのか、その理由を失念していた。
- 戦うことは正義ではない。
- でも戦わないこともまた正義ではないと、ラクスから教わったことを。
- だから自分は今ここに居るのだ。
- エミリオンは迷いの中にもはっきりと一つの答えを導き出していた。
-
-
― Starstateトップへ ― |― 戻る ― |
― NEXT ―