- アポカリプスが追ってきていないのを確認したミライは、デブリ帯の中をジグザグに飛んでさらに追っ手の目を警戒してから基地へと辿り着いた。
- ようやくホッと安堵の息を吐くミライ。
- そんな娘を労うように、ラクスが笑顔でお疲れ様でしたと後ろからそっと抱きしめた。
- ミライは安堵から張り詰めていたものが途切れ、しばらくその温もりに甘えるように身を委ねた。
- そこでようやく母と一緒に今いられることを、心から喜んだ。
-
- ドック内ではブレイン達スタッフとエミリオンがミライ達の帰還を祈るように待っていた。
- アルティメットフリーダムが静かに着地すると、整備班やエミリオン達がわらわらと寄ってくる。
- フリーズが大破しているのは驚いたが、そこからザイオンが這い出してきた様子にはホッとする。
- どうやら本人に怪我は無いらしいことから、声は掛けるものの視線はアルティメットフリーダムに注がれたままだ。
- ザイオンには悪いが、彼らが最も待ち遠しい相手は他にいる。
- アルティメットフリーダムのコックピットが開くと、ゴクリと唾を飲み込む音が聞こえそうなほど固唾を飲んで降りてくる人物を見つめる。
-
- 先ずミライがハッチの上に出てきて笑顔を振り撒く。
- そんなミライに手を引かれてラクスがコックピットから姿を現すと、大きな拍手と歓声に包まれた。
- ESPEM本部が陥落しても、ヤマト派の象徴であるラクスが無事なのは彼らにとってとても意味のあることだ。
- まるで大きな戦いに勝利したかのような喜びようだ。
- コックピットから舞い降りたラクスに、口々に無事を祝い或いは再会を喜ぶ言葉を紡ぐ。
- そして誰もが絶望しかかっていたラクスの救出を果たしたミライとザイオンには賞賛の嵐が降り注ぐ。
- もみくちゃにされながらも、ミライとザイオンは照れ臭そうな笑顔を浮かべる。
- その様子を微笑ましく見つめていたラクスは、その喜びの波が一段落したのを見計らって感謝の言葉を告げる。
-
- 「皆さん、ご心配をお掛けして申し訳ありません。ミライや皆さんのお陰でこうして再びご挨拶することが出来ました。ありがとうございます」
-
- ラクスは笑顔でそう頭を下げる。
- そこにはESPEMを失ってしまった悲壮感は見られない。
- 胸を痛めていないことは無いが、その目はこれから自分がしなければならない、立ち向かわなければならない未来に向けられている。
- ブレインやエミリオンも、まだ終わっていない、諦めるわけにはいかないと、そんな気持ちになってくる。
- ドック内はそんな明るいムードに包まれた。
-
- しかしそこに地球連邦軍がオーブに侵攻しようとしていると言う知らせが入る。
- 今やブルーコスモスの尖兵と化してしまった地球連邦軍は、プラントに対して既に戦闘行為を行っており、今度は中立の立場を貫くことを表明したオーブをも標的にしたのだ。
- その悪い知らせに、折角のお祝いムードも一気に沈んでしまう。
-
- ラクスはそれを聞き悲しげに目を伏せたが、その報事態に驚いた様子は無い。
- ESPEMが崩壊した時点で、遠からずそうなることは予想されていたからだ。
- 抑止力を失った世界で、力を持つ意味を見失った者が暴走することは。
- 今やオーブは地球圏最後の砦だ。
- 何とか守らなくてはならないが、ESPEMに力が無い今自分に打つ手は無い。
- 自分が不甲斐ないばかりにこのような事態になって、カガリに申し訳ない気持ちで一杯だった。
-
- ザイオンやエミリオンにとっても恩のある国だ。
- 何とか助けになりたいと思うが、その方法が見出せない。
- 誰もがどうすれば良いのかと狼狽を見せる中、ミライは1人静かに目を閉じて考え込む。
- そして目を開けた時、その瞳には強い決意が宿っていた。
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PHASE-45 「点火する火種」
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- ユウキは焦った様子で司令部に飛び込んだ。
- まさか地球連邦政府があんな強硬手段を取るなど俄かには信じられない。
- ことの真相を確かめようと、ユウキは軍の司令室へと向かったのだ。
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- 司令室に入るとそこには渋い表情のカガリとアスランがいた。
- その表情が既に事実であることを物語っている。
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- 「どう言うことですが、父上、母上」
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- 上ずった声で両親に尋ねるユウキ。
- 両親から滲み出る雰囲気を察しても、しかしまだ信じられない。
- 戸惑うユウキにアスランはその問いには答えないで、静かにプリントアウトされた紙を渡す。
- ユウキは怪訝な表情でその紙に目を通す。
- そこにはこう書かれていた。
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- 「オーブは再三の地球連邦への加盟を拒否し、あまつさえコーディネータの居住を認めていることは今の”人類”の世界に対する敵意が感じられる。速やかに地球連邦への加盟と現オーブ政府首脳の辞任と解体、コーディネータ全員の身柄引き渡しを要求する。この申し出が受け入れられない場合はプラントに協力する敵対国と見なし、攻撃に踏み切る」
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- ユウキは読みながら震えた。
- これは何の冗談なのかと思う。
- 地球連邦軍からの通告は明らかに無条件降伏を求めるものに他ならない。
- そしてコーディネータのことを人間とすら認めない、何とも傲慢で差別的な、聞くに堪えない通告だ。
- 一体オーブが彼らに何をしたと言うのだろう。
- ただどちらかを敵だ味方だと色分けをしない、そういったことを表明しただけで、それは人道的に正しいことではないのか。
- どうしても納得がいかないユウキ。
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- だがアスランは淡々とした口調でその通知を受け入れ、その裏にある本音を指摘する。
-
- 「奴らは本気だろうな。過去にも愚かな行為を実行してきた連中だからな。コーディネータが地球で暮らしていることが気に入らないのと、オーブのマスドライバー、それにモルゲンレーテの技術力を手に入れたいんだろう。そのためには何だってするさ」
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- オーブの持つ技術力は地球圏内でも一目置かれるほど高い評価を受けている。
- MSの開発においても、地球連邦軍より1歩も2歩も進んだ技術を取り入れているのだ。
- 地球連邦は確かにその技術力を取り込んで、プラントとの戦争を優位に進めたいと目論んでいた。
- そして相手は地球連邦政府ではなく、ブルーコスモス。
- 自分達の利益のためなら冷酷で非道なことも躊躇しない連中であることは、これまでの活動履歴、課過去の歴史から分かっている。
- 仮に通告を受け入れたとしても、オーブが安全だと言う保障も無いのだ。
-
- 「それで、どうするのですか?」
-
- ユウキは恐る恐る尋ねた。
- 自分としてはこの通告には従いたくない。
- オーブの理念を誇らしく思い、この国で生まれ育ったことを幸せだと思っている。
- むざむざそんな地球連邦の言いなりになることは、その誇りを踏み躙られることと同じだ。
- しかし従わねば地球連邦軍が攻めてくると言う。
- 出来れば争いごとそのものを避けたい。
- だが攻めてきたら激しい戦いになることは想像に難くない。
- そして戦力の質はともかく、圧倒的な物量の差はどうにも埋めようが無い。
- はっきり言って勝ち目はほとんど無い戦いになる。
- そんな戦いに駆り出さねばならない兵士達が気の毒で、また敗北した後のオーブ国民達や両親の処遇が気になる。
- それならば通告を受け入れた方が、まだ悲惨な目に遭わなくて済むのではないかとも思える。
- ユウキにはどちらの決断が正しいのか分からない。
-
- だがユウキの心配を余所に、カガリは迷い無く答える。
-
- 「無論、我々は通告を拒否する。オーブの理念は他国を侵略せず、他国の侵略を許さず、他国の争いに介入せずだ。今ここで地球連邦に加盟すると言うことは、プラントを敵として侵略することを認めると言うことだ。オーブの兵士達がプラントの兵士達を討つ、傷付けることをな」
-
- 言われてユウキもハッとする。
- もし通告を受け入れたとしても、それはオーブが地球連邦軍に攻撃されなくなっただけだ。
- 戦争をしている以上、今度はプラントの攻撃を受ける可能性がある。
- 逆にオーブ軍が地球連邦軍の一員として、プラントを攻めることにもなるのだ。
- それはオーブの軍人達が他国の人や土地を攻めて傷付けると言う、オーブの理念に反する行為に他ならない。
- 自分の国を守るために、他国を攻めて他国の軍人を傷付けても良いはずが無い。
- 通告の受け入れは単に自分の国を守るためだけ、ということに留まらないことなのだと痛感する。
- ユウキも地球連邦軍とは徹底抗戦を挑む覚悟をする。
-
- そこにシークレット回線が届く。
- カガリは神妙な面持ちで通信を聞いていたが、分かったとだけ答えるとアスランと目配せでだけ合図をして司令室を後にしようとする。
-
- 「母上、どちらに行かれるのですか?」
-
- ユウキは母もてっきりここで指揮を取るのだと思っていたのだが、この大事な局面で司令部で指揮を取る以外に大切なことがあるのだろうかと疑問を持つ。
- ユウキに問われてカガリは立ち止まって振り返る。
- 自分の後継者たる息子は自分達の考えをよく理解してくれている。
- だがまだまだ教えたいこと、伝えたいことはたくさんある。
- 今から向かう先もその1つ。
- ここで終わるつもりもないが、それを教えることはこの機会は絶好のタイミングだとも思えた。
- カガリはしばしの思案の後、ユウキも連れて行くことに決めた。
-
- 「私もまた決断し、委ねなければならない。オーブとこの世界の行く末をな。ユウキ、お前もついてこい。アスラン、後を頼む」
-
- 意味深な言葉を残し、また踵を返して司令室の扉の向こうに消えた。
- ユウキは怪訝な表情を浮かべるが、慌ててカガリの後を追って司令室を後にした。
-
*
-
- オーブ近海の海上では、既に地球連邦軍が部隊を展開させている。
- 数え切れない空母と、さらにその甲板にはその何十倍のMSが待機している。
- もういつでも攻め込む準備は万全の状態だ。
-
- その旗艦のブリッジにはヴォードの姿もあった。
-
- 「ふん、やはりオーブは断わってきたか。どうせ自国の利益を守りたいんだろうが、この地球がコーディネータどもに乗っ取られようとしているのに愚かな連中だ」
-
- 世の中の人間は自分と同じ考えしかもっていないと信じるヴォードには、オーブの崇高な意志は全く理解出来ない。
- 他人を蹴落として自分の企業を大きくし、ここまでのし上がったヴォードは特にその思いが特に強い。
- そして自分の意のままにならない相手は全て淘汰してきた。
- 自分の意志に従わないのなら消えてもらうまでだ。
-
- 「お望みどおり、オーブをこの地上から消し去ってやろう」
-
- ヴォードはそう嘯いて、総攻撃の指示を出す。
- それを反復する旗艦の艦長の合図に、一斉に母艦からMS部隊が飛び出していく。
- ヴォードはその様子を満足そうに見送ってから、別のモニタ回線を開いて映った相手に個別に指示を与える。
-
- 「いいな、行政府や街はいくら破壊しても構わないが、その地図で示した場所は絶対に攻撃を加えるな」
-
- そう言ってオーブの地図を表示し、印を示す。
- そのモニタの向こうに映るのはまだ幼さの残る顔立ちをした子供達。
-
- 「要はMSを片っ端から片付ければいいんだろ」
- 「ふふ、ようやくお人形さんを動かせる」
- 「面倒くせーな、どうせやっつけるんなら全部壊しても一緒じゃん」
-
- 最初に興味がなさそうに答えたのはドロム=カルティア。
- 無邪気な子供のようにはしゃいだ返事をしたのはアリサ=フロイド。
- 面倒くさそうに不満を零したのはロドリゲス=バークウェイ。
- ヴォードが徐々にブルーコスモスで頭角を表し始めた頃から再び作った、ナチュラルの戦闘能力を人為的に高める研究施設。
- そこで新たに作り出されたエクステンデントの子供達だ。
- やはり様々な薬や処置の投与で精神的には非常に不安定なところがある。
- だがヴォードの命令に逆らうことは無い。
- そのようにマインドコントロールもされている。
- ヴォードは自らそのエクステンデント達のテストの確認も兼ねて、アドバイザーと言う形で地球軍の旗艦に乗り込んでいた。
- 尤もその成果を信じて疑ってはいなかったが。
- 彼はこれまで自分が手掛けてきたことは全て成功を収めてきたため、今度も失敗することなど少しも考えていなかった。
-
- ヴォードの命令にそれぞれ不満などを示したドロム達だが、その行動と思考はヴォードの命令を遂行すべく動いている。
- 3人1組で行動するように仕組まれている彼らは、ドロムの指揮を中心に高い連携技術を持って敵を屠る。
- ドロムはすぐに最も効果的なフォーメーションを計算し、他の2人に指示を送る。
-
- 「お前ら、ここはフォーメーションαーU(あるふぁせかんど)でいくぞ。分かってるな」
- 「りょーかい。ねー、早く行こうよ」
- 「へいへい。ま、しょうがねーな」
-
- ドロムの指示にアリサとロッドは気のない返事をするが、その胸の内は抑えきれない高揚感で満ちている。
- 彼らにとってフォーメーションの通りに行動するのは、そう叩き込まれているため当たり前。
- それよりも本当の戦争で本物のMSを操縦出来ることが、まるで新しい玩具を与えてもらった子供の様にワクワクしている。
- 3人はブルーコスモスが新たに開発したデスパイア、インフェルノ、シャダーの3機のMSを駆り、その名と同じ災いと恐怖を与えるため、無邪気に空母を飛び立った。
-
*
-
- オーブ軍訓練施設の宿舎。
- その食堂に備えられた大スクリーンに映し出された報道を見て、リュウは立ち尽くしてしまった。
-
- リュウはケルビムを降りて数日、ここで次の部隊への配属を待ち、規定訓練をこなしていた。
- MSのパイロットとして戦うことに疑問と限界を感じていたリュウだが、まだ気持ちの整理が出来ていなかった。
- 結局軍を辞めるには至らず、ずるずるとこうしてまだ留まっている。
- 既に実戦経験も積んだ彼は、後輩達の指導的立場でもある。
- MSパイロットの後輩達に実戦での経験の講義や模擬戦の相手などをこなしている。
- 訓練生達を相手にはもう圧倒的な実力差を見せつけ、賞賛の言葉をたくさん掛けられるが、そんなことではリュウの気持ちが晴れることは無かった。
-
- そして今大西洋共和国が再び実権を握った地球連邦軍を率いて、このオーブに攻め込もうとしているのだ。
- そのことが大々的なニュースとして報道されている。
- 食堂の大スクリーンに映し出されるカガリの演説と、オーブ近海に展開している地球軍の様子がひどく禍々しく思えるのは気のせいだろうか。
- 現在リュウと共に訓練を受け、模擬戦でリュウが相手をした3人娘も不満や不安を口にする。
-
- 「そんな、地球連邦政府は一体何を考えているの」
-
- 地球連邦に対して怒りを露にするキョウコ=ワコウ。
-
- 「このままいくと開戦ね。そうなると私達もMSで出撃することになるのかしら」
-
- 不安そうに呟くナツミ=タカサキ。
-
- 「でも行政府は戦争を回避しようと努力はしてるのよね。それがうまくいって欲しいわ」
-
- 淡い期待に縋るレオナ=ダノン。
-
- 3人ともシミュレーションの成績も非常に良く、期待されている逸材だ。
- 訓練が終わりリュウと共に食堂でその映像を目の当たりにした。
- MSのパイロットとしての訓練を受けているが、ラクスやカガリの努力で戦争とは縁遠い世界で暮らしてきた彼女達だ。
- 急に自国に敵が攻めてくると言われてもピンと来ない。
- これからどうなるのだろうと、その答えを求めて無意識にリュウの方に視線を向ける。
-
- リュウは視線に気付かず、その映像を見つめて拳を握り締める。
- 勝手な言い分でオーブを攻めようとしている地球連邦軍に対しては怒りが湧く。
- だが今の自分に一体何が出来るのだろう。
- どうすればいいのだろう。
- それが分からない。
- そんな自分自身が情けなくも思える。
- こんな時、ケルビムの仲間達ならどう思うだろうか。
- 今はいないかつての仲間のことを思いながら、リュウは苦しげに佇んでいた。
-
- その様子を後ろから見守っていたのはシンだ。
- カガリとアスランは既に迎え撃つ準備に入っている。
- シンもカガリがどんな答えを導き出すかは百も承知だ。
- そのことを恨み、カガリを憎んだこともあるが、今はその判断がどれだけ苦しい中で決断したものか、未来のことをどれほど思ってのことだったか理解している。
- だからシンも共に戦う決意を固め、こうして奔走している。
-
- ただ地球連邦と戦う上で、圧倒的な物量の差はどうしようもない。
- 少しでもそれを補うためには、例えルーキーだろうと実戦に出てもらわなければならない。
- そのことを施設の管理者や教官たちに伝えるためにここに来ていた。
-
- たまたまリュウを見かけたシンは、後ろから近づいて声を掛ける。
- リュウはシンの方に視線を向けて少し驚いたが、すぐにスクリーンに視線を戻し固い表情でそれを凝視する。
- シンにはリュウの悩みがよく分かった。
- かつては自分も悩み、そして過ちを犯してしまったから。
-
- 「君はどうしたい?その力をどう使う?」
-
- シンは静かに尋ねた。
- ケルビムでミライ達と共に戦ってきた彼ならば、力の意味もその責任と重さを分かる筈だと期待を込めて。
- 万一自分と同じ過ちを犯すような考えを持っていれば、彼はMSに乗せてはならない。
- その過ちに気付いた時、傷つくのはリュウ自身であり、取り返しがつかないことになりかねない。
- だがもしそうではないのなら、オーブにとって大きな力になる。
- いやオーブにとってだけではない、再び誤った方向へ進もうとしている世界を正す力にもなり得る。
-
- リュウは問われて真剣に考えた。
- 戦うことは正直恐ろしい。
- いつジローのようになるかも知れない。
- そしてタクミとも殺しあわなければならないかも知れない。
- 自分が本当にタクミとまともに戦えるのか、その時にどんな心理でいられるのか皆目検討も付かない。
- そして戦場では敵も味方も、目の前で誰かが死んでいく様を目の当たりにすることになる。
- 自分がその相手を殺すことになる。
- 今ならミライの苦しみや悲しみが痛いほど分かる。
-
- だが戦わなければ、生まれ育ったこの国が炎に焼かれてしまう。
- 一緒に育った友達が炎の中に消えて行く幻想が頭に浮かぶ。
- その幻を振り払いそれだけは絶対に嫌だと思った。
- リュウの中にある迷いが消え、徐々に強い意志が芽生えてくる。
-
- 「私はこの国を守りたいと思います。相手が憎いからではなく、傷付けるためではなく、大切なものを守りたいから」
-
- 自分で言って、だから今MSパイロットとしてここに居るのだと思えてきた。
- それならば自分が出来ることを、しなければならないことを全うしたいと思う。
- リュウは真っ直ぐにシンを見つめ返す。
- そこには憎しみの色も迷いも見られない。
- その瞳に射抜かれたシンはリュウになら託すことが出来るだろうと思った。
-
- 「分かった、ちょっと待って」
-
- そう言ってどこかに連絡を取る。
- しばらく真剣に小声で話をすると通信を切り、リュウを連れて歩き出す。
-
- 「君に渡すものがある。付いて来てくれ」
-
- そのやり取りを固唾を飲んで見守っていた3人娘だが、リュウとシンの間だけで話がまとまったことに自分達がどんな行動を取れば良いか分からなかった。
- 歩き出したシンを呼び止めておずおずと尋ねる。
-
- 「私達はどうすれば?」
-
- 言われてシンはどうしたものかと悩む。
- 実は彼女達がリュウとシミュレーションで戦った様子をチェックしていた。
- リュウとかなり競った戦いを見せる限り、彼女達も才能はありそうだ。
- どの道ルーキーであっても戦場に出ることになり、丁度新しいパイロットを探している機体もある。
- またリュウには自分自身だけでなく、もっと周囲にも目を配って大局的に判断が出来るようにもなってもらう必要がある。
- そう判断したシンはキョウコ達も連れて行くことに決めた。
-
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