-
- 2人の青年の凛とした声が部屋中に響き渡る。
-
- 「私は、デスティニープラン成就のために、如何なる努力も惜しみません」
- 「右に同じです」
-
- ケルビナとコルストは姿勢を正し、最敬礼する。
- 突然ザフト軍本部から呼び出しを受けたと思ったら、いきなり最高評議会議長であるデュランダルの前に立たされ、デスティニープランについてどう思うかと尋ねられた。
- だが2人にとってそれは愚問だった。
- デュランダルのことは心酔と言って良いほど尊敬しており、『戦争の無い、誰もが幸福に生きられる世界』に甘い夢を見たのだ。
-
- 敬礼を受けるデュランダルはそれに柔和な笑みで手を上げて応えると、唐突に話し始める。
-
- 「ミネルバの力は我々の意志を世界中に示すために重要で、そちらにも大いに期待はしているがね」
-
- そこで息を切ると徐にシートから立ち上がり2人に近づく。
- そして2人の間に立ってその肩に手を置き、続ける。
-
- 「だが君達の力もまた同じくらい私は必要としている。ゆくゆくは私の意志を継いで、このプランの行く末を見守ってもらいたいと思っているのだよ」
-
- デュランダルの頭にはデスティニープランが失敗することなど計算に入っていない。
- それどころかデスティニープラン実行後、自分が死んだ後のことまで見据えて行動を起こしていた。
- そのためにデスティニープランを良く理解している若者を、その後継者として育てようと考えた。
- ケルビナ、コルストはそれに選ばれたのだ。
- その意味を理解した2人は感激したという表情でデュランダルを熱っぽく見つめて、その言葉に耳を傾けている。
- その襟元には先ほど与えられたFAITHの徽章が光っていた。
-
PHASE-47 「亡者」
-
-
-
-
- テツとセイの戦いは、形勢が完全に逆転していた。
- ストライクラピドから伸びる光がファウストの左足を捉え、膝から下が失われる。
- セイは舌打ちしてドラグーンでストライクラピドを狙い打つ。
- だがテツは四方から迫るドラグーンをシールドで防ぎつつ、カウンターでライフルを放ち、破壊していく。
- セイはその光景に焦りを感じながら、こんなはずではないと呪文の様に繰り返しながらストライクラピドに再度斬りかかる。
- だが最早その動きは精彩を欠いていた。
- テツには殊更遅く見え、半身になってそれをかわすと機体の右腕を突き出す。
- ストライクラピドが伸ばした右腕は、その握ったビームサーベルでファウストの頭部を貫く。
- モニタがノイズに包まれた瞬間、セイは敗北にこれまで積み上げたものが音を立てて崩れるような感覚が込み上げ、戦闘意欲は完全に失われていた。
- セイの中には怒りよりも、茫然自失とした感情が支配していた。
-
- 動きが止まったファウストの様子を伺いながらテツは、一瞬セイに勝ったことに喜びを覚えた。
- だがすぐにその思いは消える。
- 彼の目的はセイに勝つことではない、救うことにあるのだ。
-
- 「セイ、まだ間に合う。俺達が本当にすべき事をもう一度探そう」
-
- かつてセイが手を差し伸べたように、今度はテツが手を差し伸べる。
- 今誤った道を突き進んだ仲間と、もう一度やり直すために。
- まともに考えることができないセイは目から涙を零しながらテツを見つめ、コックピットから身を乗り出して縋るように手を伸ばす。
- それはとても暖かなものに見えたから。
-
- その瞬間、ファウストを一筋のビームが貫いた。
- 突然訪れた衝撃をセイは理解することができなかった。
- ただ眩く包まれた光の中で、"FOKA'S"のメンバーが微笑んで手を差し伸べる姿が浮かび上がり、穏やかな笑みを湛えて先ほど伸ばした手でそれを掴む。
- ああ、ここの世界は優しいなとぼんやりと思った。
- そこでセイの意識は炎の中へと消えた。
- 同時にファウストは激しい爆音を立てて、宇宙の彼方へと消えていった。
-
- テツは信じられないという思いと同時に、どうしようもない怒りが湧いてくる。
- 目の前に見えた希望が砕かれた悔しさに、何もかも無茶苦茶にしたい衝動を抑えながらビームが放たれた方向をキッと睨む。
- そこいたのはライフルを向けたままのトレジディだ。
-
- 「ケルビナァッ!何でお前がセイを撃つんだ!」
-
- ケルビナとコルストはセイがプラントでの活動の協力者として、1年ほど前に連れてきた者だ。
- 自ら協力を申し出たということだったが、その情報と力は"FOKA'S"でも非常に有益に働いていた。
- その彼がセイを撃ったことは、テツには信じ難かった。
- それだけにテツの怒りは激しい。
-
- だがケルビナは全く意に介さない様子で淡々と告げる。
-
- 「彼の役割は終わった。まあ思っていた程度にはよくやってくれた」
-
- テツにはケルビナの言っている意味がわからない。
- だが最初からセイ達"FOKA'S"を利用するつもりで近づいたことだけは理解できた。
-
- 「所詮彼は誰かの掌の上でしか踊ることはできない。それを今まで与えてやっただけだ」
-
- テツは悔しさと怒りにワナワナと振るえて、ケルビナに飛び掛ろうと操縦桿を握り締める。
- だが次に発せられた言葉に戸惑い、その怒りは行き場を失う。
- そんなテツの気持ちなど露知らず、ケルビナは言いながら勝ち誇った表情で手元の通信回線をONにする。
- コルストも感慨深げにそっと目を閉じ、思いを馳せる。
-
- 「我々は今こそ、デスティニープランの再実行をここに宣言する」
-
- キラとテツ、それに司令部にいたラクス達にも全周波数の回線を開いて行われたその宣言は届く。
- 誰もが予想だにしていなかった出来事に驚き、どう反応していいかわからない。
- だがケルビナの宣言と同時に、それまでAPSブルと戦闘をしていたゲルググの一部が、味方であるはずのザフト軍に向かって突然発砲を始める。
- さらにテンパシーとプラントを取り巻く無数の小さな岩石からブルが飛び出してくる。
-
- 状況の変化を逸早く察知したキラはケルビナに詰め寄る。
-
- 「君は一体何を言っている、何をしたんだ」
-
- だがケルビナはシャイニングフリーダムと並走しながらキラの問いに答えず、芝居がかった口調で言葉を紡ぐ。
-
- 「キラ=ヤマト、ラクス=クライン。デュランダル議長はこの2人がプラン実行の最大の障害だとして、消し去ろうと心を砕かれていた。だが夢半ばにして、そのお前達の凶弾に倒れた」
-
- そして凶悪な意志を込めた瞳でキラを睨みつける。
-
- 「それを俺達が今、成し遂げる」
-
- 2人は純粋だ。
- 純粋にデュランダルの望みを果たそうとしている。
- だがそれを喜ぶべき本人はもういない。
-
- 「やめるんだ。そんなことそしてもあの人は何も答えてはくれない。もう死んだんだ」
- 「違う!あの方は今も俺達の進む未来を導いてくださる」
-
- 確かにデュランダルはメサイアの崩壊と共に死んだ。
- だが目の前にいるケルビナにとって、彼の教えは今も脈々と息づき、それに従って行動しているのだ。
- キラの言葉はそれを侮辱するものだ。
- ケルビナは怒声を上げてシャイニングフリーダムへ斬りかかる。
- 一方のキラは内心で舌打ちしながら冷静だった。
- デュランダルのマインドコントロールによって彼らは、自分の意志と彼の傀儡であることの区別がつかないのだ。
- それを切ない思いで受け止めつつ、トレジディに真っ向からぶつかる。
- ミーティアをパージして、両手に持ったサーベルをクロスさせて攻撃を受け止めると、右足でトレジディの胴を蹴る。
- その衝撃にトレジディが大きく後退すると、すかさずドラグーンを起動してその四肢を破壊する。
-
- 「いつまでも彼の言葉に縛られてちゃだめだ。未来は自分達で切り開くものだ!」
-
- キラはデスティニープランの良いところしか見えていないケルビナに諭すように語り掛ける。
- だがケルビナは頑なにキラを拒絶する。
-
- 「デュランダル議長の思想も理解できぬお前が何をほざく。貴様が最高のコーディネータなど、俺は認めない」
-
- そしてケルビナは不適な笑みを浮かべて、キラを嘲笑うように予告する。
-
- 「だがこの世界は間もなく生まれ変わる。地球には核の冬が来て、プラントも破壊される。これで生き残った人間を集めて、プランをじっ・・・」
-
- しかし最後まで言うことができなかった。
- キラがハッとしてトレジディのコックピットを打ち抜いたビームの元に目をやると、エビルの構えた銃口から白煙が漂っていた。
-
- 「お前はいつもお喋りが過ぎる。デュランダル議長は話術巧みに必要なこと以外は何も話をされなかった。だからプランをあそこまで推し進められる事ができたのだ」
-
- コルストは淡々とケルビナへの餞別を口にして、今度はシャイニングフリーダムに向けてライフルを構える。
- キラは慌てて避けながら、信じられないといった表情でコルストを非難する。
-
- 「味方を撃つなんて」
- 「その立場に相応しくない者は淘汰、排除される。それがデスティニープランだ」
-
- コルストはキラの言葉を意に介さず、今も肌身離さず身に付けているFAITHの徽章に手を触れながら冷徹に言い放つ。
- 彼もまたデュランダルの言葉に巧みに操られ、その呪縛から今も逃れられていない。
- 否、逃れるつもりはないのだ。
- デュランダルの後継者に指名された時から、彼は第2のデュランダルになることをこそ望んだのだから。
-
- 「だが知られた以上隠しておいても仕方が無いしもう隠す必要も無い。ケルビナの言った通り、プラントにはここで消えてもらう」
-
- 言いながらキーボードの上に指を走らせると、周囲にある岩石やデブリが移動を開始する。
- それを見てキラはケルビナの言った意味を知る。
- 核ミサイルでの攻撃が失敗した場合を想定して、彼らは次なるプラント攻撃を準備をしていたのだ。
- プラントは思っているよりもずっと脆い。
- 小さな隕石の衝突でプラント内には大きな揺れが走るし、それらが小さくとも穴を開ければそのプラントは崩壊するおそれもある。
- 何よりその人工的な大地から放り出されると、人は生きてはいけないのだ。
- それ故に隕石などの浮遊物には常に注意を払っておかなければならない。
- また小惑星やデブリの残骸などの方が、核ミサイルの攻撃力には劣るものの、破壊が難しい分全滅させずとも致命傷を与えるにはむしろ好都合な武器と言えた。
-
- シャイニングフリーダムの攻撃力でもそれらの破壊が不可能と瞬時に判断したキラは、それらを止めさせようとエビルに掴みかかる。
- だがコルストが不適な笑みを浮かべると、機体の全身から光が迸る。
- エビルにはその操作の特殊性から操れない者でもドラグーンシステムの攻撃力を利用できるようにと、機体に埋め込まれた機体から切り離せないビット砲を全身に埋め込んでいた。
- それらを一斉に放てば、幾筋ものビームが周囲を焼き払い、近づくものを全て排除する。
- 尤も味方ごと巻き添えにしてしまうため、あまり実用的とは言いがたい武器だが。
- だがともかく、この攻撃の前にはキラも迂闊に近づけず、ライフルで牽制しつつも攻めあぐねる。
- テツはというと、展開があまりに予想外な方向へと流れたためどうしていいか分からず、シャイニングフリーダムとエビルが撃ち合う様子をただ見つめていた。
-
- その頃、司令部ではケルビナの通信を聞いて喧騒が沸き起こっていた。
- さすがに司令部にはデスティニープランの崇拝者はいないようだ。
- しかし予想外の出来事に誰もが浮き足立ち、情報が交錯している。
- それをイザークが一喝する。
-
- 「何をやっている。まだプラントも地球もやられたわけじゃない。まずは落ち着いて状況を知らせろ」
-
- 地球に小惑星が落下したという情報はないが、エターナルからの連絡もまだ無い。
- まずは彼らと情報を取り状況を知るのが先決だ。
- オペレータはハッとしてエターナルとの通信を試みる。
- 一方では動き出した岩石群の進路予想がはじき出される。
- このままでは岩石群はプラントにぶつかるという事実にまたもどよめきが起こる。
- 核ミサイルほどの攻撃力はなくても、これらが次々とぶつかればプラントへの被害は計り知れないことは容易に予想できた。
- 誰もがどうすれば良いか思案する中で、カガリが一つの提案をする。
-
- 「要塞を盾にできないだろうか。この要塞の質量ならぶつけさせてプラントへの被害を回避できるかもしれない」
-
- 部外者であるカガリの言葉ということもあり、当然反対意見はちらほらとあるが、イザークは真剣に悩む。
- 司令部を失うことは、まだ必死に戦闘を行っているザフト軍の統率を乱す要因になる。
- だがデブリ群を破壊するだけの攻撃力を用意できない現状では、それが一番有効に思われた。
- それにプラントを守れなくては、それこそ戦っても意味が無い。
- イザークは決断すると、すぐに議長と代表首長は脱出を、と傍にいたザフト兵に脱出艇の準備を指示し、ラクスとカガリに移動を促す。
- だがラクスはそれを拒否する。
-
- 「いえ、皆さんは早く脱出してください。後のコントロールは私がやります」
-
- カガリやイザークを始め誰もが弾かれたようにラクスを見つめる。
- そしてラクスこそ先に脱出すべきだと口々に主張する。
- それをラクスは厳しい表情で頭を振る。
-
- 「国を預かる責任者とあろう者が真っ先に逃げ出すことはできません。まずは客人であるカガリさんを。私は最後に」
-
- それでも尚反論を言い募るイザークらにピシャリと言い放つ。
-
- 「これは議長命令です。全員速やかに脱出しなさい」
-
- 珍しいラクスの大声に一同はしんと静まり返る。
- その通信は外で戦うキラの元にも届いていた。
-
- 「ラクス、君は何を考えているんだ!」
-
- キラはエビルの放ったビームをかわしながら通信機の向こうで叫ぶ。
- キラはラクスのいない世界で自分が生きていくことなど想像もできない。
- 自惚れかも知れないが、そのことをラクスは理解してくれているはずだ。
- だからラクスが自分の命を犠牲にすることなど絶対に許さない。
- まして二人の希望がそのお腹には芽吹いているのだ。
- だがラクスはいつもの笑みを浮かべてキラに答える。
-
- 「私は宿っている命をこの世に産む義務があります。ですからここで死ぬつもりはありません。死ぬわけにはいきません。ですが誰かがやらなければ、何百万という人達の命が、未来が踏みにじられてしまいます」
-
- キラとてラクスの言うことはわかる。
- もし自分が同じ立場なら同じ行動を取っただろう。
- だが自分が最も大切だと思う人が対象だと感情が追いつかない。
- そのキラの心境はラクスにも理解できた。
- 逆の立場なら果たしてどうしたかと。
- だから必死に潤んだ瞳でキラに訴えかける。
-
- 「私は断じて自分の命を犠牲にしようというのではありません。キラ、信じて」
-
- ラクスもキラと共にこの世界で生きたていきたいと、心の底から願っている。
- その気持ちはキラにも分かって欲しいのだ。
- 必死に訴えに葛藤を続けたキラだが、しばらくして答えを返す。
-
- 「分かった。だったら今から僕もそっちに行く。全ての準備が整ったら、僕が君をそこから連れ出す」
-
- 嫌とは言わせないとキラは険しい表情で見つめ、ラクスの視線を絡めとる。
- ラクスも一瞬驚いたという表情をしてキラを見つめるが、すぐにパッと表情を明るくして、微笑んで頷く。
-
- 「はい、お待ちしておりますわ」
-
- イザークはキラまで何を馬鹿なことをと突っかかろうとするが、その横でカガリがついと進み出ると、手にした宇宙服をラクスに手渡す。
-
- 「ならこれを着ておけ。いつでも脱出できるように」
-
- カガリも驚き半分、呆れ半分でやりとりを聞いていたが、こうなったら2人は梃子でもこちらの言い分を聞き入れることは無い。
- 長い付き合いだ、そんなことはよく分かっている。
- だったら2人のやろうとしていることを、最大限サポートするだけだ。
- それに2人なら大丈夫と、これまで数々の危機や劣勢を跳ね返してきた彼らの力を、自分でも呆れるほど信じている。
-
- 「じゃあ、また後でな」
-
- カガリはちょっと散歩にでも行くような調子で告げると、案内役のザフト兵に続いて司令室を後にする。
- それを見送り、皆さんも早く、というラクスの言葉に、オペレータ席に座っていたザフト兵達も躊躇いがちに司令部から出て行く。
-
- 「私はギリギリまでお手伝いします」
-
- イザークは部下達に貴様達は早く脱出しろ、と怒鳴りつけるとラクスの隣でキーボードに指を走らせる。
- 心の中ではこちらの心配を余所に話を進める国の代表者達に多少苛立ちは募ったが、彼もここ数年の付き合いで彼らの行動パターンはだいたい掴めるようになった。
- 今更こちらの話を聞く人達ではないということはよく分かっている。
- そしてその代償とも言える厄介ごとはどこから降りかかってくるかもだ。
-
- 「嫌とは言わせませんよ。貴女がいないとキラを止める手立てがないんですから」
-
- ニヤリと口元に笑みを見せるイザークに、ラクスも微笑んで応える。
-
- 「では急ぎましょう」
-
- ラクスとイザークは兵士達に脱出を促しながら、テンパシーの移動作業を進める。
-
- その様子を通信で聞きながら、キラの意識は戦闘中であることを完全に忘れていた。
- 全く無防備にその姿を晒している。
- コルストはその隙を見て取ると急接近する。
- 鳴り響く警告音にキラは思わずしまったという表情で、コックピットへの直撃だけは避けようと機体をねじる。
- しかしそれには遅すぎた。
- 振りかぶったサーベルがシャイニングフリーダムを真っ二つに切り裂こうと迫る。
- だがその瞬間、シャイニングフリーダムとエビルの間にストライクラピドが割り込みその攻撃を受け止める。
-
- 「行け、キラ=ヤマト」
-
- キラとラクスの通信を聞いていたテツは、キラやラクスの未来を目指すその強い意志に次第に引き込まれていた。
- 彼らの行く末を見たいという気持ちに加えて、コルストやケルビナが言うプランよりも、余程魅力的な正しいものに思えた。
- 自らの望みを持ち、それを切り開くために生きることが。
- それを思うとテツには自分の取るべき行動が再びはっきりと見えた。
- 元々キラに怨みのないテツは、キラを助けることに少しの抵抗もなかった。
- シールドを振ってエビルを払いながら、テツはキラを促す。
-
- 「分かった、頼む」
-
- キラは一言置いて、一目散にラクスの元を目指す。
- その光を怨めしそうに見つめながら、コルストはテツに毒づく。
-
- 「お前とて、キラ=ヤマトの失敗作として産まれた者だろう。それが何故奴の肩を持つ」
- 「うるさい、お前も聞いただろ。未来は自分の手で切り開くものだってな!」
-
- テツは今更ながら、セイ達"FOKA'S"のメンバーがキラを殺すことに拘ったのか分かった気がした。
- 失敗作と定められたその楔を断ち切りたかったのだと、それが唯一の方法だと信じていたのだと。
- だがキラを殺すことはその方法でないと知り、今まさに自らの未来を掴めるかどうかという岐路に立たされているのなら、目の前で散ったセイやもうここにはいない仲間の分まで、新しい未来を切り開くまでだ。
- 今度こそ本当に取るべき道を探して。
- セイやホドスに心の中で誓いを立てながら、ストライクラピドの5つの砲口から光を放った。
-
- キラはわき目も振らずにテンパシーへとバーニアを吹かす。
- だが2機のスラスターから零れる光が点に見えるほどのところで、APSブルが行く手を阻む。
-
- 「くそっ、どいてくれ!」
-
- 叫びながら火器を一斉射し複数のAPSブルを撃ち落すが、それでもわらわらと軍隊蟻のようにシャイニングフリーダムに向かってくる。
- テンパシーと隕石の距離が近づくにつれて焦りがキラの胸を押し潰し始める。
-
- 次の瞬間、突然APSブルが突然爆炎に包まれた。
- それは次々にシャイニングフリーダムを取り囲むAPSブルに起こり、ついにテンパシーへの道がクッキリと開かれる。
- 戸惑うキラを余所に、ミーティアを装着したインフィニットジャスティスが勢い良く飛び込んできて、APSブルの前に立ちはだかる。
-
- 「キラ、行け!もうすぐアークエンジェルも到着する。それまでここは俺が抑える」
-
- 何故インフィニットジャスティスがここにいるのかという疑問は湧くが、今のキラの頭の中にはそれ以外のことが強く占めているため、それを気にする暇も無く再びテンパシーに向けて加速する。
- ゴメンと言いながら去ったシャイニングフリーダムの背中を見て小さく微笑むと、アスランは表情を引き締めて自分を取り囲むAPSブルの集団に立ち向かった。
-
-
-
-
― SHINEトップへ ― |
― 戻る ― |
― NEXT ―